ラグジュアリースーパースポーツ、アストンマーティン DB11のすべて

アストンマーティン DB11モデル解説|価格・内装・燃費

アストンマーティン DB11 V8クーペは最高出力535psを発揮するラグジュアリーGTだ。ボディはワイド&ローでグラマラス。
アストンマーティン DB11 V8クーペは最高出力535psを発揮するラグジュアリーGTだ。ボディはワイド&ローでグラマラス。
アストンマーティン DB11は、今やSUVまで揃える英国ゲイドンのスポーツカーメーカーの中核をなすラグジュアリーGTである。いかにもアストンマーティンらしいアイコニックなデザインを持ち、クーペとヴォランテ(コンバーチブル)の2種類のボディタイプ、そしてV8とV12という2種類のエンジンが用意される。英国で人気のスポーツカーブランドのひとつ、アストンマーティンの主力モデルを徹底解説する。

アストンマーティン DB11の概要

フロントフェンダーのカーリキューやCピラーのエアロブレードなど、空力も積極的に最新技術を投入した。

フロントフェンダーのカーリキューやCピラーのエアロブレードなど、空力も積極的に最新技術を投入した。
アストンマーティン DB11は、新世代アストンマーティンの象徴といえる存在だ。2016年のジュネーブショーでワールドプレミアされ、完全新設計のアルミプラットフォームに、同じく新開発のアストンマーティン自社製5.2リッターV12ツインターボエンジンを搭載したことで注目を集めた。その後、AMG製4.0リッターV8ツインターボ搭載モデルも発表され、両エンジンとも組み合わされるトランスミッションはZF製8速ATとなる。イタリア語で「飛ぶ」を意味するヴォランテと呼ばれるドロップヘッドクーペ、さらにはAMRというスポーティグレードが追加され、幅広いラインナップとなっている。ちなみにDBは中興の祖であるデイビッド・ブラウンのイニシャル。DB11の先代はDB9となるが、DB10は映画『007』の劇中車として登場したプレミアムカーである。

アストンマーティン DB11の特徴

アストンマーティンのロゴ。その高いステータスはオーナーの誇りである。

アストンマーティンのロゴ。その高いステータスはオーナーの誇りである。
そのデザイン性がアストンマーティン DB11最大の魅力のひとつだ。5.2リッターV12ツインターボや4.0リッターV8ツインターボの性能はもちろん高いが、サーキットでの走行性能を追い求めたのではなく、あくまで軸足はグランドツアラーにある。その超高性能をゆったりとしたドライブで堪能するのが本来の乗り方である。

ポイント

  • アストンマーティン DB11の外観・内装
  • アストンマーティン DB11のボディサイズ・室内スペース
  • アストンマーティン DB11の走行性能・燃費性能

アストンマーティン DB11の外観・内装

“デザイン性の高さ”とはもちろんアストンマーティン DB11の外観や内装の質感も含めてのことである。外観はフェンダーまで一体型のボンネット、クラムシェルなどを採用し、空力まで徹底的にこだわった。一方の内装はウッドとレザーを巧みに使って、アストンマーティンに期待される品質を担保している。

外観:見た目だけでなく機能も兼ね備えた美しい外観

装着タイヤはブリヂストンS007のアストンマーティン承認タイヤ。ドライ/ウエットグリップとコンフォート性を両立した。

装着タイヤはブリヂストンS007のアストンマーティン承認タイヤ。ドライ/ウエットグリップとコンフォート性を両立した。
優美なプロポーションこそDB11の真骨頂である。搭載されるエンジンが高出力エンジンであっても、街中あるいは高速道路を静かに走る姿はまさにラグジュアリーGTそのもの。それでいて、どこかアンダーステートメントな英国紳士の佇まいを感じさせるという見事なバランスを持っており、2005年からデザインディレクターを務めるマレク・ライヒマンの手腕がいかんなく発揮された。前述のクラムシェルボンネットの他にも、Cピラーのエアスクープから空気を取り入れて後方から排出することでダウンフォースを得るエアロブレードなどの挑戦的な技術も採用されている。

内装:職人がしっかりと素材を吟味したインテリア

ドライバーオリエンテッドなコクピットは、真円ではなく、わずかに四角い形状とされたステアリングが特徴的だ。

ドライバーオリエンテッドなコクピットは、真円ではなく、わずかに四角い形状とされたステアリングが特徴的だ。
2+2のラグジュアリーGTクーペの室内は、英国の高級自動車ブランドに期待される贅を極めた素材を用い、最高のクラフツマンシップによって仕上げている。設計年次による理由もあるが、大型タッチディスプレイは採用されていない。各メーカー近年減少傾向にある物理スイッチが多く残されていて、むしろアストンマーティンらしい男臭さも感じる。ナビなどのインフォテインメントシステム操作ダイヤルなど、部分的に技術提携をしているメルセデス・ベンツの影響を感じるパーツもあるのが、人によっては残念と感じる数少ない点かもしれない。

アストンマーティン DB11のボディサイズ・室内スペース

アストンマーティン DB11は2+2のラグジュアリーGTクーペである。そのボディサイズは全長約4.8m、全幅2mで優美なスタイルを実現するための素地となっている。その割に室内スペースはタイトで、特に後席は大人が2人乗るのは難しく、つまり4名乗車ではなく2名乗車で後席は荷物置き場と割り切るのが適切であろう。

ボディサイズ:グラマラスなボディを数値にするとこれくらい

センターコンソールからアームレストまでの空間に余裕を持たせて、ラグジュアリーGTらしさを演出している。

センターコンソールからアームレストまでの空間に余裕を持たせて、ラグジュアリーGTらしさを演出している。
ボディサイズは全長4750mm、全幅1950mm、全高1290mm、ホイールベース2805mmで、現代的なラグジュアリーGTとしては標準的なサイズと言えるかも知れない。しかしメルセデス・ベンツで例えるならばCクラスの全長にGLSクラスの全幅、そしてAMG GTの全高である。ロー&ワイドのグラマラスなスタイリングを実現するためには、このようなスペックが必要となるのだ。なおホイールベースはCクラスよりもやや短い。

室内スペース:スポーツカーらしい狭さだが意外と積めるトランク

サポート性に優れたスポーツシートが装着される。レザーとアルカンターラが採用され、快適性にも優れる。

サポート性に優れたスポーツシートが装着される。レザーとアルカンターラが採用され、快適性にも優れる。
スポーツカーの室内とは往々にして狭いのが伝統だが、DB11もまたその伝統に準拠している。メーカー資料にはISOFIX対応のチャイルドシートが2座固定できるとあるが、現実的には子供でもタイトだ。ペットか荷物のスペースと考えた方がいい。小物を置く場所も限定的だ。センターアームレストを電動で開くとドリンクホルダーや携帯電話が置ける小さなスペースが現れるほか、ドアポケットにもわずかな収納がある。ラゲッジルーム容量は280リッターと期待以上に大きく、ナンバープレート上部から開き開口部も広いので重い荷物も意外と積みやすい。

アストンマーティン DB11の走行性能・燃費性能

つづいてアストンマーティン DB11の走りと燃費についてご紹介しよう。ラグジュアリーGTとはいえ、スポーツカーメーカーにとって走行性能は重要項目でスポーツ性能は標準で備えなくてはいけない。それでいて近年は燃費性能も疎かにできない世論が醸成されており、重要なスペックといえる。

走行性能:高性能エンジン2機種を多彩なモードで操る

搭載されるエンジンは4.0リッターV8ツインターボと5.2リッターV12ツインターボの2機種。写真はAMG製の4.0リッターV8エンジンとなる。

搭載されるエンジンは4.0リッターV8ツインターボと5.2リッターV12ツインターボの2機種。写真はAMG製の4.0リッターV8エンジンとなる。
エンジンは5.2リッターV12ツインターボ(最高出力639ps、最大トルク700Nm)と4.0リッターV8ツインターボ(最高出力535ps、最大トルク675Nm)の2機種を搭載し、美しいラグジュアリーGTでありながら、スポーツカーに相応しい高い性能を持っている。0-100km/h加速は3.7秒(V8=4.0秒)、最高速334km/h(V8=309km/h)を誇る。走行モードはステアリングスポーク右の「S」ボタンで変更できる。「GT」「スポーツ」「スポーツ+」の3段階が選択でき、エンジンやトランスミッションがそれぞれ調整される。足まわりはアダプティブダンピングシステムで変更可能だ。ステアリング左の「ダンピング」ボタンを操作することで走行モードと同様に「GT」「スポーツ」「スポーツ+」の3段階選べる。

燃費性能:1.9tのラグジュアリーGTとしては悪くない

インパネにはエンジンスタート/ストップボタンのほか、P、R、N、Dレンジなどドライブモードセレクタボタンが並ぶ。

インパネにはエンジンスタート/ストップボタンのほか、P、R、N、Dレンジなどドライブモードセレクタボタンが並ぶ。
燃費(WLTP複合)はV12が7.5km/リッター(13.4リッター/100km、CO2排出量303g)、V8が8.9km/リッター(11.2リッター/100km、CO2排出量254g)である。この手のラグジュアリーGTを所有したことがあるなら、意外と悪くないというのが感想ではないだろうか? 車両重量1870kg(V8=1760kg)で、プレミアムモデル向けのスポーツタイヤを装着することを考えれば健闘したといえるだろう。

アストンマーティン DB11現行モデル解説

アストンマーティン DB11には様々なグレードが用意される。現行ラインナップは4.0リッターV8ツインターボモデルと5.2リッターV12ツインターボモデルの2機種に、クーペとヴォランテ(コンバーチブル)の2つのボディタイプが用意される。なおヴォランテはV8モデルのみなので、都合3種類となる

  • アストンマーティン DB11 V8 クーペ
  • アストンマーティン DB11 ヴォランテ
  • アストンマーティン DB11 V12 AMR

アストンマーティン DB11 V8 クーペ

アストンマーティン DB11 V8。DB11の主力モデル。性能と燃費と価格のバランスに優れた1台。

アストンマーティン DB11 V8。DB11の主力モデル。性能と燃費と価格のバランスに優れた1台。
AMG製4.0リッターV8ツインターボを搭載するエントリーグレード。最高出力534ps、最大トルク675Nmを誇る。最高出力639ps、最大トルク700NmのV12と較べると、控えめと感じるがV12よりも110kg軽く、前後重量配分もフロント49%、リヤ51%でリヤが重いほどなので軽快なハンドリングが楽しめるだろう。エクステリアはボンネットの形状が異なる以外はV12モデルとほぼ同じで、内装にも大きな違いはない。WLTP複合燃費は8.9km/リッター(11.2リッター/100km)で7.5km/リッター(13.4リッター/100km)のV12よりも優れている。価格は2580万円でV12(2870万円)と較べて300万円ほど安くなっており、性能と価格のバランスがとれた1台と言えるだろう。

アストンマーティン DB11 V8 クーペのスペック

ボディサイズ 全長4750×全幅1950×全高1250mm
ホイールベース 2805mm
車両重量 1760kg
エンジン V型8気筒ツインターボ
総排気量 3982cc
最高出力 393kW(535ps)/6000rpm
最大トルク 675Nm/2000-5000rpm
トランスミッション 8速AT
駆動方式 RWD
0-100km/h加速 4.0秒
最高速 309km/h
車両本体価格(税込) 2580万円
公式サイト アストンマーティン DB11 V8 クーペ公式サイト

アストンマーティン DB11 ヴォランテ

アストンマーティン DB11 V8 ヴォランテ。素早いルーフ開閉動作で、オープンエアモータリングを満喫できる。

アストンマーティン DB11 V8 ヴォランテ。素早いルーフ開閉動作で、オープンエアモータリングを満喫できる。
DB11のコンバーチブルがヴォランテだ。「飛ぶ」という意味のイタリア語で、1960年代からコンバーチブルモデルの名称に使用される。エンジンはV8クーペと同様のAMG製4.0リッターV8ツインターボで最高出力、最大トルクも同値だが、電動ルーフ開閉システムのためにクーペより110kg重く、0-100km/h加速は0.1秒遅れの4.1秒となる。WLTP複合燃費は8.8km/リッター(11.3リッター/100km)でこれもわずかにクーペに劣る。最高速はクーペと同値だ。ルーフを下ろしても美しいスタイリングはまさにアストンマーティンの面目躍如。ルーフの作動時間は短く、14秒で開き、16秒で閉じる。8層構造のルーフは閉めれば静粛性に優れ、50km/h以下なら走行中でも開閉可能だ。内装はクーペと基本同じだが、コンソールにルーフの開閉スイッチが追加される。

アストンマーティン DB11 ヴォランテのスペック

ボディサイズ 全長4750×全幅1950×全高1300mm
ホイールベース 2805mm
車両重量 1870kg
エンジン V型8気筒ツインターボ
総排気量 3982cc
最高出力 393kW(535ps)/6000rpm
最大トルク 675Nm/2000-5000rpm
トランスミッション 8速AT
駆動方式 RWD
0-100km/h加速 4.1秒
最高速 309km/h
車両本体価格(税込) 2750万円
公式サイト アストンマーティン DB11 ヴォランテ公式サイト

アストンマーティン DB11 V12 AMR

アストンマーティン DB11 V12 AMR。DB11のフラッグシップとして、現代において貴重なV12エンジンを搭載する。

アストンマーティン DB11 V12 AMR。DB11のフラッグシップとして、現代において貴重なV12エンジンを搭載する。
DB11 V12 AMRは5.2リッターV12ツインターボを搭載する最上位グレードだ。AMRとはアストンマーティン・レーシングのことで、ハイパフォーマンスグレードの位置づけとなる。自社製のV12エンジンは最高出力639ps、最大トルク700Nmを発揮し、0-100km/h加速3.7秒、最高速334km/hというスーパースポーツに比肩する性能を見せる。しかし、その高い性能をひけらかすようなことはしない。V8との外観上の違いはボンネットくらいで大きな違いはないのだ。ただし5.2リッターV12ツインターボエンジンを搭載しているため、車重はV8クーペと較べて110kg重い。なおV8ヴォランテと車重は同じだ。WLTP複合燃費は7.5km/リッター(13.4リッター/100km)でV8モデルよりも1割以上悪い。

アストンマーティン DB11 V12 AMRのスペック

ボディサイズ 全長4750×全幅1950×全高1250mm
ホイールベース 2805mm
車両重量 1870kg
エンジン V型12気筒ツインターボ
総排気量 5204cc
最高出力 447kW(639ps)/6000rpm
最大トルク 700Nm/1500rpm
トランスミッション 8速AT
駆動方式 RWD
0-100km/h加速 3.7秒
最高速 334km/h
車両本体価格(税込) 2870万円
公式サイト アストンマーティン DB11 V12 AMR公式サイト

アストンマーティン DB11の新車・中古価格

新車価格は2000万円台後半でいずれも超高級車のアストンマーティン DB11だが、登場からすでに6年が経過していることもあり、中古ならば多少はリーズナブルな価格の個体が発見できるかもしれない。しかし昨今の半導体不足、ロシアの戦争による混乱などで、製造や輸送の遅れがあるため、中古車価格もかなり上がっているようだ。

モデル 新車価格 中古価格
アストンマーティン DB11 V8 クーペ 2580万円 1800万〜2200万円
アストンマーティン DB11 ヴォランテ 2750万円 2480万〜2580万円
アストンマーティン DB11 V12 AMR 2870万円 2200万〜2650万円

【Q&A】アストンマーティン DB11について多い質問

以下では、アストンマーティン DB11について多い質問・疑問に回答します。

Q&A

  • V8とV12は買い取りに出すならどちらがお得なの?
  • V8とV12でどっちのエンジンが楽しいの?
  • アストンマーティン DB11で人気のボディカラーは?

Q. V8とV12は買い取りに出すならどちらがお得なの?

V8とV12 AMRでは新車時の価格が約300万円違うが、インターネット上での買い取り相場はV8=1300万〜1600万円、V12 AMR=1300万〜2340万円と最低価格はほぼ同じだが、V12の方が高価格で売れる可能性があるようだ。一方で中古市場はV8=1800万〜2200万円、V12 AMR=2200万〜2650万円で、新車価格を考えるとV8の方がリーズナブルになっている。

Q. V8とV12でどっちのエンジンが楽しいの?

欧米をはじめ日本でも、自動車メーカーが次々と新型車を電動化しているように、今や絶滅しつつあるV12エンジンに乗れるチャンスは少ない。ましてや5.2リッターという大排気量車も珍しくなっている。アストンマーティンが内製したという、V12エンジンのサウンドや重厚感のある乗り味は、ぜひ一度試してみて欲しい。一方でV8エンジンもAMG製とはいえ、メルセデスとはまったく異なる味付けとなっており、性能と燃費と価格のバランスが取れた傑作である。

Q. アストンマーティン DB11で人気のボディカラーは?

中古車のリストを見ると白が人気のようだ。しかし、アストンマーティンといえば、DB11に限らず様々なボディカラーが選択できるのが大きな魅力である。過去には自宅で使っている愛用のヤカンを持ってきて、「この色にしてほしい」とオーダーしてきたカスタマーもいるそうだ。それが従来実績に無い色の場合は、そのボディカラーの名付け親にもなれるというのが面白い。

アストンマーティン DB11の購入方法

アストンマーティンのクラフツマンシップを証明するプレート。

アストンマーティンのクラフツマンシップを証明するプレート。
アストンマーティン正規ディーラーは、北は仙台から南は福岡まで日本全国8店舗あり、そのネットワークはかなり充実している。ディーラーではないが、アストンマーティンの世界を堪能できるアストンマーティン青山ハウスもぜひ機会があれば一度訪れて欲しい。1000㎡の敷地には、様々な展示車両はもちろん、その歴史や哲学などを学べるほか、ギフトやアパレルなども販売されている。購入する前に最後に背中を押してくれる施設といえるだろう。

PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)、ASTON MARTIN LAGONDA

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…