BMW・R 1300 RT AUTOMATED SHIFT ASSISTANT……3,815,000円~




ベテラン並みに賢いASA、ボクサーは低振動かつパワフル

BMWのRTシリーズには、ボクサーツインが2バルブから4バルブになって登場した1995年のR 1100 RTからたびたび試乗してきた。つまり筆者は、このモデルの歴史を30年以上も俯瞰してきたことになる。この間、利きすぎるサーボブレーキや、オーディオシステムによる重量増に戸惑ったりしたものの、それでも「舗装路の王者」として着実に歩んできたことは間違いない。
さて、最新のR 1300 RTが搭載するボクサーツインについては、2023年に発売されたR 1300 GSで経験済みだ。1250時代よりもさらに低振動かつスムーズで、シフトカムが切り替わるであろう5000rpm付近まで回さずとも力強く加速する。そして、φ106.5mmというビッグボアでありながら、アイドリング付近でスロットルをガバッと開けても滑らかに回転が上昇する。このマナーの良さには感心しきりで、全体の印象はGSもRTも大きく変わらない。

さて、今回試乗したR 1300 RTは「ASA」仕様である。ギアシフトアシスタントProを採用するSTD仕様との差額は12万4000円で、価格としては約3.3%のアップである。ちなみに同様の自動変速システムを採用するヤマハ・MT-07の場合、Y-AMT仕様の車両価格は約9.1%プラスなので、BMWのプライスタグは良心的と言えるかもしれない。
ASAのギヤモードは、手動モードMと自動モードDの二つがあり、その切り替えは左側スイッチボックスにあるD/Mボタンで行う。実際に走らせてみると、自動モードDにおけるギヤ選択は実に優秀で、シフトショックの少なさも含めて、まるでベテランがていねいに変速操作をしてくれているかのようだ。また、必要に応じてライダーの変速操作も受け入れてくれるので、これに慣れてしまうと手動モードMなんて不要では? などと思ってしまうほどだ。

ASAが本領を発揮するのは、ACCを組み合わせての高速巡航シーンだ。かつて2021年モデルのR 1250 RTをテストした際、東名高速でACCの追従性能に感心する一方で、100km/hから60km/hへ自動的に減速したあともギヤが6速のままなので、再加速が遅れがちなことだけが気になっていたのだ。ASA仕様のR 1300 RTは、自動モードDなら速度に応じて適切なギヤを選択してくれるので、そうしたストレスが一切ないのである。
ゆえに唯一にして最大の不満は、一度イグニッションをオフにすると必ず手動モードMに戻ってしまう現状のプログラムだ。自動モードDを常用するライダーほど、いちいちモードを切り替えることに対して面倒を感じるはずだ。何かしらの安全対策だと思われるが、これを改善してほしいと願う人は私だけではないだろう。
この巨体にしてスラロームも軽快にスイスイとこなせる

ガソリン満タンでのR 1300 RTの車重は296kgを公称。さすがに300kgに迫る車体の取り回しは重く、特に上り勾配での後退はそれなりに体力と覚悟が必要だ。
ただし、それほどのヘビーウェイトマシンでありながら、少しでも動き出してしまえば軽快に操れるのがBMWの常であり、R 1300 RTにもそれが当てはまる。1150や1200の時代は、フロントカウルの高い位置に重量物があるように感じられ、特に低速域ではゴロンと倒れてしまうような恐さを伴っていた。ところが、先代の1250や最新の1300は、オーディオシステムやヘッドライトユニットが軽量になったからだろうか、ステアリングヘッド付近の重量感がだいぶ減り、タイトなスラロームも楽にこなせるようになった。
特に感心したのは、ブレーキレバーを握りながら低速コーナーへ進入するようなシーンだ。軽快にスイッとフロントタイヤがインへ向き、スムーズに旋回態勢へと移行する。そこには、テレスコピックフォークのR 1300 Rや同RSとは異なる倒し込みや切り返しの軽さがあり、RTがフロントサスにテレレバーを採用し続ける理由がここに集約されているようだ。
電子調整式サスペンションのダイナミックESAについては、ダイナミック・シャシー・アダプション(DCA)との組み合わせにより、ライディングモードごとにダンピングやスプリングレートが自動調整される。常用するロードモードにおいては、いわゆるスカイフックのように車体が水平に保たれ、クランクを縦置きとしたボクサーツインと合わせ、まるでアスファルトの上を滑空しているかのような走行フィールが味わえるのだ。

筆者はかつてR 1250 RTで東京から伊勢志摩まで一気に移動したことがあるが、あまりの疲労度の少なさに驚いたのを今でも覚えている。今回はそこまでの試乗時間こそなかったが、実力の片鱗は十分に感じられた。メンテナンスパッケージなどを加えると、乗り出し価格は優に400万円を超えるが、得られるエクスペリエンスにはこの価格以上に価値があると断言できる。購入を検討されている方には、迷わずASA仕様をお勧めしたい。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
シート高は825mm/845mmの2段階で、画像は低い方にセットした状態。身長175cmの筆者で両足のかかとが辛うじて接地する。ハンドルはグリップの位置が手前にあり、ライディングポジションとしては意外とコンパクト。Uターンも楽にこなせる。
ディテール解説















R 1300 RT ASA 主要諸元
●エンジン
最高出力 107 kW (145 PS) / 7,750 rpm
エミッション制御 クローズドループ制御式三元触媒コンバーター
タイプ 空冷/水冷2気筒4ストロークボクサーエンジン、可変インテークカムシャフトコントロール BMW ShiftCam
ボア × ストローク 106.5 mm × 73 mm
排気量 1,300 cc
最大トルク 149 Nm / 6,500 rpm
圧縮比 13.3 : 1
点火 / 噴射制御 電子制御インテークパイプ・インジェクション / スロットル・バイ・ワイヤ付デジタルエンジンマネジメントシステム
排ガス基準 EU 5+
●走行性能 / 燃費
最高速度 230 km/h
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時) 20.4 km/L
WMTCに準拠したCO2排出量 115 g / km
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン(スーパー)(max 15%エタノール、E10/E15)、95 ROZ/RON、90 AKI
●電装関係
オルタネーター 650 W
バッテリー 12 V / 12.5 Ah、メンテナンスフリー
●パワートランスミッション
クラッチ 湿式多板油圧式クラッチ、アンチホッピング機能付き
ミッション 常時噛み合い式6速トランスミッションをエンジンブロックに内蔵
駆動方式 カルダンシャフト
●サスペンション / ブレーキ
フレーム 板金シェル構造のフレーム、リアフレームはアルミニウムダイキャスト
フロントサスペンション BMW Motorrad テレレバー、センタースプリングストラット、コイルスプリング付き
リアサスペンション BMW Motorrad EVO-パラレバー、アルミキャストシングルスイングアーム
サスペンションストローク、フロント/リア 149 mm / 158 mm
軸距 1,500 mm
キャスター 121.5 mm
ステアリングヘッド角度 64.2°
ホイール アルミニウムキャストホイール
リム(フロント) 3.50″ × 17″
リム(リア) 6.00″ × 17″
タイヤ(フロント) 120/70 ZR17
タイヤ(リア) 190/55 ZR17
ブレーキ(フロント) ダブルディスクブレーキ(310 mm 径)、4ピストンラジアルマウントキャリパー
ブレーキ(リア) シングルディスクブレーキ(285 mm 径)、2 ピストンフローティングキャリパー
ABS BMW MotorradフルインテグラルABS Pro
●寸法 / 重量
シート高、空車時 825 / 845 mm
インナーレッグ曲線、空車時 1,840 mm
燃料タンク容量 約24 L
リザーブ容量 約4 L
全長 2,230 mm ※トップケースを含まず
全高 1570 mm
全幅 970 mm ※ミラー付き、ハンドルバーウェイト付き
乾燥重量 265 kg
車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備) 281 kg
許容総重量 510 kg
最大積載荷重(標準装備の場合) 229 kg
車両重量(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時) 296 kg
※生産国:ドイツ



