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7年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型フォレスター
新型フォレスターは2023年11月のロサンゼルスオートショーにて初披露され、2024年4月に2025年型として北米で発売が予告された。そして、2025年4月3日、ついに日本仕様が発表され、先行予約が始まった。

最大のトピックは、2024年10月にクロストレックに搭載され発表されたスバル初のストロングハイブリッド「e-BOXER S:HEV」を採用した点だ。その走りはもちろん、スバル車としては大幅に改善された燃費性能が、新型フォレスターでどのように発揮されるかは大いに気になる点である。

フォレスターはSUVを得意とするスバル車にあって、意外と唯一の正統派SUVだ(クロストレックや販売終了したレガシィアウトバックはクロスオーバーSUVで、レヴォーグレイバックはさらにシティSUV色が強い)。それだけに、アクティブなユーザーのタフギアとしての用途やイメージに応えなければならない。


そればかりか、レガシィアウトバックが販売終了したことで、日本市場ではスバルのフラッグシップSUVとしての役割を担うことになる。それだけに、より堂々とした佇まいを感じさせるデザインが与えられた。

また、安全にこだわるスバルだけに、対歩行者用エアバックをさらに進化させ、対自転車乗員への保護性能を向上させたのもポイントだ。
合わせて夜間の交差点などで歩行者や自転車を早期発見して事故を防ぐために、日本モデル専用としてコーナーリングランプも装備した。


グレード展開は昨今のスバル車の例に倣いシンプルで、上質感を高めた最上位モデル「Premium」、アウトドア志向の”ギア”としての使い勝手やタフさを備えた「X-BREAK」、スバルらしい走りの良さ、爽快感が魅力の「SPORT」の3モデルとなった。これらは価格差はあるにせよ、上下ではなくキャラクターの違いとして分けられているという。
こだわりの各部デザイン
新型フォレスターでは各所にこだわりのデザインが施されているのだが、フロントシートの内側ショルダー部を削り非対称としているのが特徴のひとつになっている。これは、フロントシートからリヤシートに振り返ったりする際のアクセス性や後席乗員とのコミュニケーションを高める効果があるという。

新型フォレスターの力強さや安心感を演出するデザインとして、各所にハニカム格子加飾をあしらった。これには、SUVらしい頑丈な骨格感を感じさせる意図があるという。


また、インテリアでは縫製をシングルとしてあえて接合面を巻き込まず、異なる素材が生きる断面を工夫し、表情豊かな室内空間を演出している。

また、意外なポイントとして前後のドアトリムデザインを独立させたことが挙げられる。これまでリヤドアはフロントドアのデザインや形状を踏襲しつつリヤに合わせることが普通だったが、新型フォレスターではリヤに最適なドアトリムを採用したという。


これにより、ドアハンドルやパワーウインドウスイッチ、ドリンクホルダーがリヤシートのパッセンジャーが使いやすい最適な配置を実現した。
散りばめられた”アソビゴコロ”
新型フォレスターはクルマの内外に遊びゴコロが込められた演出がある。山や等高線といったアウトドアテイストな加飾はこれまでのスバル車でも見受けられたが、新型フォレスターはそこからさらに一歩進めた印象だ。
実用的な”ギア”にとどまらないこれらの演出をここで紹介するが、ぜひ実車を見てで探してほしい。
Premium
最上位グレードとなる「premium」のエクステリアやインテリアはより上質感を演出するシルバーをアクセントカラーにしつつも、落ち着いた雰囲気にまとめられている。
パワートレインはストロングハイブリッドの「e-BOXER S:HEV」を搭載する。


また、装備も充実させているほか、唯一本革シートをオプションで選択できるなど、新型フォレスターの中でも特別感のあるグレードだ。




「Premium」のシートは標準では撥水ファブリックと撥水トリコットのコンビシートで、グレーとプラチナのカラーにブルーステッチがあしらわれる。
加えて「Premium」系にはオプションとしてシートベンチレーターが用意されるほか、本革シートも用意される。ナッパレザー/ウルトラスエードのブラック/ブラウンカラーにシルバーステッチと、ブラック単色にブラウンステッチの2種類を選択可能となっている。
ラゲッジルームはフラットかつスクエアで荷物が積みやすく、6対4分割可倒式のリヤシートを倒しても奥までフラットで使い勝手が良さそうだ。
さらにラゲッジルーム壁面には荷掛けフックが用意されるほか、壁面とリヤゲート内側にアクセサリーホールも設置されており、各種オプションでラゲッジルームを好みカスタマイズできるようになっている。

また、電源はDC12Vに加えAC100V/1500Wのコンセントも用意されており、アウトドアユースや災害時の電源としても便利だ。
X-BREAK
フォレスターのアウトドア志向グレードとして4代目の特別仕様車から設定された「X-BREAK」 は従来モデルに続いてラインナップ。パワートレインはストロングハイブリッドとなり、やや上級移行した感がある。


「X-BREAK」というと従来モデルまではオレンジの差し色でアクティブさをアピールしていたが、新型ではグリーンにチェンジ。”より自然との共生を望む”ユーザーを見据え、落ち着いた雰囲気に生まれ変わった。
しかし、その一方でルーフレールは唯一フローティングのラダータイプとしており、ルーフキャリアやルーフボックスの設置でボディを痛めないように配慮するなど、アクティブな使い方が想定されている。

インテリアはブラック/グレー基調となり、アクセントはダッシュボード助手席側のシルバー加飾程度と、全体的に落ち着いた雰囲気。ステッチにはイメージカラーであるグリーンを用いている。

12.3インチフル液晶メーターは「Premium」と共通のハイブリッド仕様で、左側は回転計ではなくパワーメーターになっている。

シートは撥水ポリウレタン/合成皮革のコンビシートで、インテリアやエクステリアのアクセント同様にグリーンのステッチが入っている。シートヒートは全車で前後席共に標準装備だ。
また、ラゲッジルームも「X-BREAK」のみ撥水フロアを採用しているほか、荷物を滑らせて出し入れしやすいラゲッジスムーザー機能も付加されているほか、リヤゲート内側にランプを設置するなど「Premium」や「SPORT」よりも”ギア”としての使い勝手が高められている。

SPORT
1.8L水平対向4気筒DOHCインタークーラーターボエンジンを搭載する”ターボらしい”爽快な走りを求めるユーザーをターゲットにしたのが「SPORT」グレード。
外観ではホイールやフロントバンパー、ボディサイド、リヤバンパーなどにブロンズのアクセントカラーを挿入。Dピラーの車名エンブレムも同様だ。


インテリアでもドアトリムや本革巻のシフトノブ、ステアリングホイールにブラウンのアクセントカラーを配して外観のブロンズと揃える他、シートのステッチやパイピングも同様だ。

メーターは12.3インチフル液晶メーターとなり、「SPORT」はストロングハイブリッドの「Premium」「X-BREAK」とは表示が異なっている。

シートはウルトラスエードと合成皮革のコンビシートでブラックとグレーにブラウンのパイピングとステッチがあしらわれる。
ラゲッジルーム下にサブトランクを備え、その下にはスペアタイヤが入っている。昨今はハイブリッド用の電池を収めるスペースや、重量的なメリットからスペアタイヤではなくパンク修理キットを採用する例も多くなっているが、やはり”ギア”であるフォレスターは万が一に備えるのであればスペアタイヤが最適であると考えられているようだ。
ストロングハイブリッドで燃費性能を改善
長らくスバル車の弱点とされてきたのが燃費性能だ。新型フォレスターではストロングハイブリッドを採用したことで従来モデルから大幅に改善。18インチモデルで18.8km/L、19インチモデルで18.4km/Lとハイブリッドを採用する同クラスのSUVとなんとか比較するレベルに到達した。

ストロングハイブリッド「e-BOXER S:HEV」は「Premium」と「X-BREAK」に搭載され、エンジンで118kW(160ps)・209Nm(21.3kgm)、モーターで88kW(119.6ps)・270Nm(27.5kgm)の出力を得ている。
「SPORT」に搭載される1.8L直噴ターボは130kW(177ps)・300Nm(30.6kgm)という出力や、13.6km/Lという燃費などの性能面では変更はない。

なお、トランスミッションはこれまで通りスバル自慢のCVT「リニアトロニック」のみで、これまたお馴染みの「X-MODE」を用意している。
グレード | Premium | X-BREAK | SPORT |
全長 | 4655mm | ||
全幅 | 1830mm | ||
全高 | 1730mm | ||
室内長 | 1950mm | ||
室内幅 | 1540mm | ||
室内高 | 1270mm ※サンルーフ装着車は室内高-15mm | ||
乗員人数(名) | 5 | ||
ホイールベース | 2670mm | ||
最小回転半径 | 5.4m | ||
最低地上高 | 220mm | ||
車両重量 | 1750~1780kg | 1730~1770kg | 1640~1660kg |
パワーユニット | 2.5L水平対向4気筒DOHC直噴 + 2モーター[e-BOXER(ストロングハイブリッド)] | 1.8L水平対向4気筒DOHC直噴インタークーラーターボ | |
エンジン最高出力 | 118kW(160ps)/5600rpm | 130kW(177ps)/5200-5600rpm | |
エンジン最大トルク | 209Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm | 300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm | |
燃料(タンク容量) | レギュラー(63L) | ||
モーター型式・種類 | MC2・交流同期電動機 | ー | |
モーター最大出力 | 88kW(119.6ps) | ー | |
モーター最大トルク | 270Nm(27.5kgm) | ー | |
バッテリー | リチウムイオン電池 | ー | |
電池容量 | 4.3Ah | ー | |
定格電圧[V] | 259V | ー | |
燃費(WLTC) | 18.4km/L | 18.8km/L | 13.6km/L |
トランスミッション | リニアトロニック(CVT) | ||
ステアリング | ラック&ピニオン | ||
サスペンション | 前:ストラット式独立懸架 後:ダブルウィッシュボーン式独立懸架 | ||
ブレーキ | 前後:ベンチレーテッドディスク | ||
タイヤサイズ | 235/50R19 | 225/55R18 |
気になる価格は……全車400万円以上に?
多機能化や強まる各種規制への対応で自動車価格は全般的に高騰している。加えて、新型フォレスターはよりコストのかかるストロングハイブリッドを採用していることから、従来モデルからの価格の上昇は避け得ない。

従来モデルの306万9000円(「Touring」)〜374万円(「STI SPORT」)という全車300万円台の価格設定から、「X-BREAK」(従来モデルが330万円)で+88万円、「SPORT」(従来モデルが346万5000円)で+55万円程度の価格が見込まれている。ただし、前述の従来モデル価格はETC車載器やオーディオなど未装備のもので、実際には+20万円程度上乗せされることからその差は多少は縮まることになる。

というのも、新型の価格上昇分はオーディオやETC2.0車載器込みで計算されているからだ。これらと新型の従来モデルからの以下の仕様向上を考えれば、価格上昇幅は内容に対しては大きくないとも考えられる。
X-BREAKの仕様向上ポイント
・ストロングハイブリッド化(S:HEV)
・アイサイト機能向上(広角単眼カメラ/前側方レーダー)
・デジタルマルチビューモニター(フロント/サイド/リヤ/トップ3D)
・サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ
・12.3インチフル液晶メーター
・11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム
・ナビゲーション機能
・ETC2.0車載器キット
SPORTの仕様向上ポイント
・アイサイト機能向上(広角単眼カメラ/前側方レーダー)
・デジタルマルチビューモニター(フロント/サイド/リヤ/トップ3D)
・サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ
・12.3インチフル液晶メーター
・11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム
・ナビゲーション機能
・ETC2.0車載器キット
・キックセンサー式ハンズフリーパワーリヤゲート
価格イメージとして「Premium S:HEV」「X-BREAK」「SPORT」の順となり、それぞれに標準モデルと上級モデルの「EX」が設定される。
従来モデルから上記の価格上昇を加味した予想価格が以下の表になる。
グレード | 予想価格 |
Premium EX | 453万円 |
premium | 433万円 |
X-BREAK EX | 438万円 |
X-BREAK | 418万円 |
SPORT EX | 421万5000円 |
SPORT | 401万5000円 |
新型フォレスターから設定された「Premium」についてはレガシィアウトバックの「X-BREAK EX」と「Limited EX」の価格差である約15万円を、標準モデルと「EX」の差についてはクロストレック「Premium S:HEV」と「Premium S:HEV EX」の価格差が約20万円であることからそれを基準に算出した。

円安傾向の為替レートの影響もあるが、2024年4月に発表された2025年モデルの北米価格の日本円換算よりはまだ安いと言えるだろう。