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Volkswagen ID.7
限られたスペースで求められた効率性と出力向上
フォルクスワーゲンは、フル電動ラインアップ初となるミドルサイズセダン「ID.7」を発表。このID.7には完全に新規開発された後輪駆動用電動ドライブトレイン「APP550」が搭載されており、効率性が大幅に向上しながら、より高いパフォーマンスの提供が可能になった。最高出力286PS(210kW)を発揮するID.7は、欧州と中国で2023年秋から発売を開始、北米には2024年に投入される。
「APP550」は、フォルクスワーゲン・グループが誇る最新電動アーキテクチャ「MEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブ マトリックス)」をベースに開発。フォルクスワーゲンのパワートレイン&エネルギーシステム開発責任者を務めるカルステン・ベネヴィッツは、新型ドライブトレインの導入について以下のように説明する。
「MEBという、活用できるスペースが変わらないからこそ、パフォーマンスと大幅な効率性の向上を実現するために、新しい電動ドライブトレインを開発する必要がありました。技術開発部門と生産部門の両チームにとって大きな挑戦になりましたが、原材料の使用量を削減しながら同時に効率の大幅アップを達成することができました」
使いやすさを重視した強大なトルク
フラッグシップサルーンに相応しいパフォーマンスを実現するべく、「APP550」はパワーとトルクの向上を目指して開発された。その結果、新型ドライブトレインの出力は286PS(210kW)、最大トルクは550Nmを実現。特にトルクが大幅に向上したことで、あらゆる使用環境において、優れた動力性能を発揮することが可能になったという。
「APP550」は、電気モーターの巻線の有効数を増やし、断面を大きくしたステーター(固定子)によって、高いトルクを実現。ローター(回転子)には、より強力な永久磁石を採用し、高い負荷容量を可能とした。また、強大なトルクに耐えられるようドライブ系統も強化されている。
電動ドライブトレインにおいて、パワーの決め手となるのが電流となる。電流を管理するインバーターは、パワーと効率を高め、必要とされる大電流を供給できるよう新たに開発。インバーターは、ドライブトレインを制御する “頭脳”として機能し、搭載されたソフトウェアが効率的なシステムプロセスを保証しており、駆動モーターは負荷に応じて、より効率的に動作することが可能になる。
ドイツ・カッセル工場が持つノウハウを活用
「APP550」では、効率性を高めるべく、フォルクスワーゲンは、熱管理(サーマル・マネージメント)システムを含む、ドライブトレインの多くのコンポーネントも最適化した。
今回、新たに電気駆動式オイルポンプを使わずに作動する、省エネ型冷却システムを採用。このシステムでは、ギヤボックスのギヤホイールとオイルの供給&分配のために専用設計されたコンポーネントを介し、独立して冷却することが可能となった。加熱されたオイルは車両の冷却水回路によって冷却され、ドライブトレインを動作最適温度に保つことができる。
ギヤボックス、ローター、ステーターを備えた電動ドライブトレインは、ドイツ・カッセルのフォルクスワーゲン・グループ・コンポーネント工場で生産される。フォルクスワーゲン・グループの電動パワートレイン、パワーエレクトロニクス、トランスミッションの技術開発責任者を務めるアレキサンダー・クリックは、次のようにコメントを加えた。
「私たちは15年前から電気モーターとそのギヤボックスの開発を続け、10年以上前からカッセル工場で生産も行なっています。長年の経験を活かすことで、パワーだけでなく、システム全体を最適化し、効率性を大幅に向上させることができたのです」