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Porsche Taycan
V2Gの実現に向けた3社による実証実験
これまでEVが使用する電気エネルギーは、充電ポイントから車両へという一方向への流れが主流だった。しかし、EVが搭載するバッテリーの電気エネルギーを「スマートグリッド」と呼ばれる次世代電力網に送る、V2G(Vehicle to Grid:ビークル・トゥ・グリッド)が実現することで、大きなパラダイムシフトが起こる可能性がある。
V2Gにより、将来的には駐車中のEVが公共の電力網にエネルギーを供給することも可能になると見られている。つまりEVが発電所や蓄電所として機能し、電力の需給調整機能を持つことになるという。
ポルシェは、送電網運営企業の「トランスネットBW(TransnetBW)」、コンサルティング企業の「インテリジェント・エネルギー・システム・サービス(IE2S)」と協力し、V2Gに関する現実的な実証実験を実施。複数台のEVに搭載される高電圧バッテリーをインテリジェントに活用することで、電力需要のコントロールが可能だと証明した。
高度なポルシェの充電マネージメント
実験では5台のタイカンが、家庭環境と実験室の条件下で「ポルシェ・ホームエネルギー・マネージャー(HEM)」を介して電力網に接続。ポルシェ・エンジニアリングのスペシャリストは、この実証実験のためにソフトウェアを事前に送電網へと適合させている。
ポルシェ・ホームエネルギー・マネージャー は、自宅ですばやく簡単に充電できるように開発されたインテリジェント充電システム。家庭内の電力需要を常時モニターし、電源接続で得られる電力と比較。車両の充電電力をコントロールすることで、充電中に家庭内の電気回路が過負荷とならないように制御。そして過負荷になる恐れがあるとホームエネルギーマネージャーがモバイルチャージャーと通信を行って充電プロセスを抑制するなどして、必要に応じて充電プロセスへの電力を減らす。
ポルシェAGのルッツ・メシュケ副会長は、今回のV2Gに関する実証実験について、次のように説明した。
「ポルシェ タイカンの充電技術と、ホーム・エネルギー・マネージャー、そしてモバイルチャージャーは、将来的に多くの可能性を秘めています。今回の実証実験がそれを証明しました。また、この種のシステムが活用できるのは、電力市場だけではないと考えています」
「将来的に、電気自動車が自家用太陽光発電システムから得られた電気エネルギーを送電網へと戻し、再生エネルギーの拡大に貢献すれば、電動モビリティはさらに社会に受け入れやすくなるはずです」
再生エネルギー拡大に不可欠な需給調整機能
再生可能エネルギーのシェア拡大に伴い、安定した電力供給のためにも需給調整機能を持った電源は今後さらに重要性を増していくことになる。風力や太陽は常に安定したエネルギー供給を行うことが難しい一方で、様々なインフラを動かしていくために、安定的した電力供給が求められているからだ。
大規模停電を回避するために、これまでは火力や原子力など従来の発電所が需要変動に対応する役割を担ってきた。今後、高電圧バッテリーを搭載するEVをバッファ(緩衝)として使えば、需要調整に貢献したことでEVのオーナーが金銭的な補償を受けられる可能性もある。