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911Carrera S Driving Impression Chapter01 秘められた進化は、もちろん乗ってみなければわからない。 楽しめる速度域は40〜300km/h! この万能性が新型ポルシェ911の魅力だ

  • 2019/10/21
  • GENROQ編集部
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伝統のフォルムの中には、どのような速さと楽しさが込められているのか。
秘められた進化は、もちろん乗ってみなければわからない。日本上陸を果たした新型911の実力を、大谷達也、佐藤久実の2人のジャーナリストが試す。

REPORT◎大谷達也(OTANI Tatsuya)
PHOTO●小林邦寿(KOBAYASHI Kunihisa)

※本記事は『GENROQ』2019年10月号の記事を再編集・再構成したものです。

 お盆休みで渋滞する東名高速を西に向かいながら、「どうしてポルシェ911はゆっくり走らせていてもドライバーを飽きさせないのか?」について思いを巡らせていた。

 タイプ992に生まれ変わった新型911が、優れたスタビリティと自在にコントロールできるドライバビリティにより、ワインディングロードやサーキットでエキサイティングな体験をもたらしてくれることは今年2月にスペインで行われた国際試乗会で確認済み。しかし、のろのろ運転でもまったく退屈せず、むしろ心地いい緊張感を味わいながらステアリングを握っていられることは、予想の範囲内とはいえ911が凡百のスポーツカーとは異なるステージにあることを物語っていた。

 いったい、なぜなのか?

 繰り返し語られてきたことではあるが、機械としての精度感が恐ろしく高いことは間違いなく関係している。だから、ステアリングを切れば指先に込めた力がどこかで失われることなく、前輪の向きを変える力へと的確に変換されていくことを実感できる。エンジンの生み出す力が駆動輪へと伝えられる様や、ブレーキペダルの踏力がいかに正確に減速Gに反映されるかもまったく同様。それらは、徹底的に磨き上げられた機械だけが生み出せるリニアリティの高さと精密さだといえる。

 様々なインフォメーションを問わず語りに伝えてくれることもポルシェ911の変わらぬ魅力だ。“彼女”の表現力は卓越しているが、決してしゃべりすぎることはない。必要な情報を端的に伝えるコミュニケーション能力の高さにはいつも舌を巻くばかり。これがクルマとの深い一体感を生み出す一因となっているのは間違いないだろう。

 けれども、そうしたコントロール性の高さと傑出したフィードバック力を駆使してドライバーがなにをしているかといえば、「どこまで意のままに911を操れるか」の一事にあるように思う。

 ポルシェを愛するドライバーであれば、自分がイメージする「走りの理想像」をきっと持っているはず。それは、サーキットやワインディングロードを限界的なペースで攻めているときばかりでなく、一般道をゆっくりと流しているときでさえ、「走りの理想像」は明確なフォーカスを伴ってあなたの心のなかに存在していることだろう。どのラインを走るのか? そのとき、どの程度の姿勢変化を起こすのか? さらにいえば、ピッチングやローリングの過程についてもはっきりとしたイメージを持っているのがスポーツカー遣いであり、真のポルシェ・ドライバーではないのか。

 私が渋滞する東名高速で試していたのは、まさにこれだった。停止した状態からクルマが動き始めるときの、タイヤの最初のひと転がりをいかにコントロールするか。停止直前のノーズダイブとブレーキペダルを離すときの姿勢変化をどのくらいのスピードに収めるか。そこには、ただていねいにクルマを走らせるということとは明らかに異なる、高度な運動能力が求められるスポーツにも、あるいは知的なゲームにも通ずる、難しさと喜びが共存した世界が広がっている。

 そして、タイプ992はドライバーのどんな要求にも確実に応える「分解能の高さ」を備えていた。こんなとき、出来の悪いクルマであればドライバーの操作能力にクルマの分解能が追い付かず、狙いどおりの挙動を実現できないことがある。どれほど気を遣って操っても、一定の動きを繰り返すだけ。クルマの特性上、姿勢変化のパターンが固定されてしまっているのだ。こうなると、ドライバーはクルマを正確にコントロールしようとする努力を諦めてしまう。そして運転に飽き、渋滞路での時間を持て余すことだろう。

眩惑を防止するオプションのLEDマトリクスヘッドライトが新しい表情を新型911に与える。

 しかし、私はとうとうタイプ992の限界に届かなかった。どれほど注意深く運転しても、新型911は常にその上をいってみせたのだ。渋滞した高速道路でも、制限速度が40㎞/hの一般道でも、誰もいないワインディングロードでも、それは変わらなかった。だから私は退屈せずに済んだのである。

 こうした傾向はポルシェ911がもともと持っていた特性ともいえるが、タイプ992になってそうしたキャラクターはさらに磨かれたように思う。先代モデルのタイプ991Ⅱの走りを思い出してみても、そのことがより明確になった。サスペンションのストローク感はタイプ991Ⅱのほうが豊かだが、フラット感の強いタイプ992はステアリング操作に対するレスポンスがより鋭く、ドライバーのイメージと挙動との乖離がまったくといっていいほど感じられない。エンジンの反応も同様で、ときとしてかすかなターボラグを感じさせるタイプ991Ⅱに対し、タイプ992はどんな回転域からでも、そしてどんな負荷領域からでも、スロットル操作に対して正確かつ鋭敏に反応してみせた。自分の思いどおりにクルマを操るという意味においては、タイプ991Ⅱよりタイプ992のほうが明らかに有利だと思う。

 近年のポルシェ911の進化を端的に表現すれば、洗練さの飽くなき追求だったといって間違いないだろう。その結果として快適性が磨かれ、スタビリティが向上した。これをもってして最新の911を退屈と評価する向きもあるようだが、私はそうは思わない。なぜなら、洗練さの追求こそ現代の自動車産業が進むべき道であり、技術の正常進化だと考えるからだ。

 その一方でポルシェはレスポンスとリニアリティの改善にも真摯に取り組んだ。その成果が前述した「分解能の高さ」であり、このおかげで最新の911は40㎞/hでも味わえる官能性を手に入れたのである。限界的なコーナリングはサーキットで味わえばいい。それよりも、日常的な環境でさえスポーツカーの醍醐味を満喫できるタイプ992の誕生を、私は心から歓迎したい。

インテリアが横基調となり質感も格段に向上。丸5連メーターはデジタルを駆使しながら空冷時代のデザインを再現している。
小型化されたシフトレバーやトグルスイッチの多用なども印象的だ。伝統のヘッドレスト一体型シートはホールド、快適性ともに良好。

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