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デザインレポート:フェラーリ・ローマはもっともスーツが似合うフェラーリ フェラーリ・ローマの美意識を探求する

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F8トリビュートで見せた新たなミッドシップスタイル

左)ミッドシップレイアウトのF8トリビュート。これからのフェラーリデザインの一翼を担う形。上)ミッドシップにSF90ストラダーレ。濃密で高効率のパッケージとともに、攻撃的な造形が最先端イメージを創出。

 インハウスの新たなフェラーリデザインの構築から、今後の方向性の一つを示す形が2019年に登場したF8トリビュートだという。彼らはこのデザインについて、“破壊的”や“極端”といったワードも用いる。そしてさらにSF90ストラダーレの登場によって、ミッドシップによるキャビンフォワードの新たなスタイルを示したという。
 そのデザインは、レーシングカーと宇宙船の中間に位置するものとのこと。ちょっと概念的でもありわかりにくいが、新たなトレンドとして、キャビンの先端を航空機のコックピットのように小さくしてキャビンフォワードの造形により特化したのも特徴のひとつだ。その凝縮感や攻撃的といえるスタイルは、フェラーリ史上でも随一だろう。

対するFRフェラーリの新たな方向性

リヤ周りを絞り込んで、キュートさも演出するローマ。

 そして登場したローマ。
 しかし、こちらはF8トリビュートなどとはまったく対角にある存在だ。ローマのベースとなるポルトフィーノも、デザイン的にはF8トリビュートなどと同一の流れと見ることができる。このことから、ローマによって大きな方向性の転換を行なってきた。
 この辺り、デザイン担当役員であるフラビオ・マンゾーニ氏によれば、今後も両車の中間に当たるデザインを採用するモデルは登場しないとのこと。この両極端の2つの方向性がこれからも共存するということだ。

上)1968年撮影のフェラーリ365GTB/4(デイトナ)。 左)1959年撮影のフェラーリ250GTベルリネッタ。

 その優美な面構成は、不要なラインを極力排除したもので、できるだけシンプルに美しい抑揚によって実現された形といえる。これはかつての様々なカロッツェリアによって多くの解釈のなされた250GT系やデイトナなどを彷彿させるが、最大の特徴はそれが決して古臭い造形ではないということだ。
 ここにこそフェラーリデザインも注力したというが、結果として生み出された造形が普遍の美であることの証かもしれない。

ローマ的デザインの登場を予感させたモンツァSP1 / SP2

2018年のジュネーブショーで発表されたモンツァSP1。

こちらが2シーターのモンツァSP2。
 実は、この流れは2018年のジュネーブショーに出品されたモンツァSP1とSP2に表現されていると思う。40年代末から50年代のモデル166MMや750モンツァ、860モンツァにインスピレーションを得たモデルということだが、ローマ以上にロマンティックな装いに感じる。
 その本質にあるのは、人間のDNAにも訴えかけるような造形美なのだと思う。続くローマのスポーティでありながら滑らかなスタイルは、現在のフェラーリ・ラインナップの中で最もスーツの似合うモデルといえるだろう。この優美なボディは、サーキットやスポ魂といったスタンスを一切感じさせないのだ。

フェラーリ750モンツァ。その美しさがまったく衰えないのはなぜだろうか。
 やはりここにこそ、イタリア人の美意識のひとつにある“ビーナス像”を感じずにはいられない。
 整理されたデザインの極致として“機能美”を表現するモデルは少なくないが、とりわけ人の骨格と筋肉に着目することが機能美に通じることもある。しかしそれだけでは伝わらない“情感”の表現がその先にあると思う。
 必要なものを削ぎ落とした体脂肪の極めて低い形がアスリートの姿なのだが、モンツァSP1/SP2やローマは必ずしも機能美だけに収まらない。
 そこには骨と筋肉を取り囲む、肉体や脂肪の存在が感じられる。この筋肉と骨を取り囲む肉体は、人にとってはプロテクトや、保温などの機能を持つが、さらには、そのスキンにこそ愛らしさ、温もり、そしてセクシャルな印象を抱かせることも欠かせない事実だ。
 “人間”という、未だ解明されていない創造物の探求は様々な分野で行なわれる。その中でも美の創造物としての“人間”を追求することによって見えてくるものは、人の直感的な感情につながるのだろう。
 このローマを理解するには“肉体とは何なのか”といった、時に哲学的な探求までをも必要とすることなのかもしれない。そこから見えてきた形、それがローマの造形であったのではないかと思える。

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