1〜1.5mの間隔が目安、難しい場合は徐行を

近年、健康志向の高まりや手軽なデリバリーサービスの普及によって、街中で日常的に自転車を利用する人が増加している。
それにともなって、車道を走る自転車とクルマが接触する交通事故も全国的に後を絶たないのが実情だ。
とくに、クルマが自転車のすぐ横を追い抜く瞬間に発生する巻き込み事故や、わずかな接触による転倒事故は、生身のサイクリストにとって命に関わる重大な結果を招きかねない。
また、道路の左端には段差や排水溝、落下物などが存在することも多く、自転車が障害物を避けるために、突発的に車道中央寄りに膨らんでくるリスクも潜んでいる。
このような背景から、2026年4月の法改正により、自転車を追い越す際の安全な間隔について「十分な距離」を保つことが明確に定められた。

では、”十分な距離”とは具体的にどれくらいの距離が想定されているのだろうか。警察庁が公開する資料によれば、少なくとも1メートル程度の間隔を空けることがひとつの目安として示されている。
また、相手のふらつきなどを考慮すれば、最低でも1〜1.5メートル程度の距離を確保することが望ましいといえるだろう。

しかし、道幅が狭い市街地の道路や対向車が連続して来ている状況など、どうしても1.5メートルという十分な間隔を確保することが物理的に難しいケースも少なくない。
そのような場合は、焦って無理に追い越しをするのではなく、自転車の側方を通過する前におおむね時速10km以下で徐行することが求められる。
強引な追い抜きは、安全運転義務違反のおそれも

とはいえ、ルールが明確化されたからといって、不十分な距離のまま強引に追い抜く行為は許されるものではない。
なぜなら、自転車を危険に晒すような無理な追い越しは、道路交通法が定める「安全運転義務違反」に問われるおそれがあるためだ。
実際、警察官に危険な運転であると客観的に判断され、安全運転義務違反であると見なされた場合は、普通車であれば違反点数2点が加算され、9000円の反則金が科せられる。
くわえて、至近距離を猛スピードで通り過ぎる行為は、直接的な接触がなかったとしても、クルマが巻き起こす強烈な風圧で自転車のバランスを崩させ、転倒させてしまう事故にも直結しかねない。
とくに大型トラックや空気抵抗の大きい車両などが横をすり抜ける際の風圧は想像以上に強いため、ドライバー自身が思っている以上の配慮が不可欠となる。

だからこそ、運転時には「1〜1.5メートル」といった数値の目安だけに頼るのではなく、実際の交通状況や道路環境に応じた柔軟かつ冷静な対応が必要となる。
そのため、単に距離を測るだけでなく、相手を驚かせないようあらかじめ速度を十分に落とし、いつでも止まれる心構えで慎重に通行する意識が重要といえるだろう。
自転車もクルマも同じ道路を共有する仲間として、お互いが安心できる思いやりのある運転を心がける必要がありそうだ。
