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デザインレポート:フェラーリ・ローマはもっともスーツが似合うフェラーリ フェラーリ・ローマの美意識を探求する

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ローマのなかに感じる違和感

 とはいえ、ローマにも人によっては「あれ?」と感じさせる要素もなくはないと思う。
 ボディと同質化されたフロントグリルのあり方や、伝統のツインテールランプの新たな解釈。唐突とも思えるヘッドライトの造形とデイライトの在り方などだろう。
 さらに造形的いうならば、フロントフェンダー後端とフロントピラーの付け根あたりに広がる造形が、やや滑らかさを欠くと感じる人もいるかもしれない。フロントカウルからの流れと、フロントタイヤを抱くフェンダーの合流点となる部分だ。

細かいかもしれないが、このフロントピラーの付け根あたりの面の合流が気になる。
 ミッドシップモデルであればフロントタイヤがドライバーに近くなり、きれいな面で流すことができる部分だが、フェラーリのFRモデルではこれまでもなかなか解決が難しい部分となっている。フロントタイヤがかなり前方にあることや、エンジンの高さ、ドアヒンジの位置やピラーの付け根など動かせないハードポイントの問題もあって、なかなか流麗さを極めにくい条件が揃ってしまっている。
 ちなみにポルトフィーノでは、フロントからの鋭いエッジを通しきることで解決。812スーパーファストでは、フェンダーラインとフロントカウルを全く別の面と解釈し分離している。その関連付けとして、フロントカウル上の左右のエアアウトレットを強い起点として、フェンダーと同化させているのも興味深い。

左)812スーパーファストは、カウル中央からの流れとフェンダーを合わせて、ピラー付け根の面と分離している。 上)ポルトフィーノはフェンダーからの鋭いラインを通し切って、フロントピラーの付け根と関連させない形。

モンツァSP1。キャビンとフェンダーの間に余裕があることもあり、滑らかな面が構成できている。
 直近のモデルでは唯一美しく解決できているのが、モンツァSP1とSP2だろう。キャビンの前方部分がコンパクトなことによって、フロントカウルからフロントフェンダー後端への合流する面を緩やかにコントロールすることができた。しかしこれは、キャビンやフロントウインドウを極めて小さいものとして割り切ることができたからこそ可能な造形でもあった。

完璧がベストなのか? 人間的な意図がさらに愛おしさを増す

ローマの登場によって、フェラーリの新たなそして伝統的な世界が見えてくる。

 しかし、ちょっとした個人的な疑問なのだが、本当に“完璧なものにこそ美の極地が存在するのだろうか?”との思いもある。
 “チャーミング”、“愛らしい”という表現や、“愛おしい”という言葉の中には、危うげさであったり、脆(もろ)さやこわれやすさ、不完全な部分をも含むと感じるのは自分だけではないだろう。その造形は単に見え方に由来するだけではない。人の表情や言動であったり、それぞれの考え方からその人への“愛おしさ”が生まれる。
 車にしてもすべての造形は人が作ったものに間違いなく、それぞれの造形に対する考えや決断、議論がこの形を生んでいる。不変の美だけでなく、人の強い意図が生む形に危うげさや、脆さを持つとき、それがさらなる愛おしさを芽生えさせるのではないだろうか。
 そうしたデザイナーの意図や企みは、車をじっくりと見ることによって見えてくる場合もある。いろいろな光の中や、あるいは暗闇で見たり、雨滴のかぶる中、泥水を浴びた状態。さらには、嬉しい時、悲しい時。見る者の感情によっても見え方は変わってくる。ローマとその作り手が語りかけてくる多くのメッセージを理解するには、そんな長い時間が必要なのだろう。その時の連なりこそがまさに、ドルチェヴィータの意味するところなのかもしれない。

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