【ジェントルマンレーサーのすゝめ:第1話】

太田哲也、22年ぶりにレースへ本格復帰!【ジェントルマンレーサーのすゝめ:第1話】

ジェントルマンレーサーのすゝめ:第1話
還暦を迎え、本格的にモータースポーツシーンへの復帰を決めた太田哲也氏。その心境を訊く。
「日本一のフェラーリ遣い」と称され、数多くのレースで勇名を馳せた名レーサー・太田哲也氏。現在では自身が主宰するパーツブランドのプロデュースや、日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員をはじめとするモータージャーナリスト活動など、多彩な分野で精力的に活躍している。その太田哲也氏が、日本屈指のジェントルマンレース「ロータス カップ ジャパン」への参戦を決めた。

第1話:還暦を迎えた今、なぜレースに挑むのか!?

1998年に富士スピードウェイで事故に遭遇して以来、じつに22年振りのレース復帰を決めた太田哲也氏。参戦カテゴリーはロータス カップ ジャパン。

最近、「人生100年時代」とよく耳にするが、いくら人生が長くなっても体や心がしぼんでしまったなら、楽しさは半減してしまうだろう。子どもが独立し仕事もそこそこ確立できたことだし、この先は自分を主人公としたワクワクする新しい人生を進めよう、と提案したい。

それには老いを止めることが大切で、そのためには積極的に行動して自分に刺激を与え続け、身体と脳に「まだまだオマエはイケルぞ」と教える(錯覚させる)ことが 重要だと思う。

僕自身、何か自分が打ち込める趣味、というかライフスタイルを確立させたい。となると一般的にはゴルフなんだろうけど、僕には事故による障害があってあまり歩けない。ジョギングも無理だ。そもそも体力のある若者に圧倒的に大負けてしまうスポーツでは楽しめない。

そう考えると意外とアクティブな趣味が見当たらない。何かないかな~と考えたら、やっぱりクルマ、となるとモータースポーツだな、と思い至った。

紳士のたしなみとしてのモータースポーツ

シニアからスタートするスポーツあるいは趣味として、体力や身体的ハンデが大きく響かないモータースポーツは最適だと太田哲也氏は語る。

新型コロナウイルスでステイホームしていたとき、『名探偵ポワロ』のドラマをシリーズで見た。舞台は第一次世界大戦後の1920年代、その中にときどき実業家がサーキットを走っているシーンが出てくる。すでにこの頃からイギリス紳士のたしなみとしてモータースポーツという選択があったのだ。仕事もレースもこなすジェントルマンが格好よく見えた。

モータースポーツは、 適度に体力と知力が必要で、体と脳の活性化にはもってこい。しかも必ずしも体力差がタイム差に繋がらないので若者とも張り合える。むしろ経験がものをいうスポーツである。

20代の頃からプロのレーシングドライバーとして長くやってきたけど38歳の時に怪我をして障害を負い、引退、あれから20年以上が過ぎた。

もう昔の速さを取り戻せないことは明らかで、でもそれが露になるのが嫌で、今までサーキット走行はしても、タイム差や勝敗が はっきり出るレースには本腰を入れてはこなかった。

でも60歳になった今、新しいチャレンジをすることにした。レースに出場するのだ。

チャレンジに失敗はつきもの。大いに恥をかこう

ガレージシマヤのサポートの元、本格的なワンメイクレース「ロータス カップ ジャパン」への参戦を決めた太田哲也氏。

僕はチャレンジについてこう考えている。チャレンジって言葉はかっこいいけど、失敗がつきもので、逆に言えば失敗のリスクがなく成功が見えているものはチャレンジとは言い難い。シニアにとって一番のハードルは、「もし遅かったらどうしよう」とか「ぶつけてしまったら格好悪いな」など、恥をかくことではないか? 恥をかくことを恐れると、何もできなくなる。

だから今年は大いに恥をかこうと思っている。僕がレースに参加するというと、過去を知っている人は「太田さんが出たら勝って当たり前でしょう」と言われるが、いやいやいや、そんなことないって! みんな60になったことないだろッ。右足には障害があるし、体力がなくすぐ息切れするし、老眼ですぐに焦点が合わなくてコースは二重に見えるし。でもそんな言い訳を言いながら走れるわけではない。

周りからの期待と今の自分の実力とのギャップが露わになる。それを恥と思うなら、俺は大いに恥をかいてやる!

そういう気持ちなのだ 。

TEXT/太田哲也(Tetsuya OTA)
PHOTO/降旗俊明(Toshiaki FURIHATA)
COOPERATION/ガレージシマヤ、ヨコハマタイヤ

【関連リンク】
太田哲也 オフィシャルサイト

ガレージシマヤ 公式サイト

ヨコハマタイヤ

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