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バッテリーを再生し、繰り返し使うために
メルセデス・ベンツは2022年3月11日、自動車に搭載するバッテリーをリサイクルする自社設備をドイツ南部のクッペンハイムに開設すると発表した。「カーボンニュートラルの生産を実現するとともに、プロダクトポートフォリオをすべて電動車へシフトするのに従い、資源の消費を抑えるためにはクローズドループリサイクル(材料の持つ本来の性質を損なわない形で同じ素材の原料としてリサイクルする手法)が重要であると考えている」と、メルセデスは説明している。
メルセデス・ベンツのBEVシリーズ、「EQ」には大容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。メルセデスではそのバッテリーを今後長く“再生使用”し続けるために、自社でリサイクル工場を立ち上げた。リサイクルにあたっては湿式精錬技術を活用。また、さらなるクローズドループリサイクルを推進するために、中国やアメリカなどのハイテク系企業と連携してバッテリー再生を行っていく計画を打ち立てている。
リサイクル率を96%超に向上
メルセデス・ベンツ グループの生産及びサプライチェーンマネジメント担当役員、イェルク・ブルツァーは次のように説明する。
「我々は資源を節約するために、明確な目標に向けて歩みを進めています。すなわち、使用する原料のすべてで最大限のサーキュラーエコノミー(回復や再生のサイクルを繰り返して材料や商品、資源などをなるべく長く使用することでごみや汚染を削減するという概念)を実現するということです。この点において、持続可能なバッテリーのリサイクルプロセスは、世界のあらゆる場所でキーファクターとなります」
「クッペンハイムの新しいリサイクル工場で、我々はバッテリーの価値を高めるための見識を拡張する一方で、リサイクル率を96%以上まで向上します。中国とアメリカのハイテク系企業ともコラボレートし、私たちのバッテリー再生戦略のグローバル化を目指し、eモビリティのクローズドループリサイクルに向けて確かな一歩を踏み出して参ります」
バッテリーリサイクル事業を先導するパイロット工場
リチウムイオンバッテリーのリサイクル工場設立に伴い、メルセデス・ベンツは完全子会社としてLICULAR GmbHを発足。設計や建築にあたっては、オーストラリアのリチウム開発企業ネオメタルズと、ドイツの製鉄プラントメーカーSMSグループによる合弁会社Primobiusがテクノロジーパートナーとして技術的なノウハウを提供している。さらに、カールスルー工科大学やクラウスタール工科大学、ベルリン工科大学の研究所が科学的見地からこのプロジェクトを支援する。
メルセデス・ベンツは、リサイクル工場を設立するというプロジェクトを通して、生態学的な観点に基づいたバッテリーのリサイクルプロセスのスタンダードを構築する、と主張。クッペンハイム工場はつまり、同社のバッテリーリサイクル事業への参入を先導するパイロット工場であるとともに、独立、安定した原料供給ルートを確保する未来に向けた足がかりとなる重要なマイルストーンといえる。
電気自動車時代の重要拠点として
工場建設は2段階に分けて行われる。まずは2023年までに分解のための工場を完成させ、第2段階としてバッテリー原料を湿式精錬技術によってリサイクルする設備を稼動させるという。
クッペンハイムは使用済みバッテリーの分解、シュレッダーによる粉砕、乾燥など、すべてのプロセスを総合的に行うことのできるリサイクル工場として、電気自動車時代の重要拠点となる。