目次
劇的な進化をもたらした12W分の消費電力
パソコンなんて、すっかり成熟して代わり映えしない製品ばかりだと思っていたら、Appleがやってくれました。MacBook Pro 16インチモデルは、もう変わる要素なんてなさそうなパソコンという商品のレベルをググッと引き上げてくれました。
ポイントは“ほんの少しだけ大きくなった”こと。
このほんの少しだけが、ものすごく製品を魅力的にしている。少しだけ大きく、厚くなったのだけど、そこにさらに最新の冷却技術を盛り込むことで、従来よりも12W分多くの消費電力を許容できるようになった。この“12W分”とういうのが、とっても大きなポイント。高速なCPUとGPU、たくさんのメモリなどを搭載し、それをフルに動かして処理する場合、熱がしっかり処理されなければ性能が発揮できない。これは冷却系の設計が悪いとエンジン性能を発揮できないのと同じだ。
ハイエンドスペックを収められる箱として
ということで、従来機に比べてメインメモリが従来製品4倍の64GB、SSDが8TB、グラフィクスメモリが4GBまで増量できるようになっている。もちろん、多くの人はこれほどのスペックを必要としないかもしれない。しかしながら、こうしたハイエンドスペックを収められる箱・・・すなわちシャシーを作ったことで、システム各部に余裕が生まれて完璧にそれぞれの性能を発揮できる。その上、この余裕はより大きなバッテリーまでもたらしてくれるのだから、少しだけ大きくなったのバンザイ! なのである。
クルマで言えば、少しだけボリューム感のあるボディデザインになったかな? 程度なのに、中身のエンジンや室内空間などが大幅進化していたという感じだろうか。ボディサイズの見直しは、キーストロークの増加をももたらし、0.55mmから1mmへと増加。しっかりとした感触のキーボードに仕上がっている。
そして、実はもっとも驚いたのが“音質”だ。
低域再生能力が高まり、音楽を聴いてもなかなかの音質に仕上がっているが、何より全域の位相感が見事に揃っている。位相はズレてしまうと仮想サラウンドが正確に再現できなくなる。位相を制御することで仮想サラウンドが実現されているからだが、本機の場合、映画などを観ると見事なまでに頭の周りに音が拡がる。これは本当に見事。恐れ入りました。という感じなのだが、実は音質に関しては内蔵マイクもなかなかの出来だ。
映像、音楽、写真のプロも納得
3つのマイクを使ってノイズと指向性を調えた内蔵ステレオマイクはとても質の高い音で、楽器演奏をそのまま収録しても驚くほどの再現性だ。外部USBマイクなど必要ないほどの素晴らしさ。動画作成やボイスメッセージを作る際にも、とっても役立ってくれる。その上、ベースモデル(ベースモデルでもスポーツカークラスの性能)は従来機よりも安価なのだから魅力的と言わざるを得ない。よくもまぁ、たった2kgの重量に映像、音楽、写真のプロが納得する性能と拡張性を組み込んだ。
音質、拡張性、色の再現性の高さ、それに熱設計の余裕がもたらす実性能の高さ。スペックだけではわかりにくいこだわりに、この製品の凄みがある。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2020年 3月号
評価
絶対的な価格は高いが、性能を考えるならば極めて妥当。この性能が必要な人にとっては、むしろ安いぐらい。画質・音質へのこだわりや実性能の高さなど見えにくい部分にこそこだわった作りが素晴らしい。
コストパフォーマンス:3
ディスプレイ:5
使い勝手:5
音質:4
性能:5
PRICE
24万8800円〜(税別)
【問い合わせ】
Appleサポート
TEL 0120-27753-5
https://www.apple.com/jp/