BMW・R 1300 RT AUTOMATED SHIFT ASSISTANT……3,815,000円~

2019年に排気量を84cc拡大するとともに、BMWシフトカムを採用。車名の数字を1200から1250へと増やしたR-RT。2021年にはスタイリングを刷新し、ACCやフルインテグラルABS Pro、次世代型ダイナミックESA、エンジンブレーキ・トルク・レギュレーター(MSR)などを採用した。2025年に発表されたR 1300 RTは、R 1300 GS/GSアドベンチャーとほぼ同じ板金シェル構造のメインフレームを採用。シートレールは1250時代のチューブラースペースフレーム構造から、アルミダイキャスト製のモノコックフレームに変更している。フロントサスペンションはテレレバー、リヤサスペンションはEVOパラレバーだ。
新装備のダイナミック・シャシー・アダプション(DCA)は、走行状況に応じてサスペンションの減衰力やスプリングの硬さを自動調整するだけでなく、車体姿勢をも可変させるシステムだ。これはライディングモードと連携しており、ダイナミックおよびダイナミックProモードを選択するとリヤの車高が上昇。キャスター角が立つことでハンドリングがシャープになり、さらにバンク角も増えるという仕組みだ。
試乗車に装着されていたタイヤはブリヂストン・バトラックススポーツツーリングT33で、指定空気圧はフロント:2.5bar、リヤ:2.9barだ。標準装備のセンタースタンドにはリフトアップをサポートする機能が盛り込まれる。
車体色はアルピン・ホワイト 3、レーシング・ブルー・メタリック、ブラック・ストーム・メタリック、ブルー・リッジ・マウンテン・ メタリックの4種類。カラー別に装備が異なるのでご注意を。なお、日本仕様はトップケースが標準装備となる。

ベテラン並みに賢いASA、ボクサーは低振動かつパワフル

BMWのRTシリーズには、ボクサーツインが2バルブから4バルブになって登場した1995年のR 1100 RTからたびたび試乗してきた。つまり筆者は、このモデルの歴史を30年以上も俯瞰してきたことになる。この間、利きすぎるサーボブレーキや、オーディオシステムによる重量増に戸惑ったりしたものの、それでも「舗装路の王者」として着実に歩んできたことは間違いない。

さて、最新のR 1300 RTが搭載するボクサーツインについては、2023年に発売されたR 1300 GSで経験済みだ。1250時代よりもさらに低振動かつスムーズで、シフトカムが切り替わるであろう5000rpm付近まで回さずとも力強く加速する。そして、φ106.5mmというビッグボアでありながら、アイドリング付近でスロットルをガバッと開けても滑らかに回転が上昇する。このマナーの良さには感心しきりで、全体の印象はGSもRTも大きく変わらない。

パーシャルロードとフルロード、二つの吸気カムを切り替える「BMWシフトカム」を採用した排気量1300cc(1299.97cc)の空水冷4ストローク水平対向2気筒エンジン。最高出力は145PS/7750rpmで、最新の排ガス規制ユーロ5+に適合している。オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)は、クラッチ操作とシフトチェンジを自動で行うシステムのこと。ヤマハのY-AMTと同様にシフトレバーはない。バンク角を考慮したダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)や、同じくバンク角に応じてエンブレの制御するエンジンブレーキ・トルク・レギュレーター(MSR)なども採用。シリンダートリムパネルの追加によって足元が濡れづらくなったのも1300の美点だ。

さて、今回試乗したR 1300 RTは「ASA」仕様である。ギアシフトアシスタントProを採用するSTD仕様との差額は12万4000円で、価格としては約3.3%のアップである。ちなみに同様の自動変速システムを採用するヤマハ・MT-07の場合、Y-AMT仕様の車両価格は約9.1%プラスなので、BMWのプライスタグは良心的と言えるかもしれない。

ASAのギヤモードは、手動モードMと自動モードDの二つがあり、その切り替えは左側スイッチボックスにあるD/Mボタンで行う。実際に走らせてみると、自動モードDにおけるギヤ選択は実に優秀で、シフトショックの少なさも含めて、まるでベテランがていねいに変速操作をしてくれているかのようだ。また、必要に応じてライダーの変速操作も受け入れてくれるので、これに慣れてしまうと手動モードMなんて不要では? などと思ってしまうほどだ。

ASAが本領を発揮するのは、ACCを組み合わせての高速巡航シーンだ。かつて2021年モデルのR 1250 RTをテストした際、東名高速でACCの追従性能に感心する一方で、100km/hから60km/hへ自動的に減速したあともギヤが6速のままなので、再加速が遅れがちなことだけが気になっていたのだ。ASA仕様のR 1300 RTは、自動モードDなら速度に応じて適切なギヤを選択してくれるので、そうしたストレスが一切ないのである。

ゆえに唯一にして最大の不満は、一度イグニッションをオフにすると必ず手動モードMに戻ってしまう現状のプログラムだ。自動モードDを常用するライダーほど、いちいちモードを切り替えることに対して面倒を感じるはずだ。何かしらの安全対策だと思われるが、これを改善してほしいと願う人は私だけではないだろう。

この巨体にしてスラロームも軽快にスイスイとこなせる

ガソリン満タンでのR 1300 RTの車重は296kgを公称。さすがに300kgに迫る車体の取り回しは重く、特に上り勾配での後退はそれなりに体力と覚悟が必要だ。

ただし、それほどのヘビーウェイトマシンでありながら、少しでも動き出してしまえば軽快に操れるのがBMWの常であり、R 1300 RTにもそれが当てはまる。1150や1200の時代は、フロントカウルの高い位置に重量物があるように感じられ、特に低速域ではゴロンと倒れてしまうような恐さを伴っていた。ところが、先代の1250や最新の1300は、オーディオシステムやヘッドライトユニットが軽量になったからだろうか、ステアリングヘッド付近の重量感がだいぶ減り、タイトなスラロームも楽にこなせるようになった。

特に感心したのは、ブレーキレバーを握りながら低速コーナーへ進入するようなシーンだ。軽快にスイッとフロントタイヤがインへ向き、スムーズに旋回態勢へと移行する。そこには、テレスコピックフォークのR 1300 Rや同RSとは異なる倒し込みや切り返しの軽さがあり、RTがフロントサスにテレレバーを採用し続ける理由がここに集約されているようだ。

電子調整式サスペンションのダイナミックESAについては、ダイナミック・シャシー・アダプション(DCA)との組み合わせにより、ライディングモードごとにダンピングやスプリングレートが自動調整される。常用するロードモードにおいては、いわゆるスカイフックのように車体が水平に保たれ、クランクを縦置きとしたボクサーツインと合わせ、まるでアスファルトの上を滑空しているかのような走行フィールが味わえるのだ。

ブレーキシステムは、右レバー/右ペダルのどちらか一方だけを操作しても前後に制動力が配分されるフルインテグラルABS Proや、ブレーキング時に意図しない加速を防ぐダイナミック・ブレーキ・コントロールを採用。タイヤ空気圧センサー(RDC)を標準装備。

筆者はかつてR 1250 RTで東京から伊勢志摩まで一気に移動したことがあるが、あまりの疲労度の少なさに驚いたのを今でも覚えている。今回はそこまでの試乗時間こそなかったが、実力の片鱗は十分に感じられた。メンテナンスパッケージなどを加えると、乗り出し価格は優に400万円を超えるが、得られるエクスペリエンスにはこの価格以上に価値があると断言できる。購入を検討されている方には、迷わずASA仕様をお勧めしたい。

ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)

シート高は825mm/845mmの2段階で、画像は低い方にセットした状態。身長175cmの筆者で両足のかかとが辛うじて接地する。ハンドルはグリップの位置が手前にあり、ライディングポジションとしては意外とコンパクト。Uターンも楽にこなせる。

ディテール解説

スリップストリーム・ディフレクターとは、手動にてボディ両サイドのパネルが上下できる機構のこと。下げた状態では走行風の一部がライダーに流れ、体温をクールダウン。一方、上げると防風効果が高まり、寒い時期に効果的だ。
試乗車のレーシング・ブルー・メタリックは、ダーククロム仕様のエキパイにデザインオプションサイレンサーⅡを組み合わせる。また、デザインオプションホイールを採用するのもこの車体色のみだ。リヤホイールが取り外しやすいように、サイレンサーが容易に脱着できるように設計されている(ただしクランプは脱着毎に要交換)。
スイングアームは片持ち式で、シャフトドライブ特有のネガを軽減するEVOパラレバーを採用。リヤサスペンションはリンクレスのモノショック。リヤブレーキディスクはφ285mmと大径だ。
キーレスライド、セントラルロッキングシステム、盗難警報装置、グリップヒーター、12Vソケットなどを採用。
厚手のグローブでも操作しやすいマルチコントローラーを中心に構成される左側スイッチボックス。右側の最上段にあるボタンはイグニッションのオン/オフだけでなく、ステアリングロックも兼ねる。
ハンドル左下にあるお気に入りボタン。それぞれに個別の機能を割り当てることができる。
10.25インチのフルカラーTFTディスプレイを採用。タコメーターのレッドゾーンはエンジンの温度によって範囲が変化する。Bluetoothを介してのスマホおよびヘッドセットとの接続機能あり。ライディングモードは標準装備のエコ/レイン/ロードのほか、走行モードProを使用するとダイナミック/ダイナミックプロも選べる。モードを変更すると、エンジンの特性曲線と合わせてダイナミックESAやDTC、MSRなども連動して切り替わる。また、走行モードProでは各機能を個別に調整可能だ。
給油口の前方にはスマホなどを収納するためのストレージコンパートメントあり。内部にはUSB充電ポートあり。
パッセンジャーはシートヒーターだけでなく、トップケースのバックレストやタンデムグリップに内蔵されたヒーターからも暖を得ることができる。
Mライトウェイトバッテリー(リチウムイオン)、ETC2.0車載器を標準装備する。
シート高の調整システムにより、ライダーシートの高さを825mmと845mmの2段階から選べるほか、座面の傾きも調整可能だ。燃料タンクはアルミ製で、容量は約24Lだ。
アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や前方衝突警告、車線変更警告機能などで使われるレーダーセンサーを車体の前後に搭載。ヘッドライトにはアダプティブライトモードが組み込まれる。ウインドスクリーンは調整式(ブラック・ストーム・メタリックは固定式)。
急ブレーキをかけるとブレーキランプが高速で点滅し、さらに速度が15km/h以下になるとハザードランプがオンになるハザードブレーキングを採用。また、後車衝突警告(RECW)も備えている。
標準装備のパニアケースは可変式ラゲッジシステムを採用しており、内部のアジャストノブを回すことでケース容量を拡張(あるいは縮小)できる。
トップケースも集中ロックシステムに対応。内部には照明あり。

R 1300 RT ASA 主要諸元

●エンジン
最高出力 107 kW (145 PS) / 7,750 rpm
エミッション制御 クローズドループ制御式三元触媒コンバーター
タイプ 空冷/水冷2気筒4ストロークボクサーエンジン、可変インテークカムシャフトコントロール BMW ShiftCam
ボア × ストローク 106.5 mm × 73 mm
排気量 1,300 cc
最大トルク 149 Nm / 6,500 rpm
圧縮比 13.3 : 1
点火 / 噴射制御 電子制御インテークパイプ・インジェクション / スロットル・バイ・ワイヤ付デジタルエンジンマネジメントシステム
排ガス基準 EU 5+

●走行性能 / 燃費
最高速度 230 km/h
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時) 20.4 km/L
WMTCに準拠したCO2排出量 115 g / km
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン(スーパー)(max 15%エタノール、E10/E15)、95 ROZ/RON、90 AKI

●電装関係
オルタネーター 650 W
バッテリー 12 V / 12.5 Ah、メンテナンスフリー

●パワートランスミッション
クラッチ 湿式多板油圧式クラッチ、アンチホッピング機能付き
ミッション 常時噛み合い式6速トランスミッションをエンジンブロックに内蔵
駆動方式 カルダンシャフト

●サスペンション / ブレーキ
フレーム 板金シェル構造のフレーム、リアフレームはアルミニウムダイキャスト
フロントサスペンション BMW Motorrad テレレバー、センタースプリングストラット、コイルスプリング付き
リアサスペンション BMW Motorrad EVO-パラレバー、アルミキャストシングルスイングアーム
サスペンションストローク、フロント/リア 149 mm / 158 mm
軸距 1,500 mm
キャスター 121.5 mm
ステアリングヘッド角度 64.2°
ホイール アルミニウムキャストホイール
リム(フロント) 3.50″ × 17″
リム(リア) 6.00″ × 17″
タイヤ(フロント) 120/70 ZR17
タイヤ(リア) 190/55 ZR17
ブレーキ(フロント) ダブルディスクブレーキ(310 mm 径)、4ピストンラジアルマウントキャリパー
ブレーキ(リア) シングルディスクブレーキ(285 mm 径)、2 ピストンフローティングキャリパー
ABS BMW MotorradフルインテグラルABS Pro

●寸法 / 重量
シート高、空車時 825 / 845 mm
インナーレッグ曲線、空車時 1,840 mm
燃料タンク容量 約24 L
リザーブ容量 約4 L
全長 2,230 mm ※トップケースを含まず
全高 1570 mm
全幅 970 mm ※ミラー付き、ハンドルバーウェイト付き
乾燥重量 265 kg
車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備) 281 kg
許容総重量 510 kg
最大積載荷重(標準装備の場合) 229 kg
車両重量(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時) 296 kg

※生産国:ドイツ