いちはやくハイブリッドを投入した「ランボルギーニ シアン」その希少性を吟味する

時代に翻弄された電動化ランボルギーニの嚆矢「シアン ロードスター」がその希少性を誇る理由

カリフォルニア御用達というべきトップレス・ロードスター、シアン・ロードスター。日本で乗りこなすのは至難の業だ。
カリフォルニア御用達というべきトップレス・ロードスター、シアン・ロードスター。日本で乗りこなすのは至難の業だ。
フラッグシップの座をムルシエラゴから受け継いで2011年に登場したアヴェンタドール。Sへの進化やいくつかの限定モデルをリリースし、最近では電動化を果たしたスペシャルバージョンも生み出している。今回はその限定モデルであり、電動モデルでもある「シアン」に改めて試乗し、間も無くその歴史を閉じるアヴェンタドールというクルマの魅力と楽しさ、そして意義を検証する。(本記事は『GENROQ』2022年12月号より抜粋、再編集したものです)

Lamborghini Sian Roadster

次世代へのプロローグのはずが

アヴェンタドールをベースに、スーパーキャパシタを用いたハイブリッドを組み込んだシアンは、ランボルギーニ初のハイブリッドである。34PSのモーターはトランスミッション内でドライブシャフトを直接駆動する。リヤスタイルなどはカウンタックへのオマージュを強く感じる。
アヴェンタドールをベースに、スーパーキャパシタを用いたハイブリッドを組み込んだシアンは、ランボルギーニ初のハイブリッドである。34PSのモーターはトランスミッション内でドライブシャフトを直接駆動する。

シアンはムルシエラゴ時代におけるレヴェントン。勝手にそう思い込んでいた。

事実、チェントロスティーレのトップ、ミーティア・ボルケートにとっては事実上初めて指揮を取ったランボルギーニ製市販スーパーカーのスタイリングだったし、曰く「ディテールにはカウンタックへのオマージュを散りばめた」モデルだった。アヴェンタドールが実は(カウンタックよりも)ミウラとの近親性があったことも思い出せば、これらの意味することは明白。シアンは間違いなく次世代フラッグシップへのプロローグ、つまりはムルシエラゴにおけるレヴェントン。

スーパーキャパシタを使ったマイルドハイブリッドシステムも、12気筒自然吸気エンジンファンには電動化必須となるだろう次世代への淡い期待を抱かせた。何しろ回ってしまえば電気モーターも何もない、V12パワー炸裂、だからだ。意外にも最大のマーケットであるアメリカから好評だったというISRトランスミッションも、電気モーターによる巧妙な“トルクの谷間埋め”によって延命する機運さえあった。

かえって希少となったマイルドハイブリッド

アヴェンタドールをベースに、スーパーキャパシタを用いたハイブリッドを組み込んだシアンは、ランボルギーニ初のハイブリッドである。34PSのモーターはトランスミッション内でドライブシャフトを直接駆動する。リヤスタイルなどはカウンタックへのオマージュを強く感じる。
世界限定たったの19台のシアン ロードスターのインテリア。日本へは2台のみがデリバリーされたその貴重さは群を抜く。

ところが世の中の環境パフォーマンス(色んな意味で)に対する“要請”は、なんちゃってハイブリッドシステムなど歯牙にもかけなかった。比較的早い段階でプラグインハイブリッドパワートレインの開発へと舵を切ったのだろう。アヴェンタドールそのものが旺盛な需要に支えられモデルライフを全うすることも予想できたに違いない(1万1450台という数字が出来過ぎだったにせよ)。予期せぬ事態といえばコロナ禍による実作業の遅れもあったであろうが、周りのプラグインハイブリッド・スーパーカーが初期トラブルに悩まされていることをみれば、それもまた(開発時間に余裕ができて)不幸中の幸いだった。

かくしてシアン(クーペとロードスター、そしてカウンタック)に搭載されたマイルドハイブリッドシステムは63+19+112の併せてわずか194台用にのみ作られた貴重なV12パワートレインとなったのである。

なかでも世界限定たったの19台、うち日本へは2台のみがデリバリーされたシアンロードスターの貴重さは群を抜く。チェンテナリオロードスターに続いてカリフォルニア御用達というべきトップレス・ロードスターを、日本で乗りこなすのは至難の業。取材の日も今にも雨が降り出しそうな天気で、気が気ではなかった。

シアン最大の特徴は、前述したように、電気モーターの出力がシフトアップ時のトルク落ちをうまくカバーすることだ。ストラーダモードで100km/h以下で、深く踏み込みすぎないアクセルワークであれば不快なショックを回避できる。

回せばわかるモーターによるパワーサプリ

アヴェンタドールをベースに、スーパーキャパシタを用いたハイブリッドを組み込んだシアンは、ランボルギーニ初のハイブリッドである。34PSのモーターはトランスミッション内でドライブシャフトを直接駆動する。リヤスタイルなどはカウンタックへのオマージュを強く感じる。
リヤスタイルなどはカウンタックへのオマージュを強く感じる。

スムーズさに加えて中間加速のダイレクト感と力強さが増していることが嬉しい。もとよりL539ユニットは低回転域からパワフルに回ってくれる。4WDであるうえ車体も比較的軽く、0-100km/h加速3秒以内というスペックも伊達じゃない。けれどもエンジン回転を上げていけばいくほどに力感を増すというのがNAエンジンのキャラクターだから、どうしても中間加速が相対的に鈍く思える。シアンはそこをモーターでカバーしているのだ。

例えば高速道路をクルージング中に右足を軽く踏みこんだだけで即座に腰が前へと引っ張られるような加速レスポンスをみせる。NAエンジンにはない鞭打たれたノリ感。瞬発力が違う。100km/hまでを凄まじく速く感じる。ただしそこからはもう大排気量V12エンジン単体の出番だ。正直に言って785PSと初期型700PSの違いなど少なくとも公道では分からない(高回転域でははっきり体感できる!)が、だからかえって中間域をモーターでアシストするシアンを“速い”と感じることができた。

なにより特別な加速フィールを、回してはV12のサウンドを、ダイレクトに堪能できるロードスターの素晴らしさよ。本来は世界で19人しか味わえない特別なオープンエアモータリングであるということも心を躍らせた。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・シアン・ロードスター

ボディサイズ:全長─ 全幅─ 全高─mm
ホイールベース:2700mm
車両乾燥重量:1550kg
エンジン:V型12気筒DOHC
排気量:6498cc
最高出力:577kW(785PS)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
モーター最高出力:34PS
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:350km/h
0-100km/h加速:2.9秒
※数値は2020年当時のもの

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西川 淳