中央本線は東京駅から長野県の塩尻駅までの中央東線と、塩尻駅と名古屋駅とを結ぶ中央西線から成っている幹線路線だ。管轄は中央東線がJR東日本、中央西線がJR東海で、そのため直通運転はない。そんな中央本線には現行路線となる以前の、いわゆる旧線が所どころに残っている。そうした鉄道廃線を探索しながらツーリングするのが好きだ。そこで中央本線の旧線遺構を訪ねながら、建設が進むリニア中央新幹線の見学センターを目指すことにした。新旧の鉄道施設を満喫するカブツーリングである。

甲州街道の沿道に中央本線旧線遺構が点在

高尾から甲州街道(国道20号線)を西へ向かって走る。ワインディング走行を楽しみながら大垂水峠を越え、相模湖を左に見ながら藤野、上野原、四方津と進んでいく。中央本線と桂川が付かず離れず並行している道は、幹線国道ということもあって車の往来が少なくない。しかし適度にカーブが連続する道は走っていて気持ちがいいし、山肌に農家が点在する風景も長閑で旅情を掻き立てる。

梁川を過ぎて程なく小さな梁川橋を渡るが、すぐ右手を走る中央本線と甲州街道の間に石積みの橋台がある。橋梁はすでにないが中央本線旧線の遺構である。大動脈である国道のすぐ脇にいまもこうして廃線跡が残っているのだから、鉄道ファンにとって実に魅力あるエリアである。

江戸時代の宿場町風情が残る鳥沢を抜け、猿橋へと向かう途中には、右手の山の斜面にレンガ造りのトンネルが残っている。さすがにカブで行くことはできないが、時間をかけて探索すれば、何本ものトンネルに出会えるのだ。





現在の中央本線と甲州街道の間に旧線の梁川橋梁の橋台が残っている
旧甲州街道の猿橋近くに大原隧道の遺構がある
木々に覆われた中にレンガ造りの大原隧道を見ることができる

旧線遺構で少しばかり鉄分補給したところで、日本三奇橋のひとつである「甲斐の猿橋」に立ち寄り観光してみた。ちなみに日本三奇橋とは、山口県岩国市の錦帯橋、徳島県三好市の祖谷のかずら橋、そしてここ甲斐の猿橋を指すのだそうだ。

日本三奇橋に数えられる甲斐の猿橋。現在は人道橋となっている

山梨名物吉田うどんを味わう

山梨には食の名物がいくつかあり、中でも有名なのが「ほうとう」と「吉田うどん」だ。というわけで、今回の昼飯に選んだのは吉田うどん。さっそく富士吉田方面へとスーパーカブを導いていく。

国道20号線甲州街道を大月の中心方面へ進み、都留高校前交差点を南側に、国道139号線に入る。富士急行線に沿ってどんどん進み、都留市街を抜けて少し行った先で国道を外れる。目的地は名勝「田原の滝」だ。

富士山の噴火による溶岩が作り出した独特の地形が、桂川に美しい渓谷を生み出した。そんな渓谷に作り上げられた滝が田原の滝だ。かつて松尾芭蕉が訪れ「勢ひあり氷消えては滝津魚」と詠んだ滝で、四季折々の美しい景観を見せてくれる。

駐車場にカブを止めて、滝の近くまで行き眺めてみるが、迫力は感じるものの美しさは実感しにくい。そこで国道につながる橋から改めて眺めてみる。滝の全体が見渡せてなかなかいい。実際に観光写真もこの橋の上から撮ったものだ。気温30度の中を走ってきた体に清涼感を与えてくれた。

桂川の渓谷に迫力の姿を見せてくれる田原の滝
松尾芭蕉もかつてこの滝を訪れ、「勢ひあり氷消えては滝津魚」と詠んでいる

爽快になったところで吉田うどんを求めて走り出すことにした。界隈には多くの店があるので、どこがいいのか迷う。そこでたまたま遊びに来ていた親子連れにおすすめの店を聞いてみた。紹介されたのは「山もとうどん」。リニア見学センターへ向かう途中にある店なので、そこに決定。

昼を過ぎていたので並ぶことなく入店。王道の肉うどんを注文する。吉田うどんの名店といわれるところに何ヶ所か行っているが、ここ山もとうどんの麺が一番太くて腰が強かった。結果的にしっかり嚙むことになるので満足感があった。

地元の人だけでなく観光客にも人気の山もとうどん。営業10:30~14:00 火曜、水曜定休
馬肉とキャベツが添えられた肉うどん。腰の強い太い麵が吉田うどんの特徴だ

時速500kmで目の前を駆け抜けるリニア中央新幹線は圧巻

 リニア見学センターには多くの来館者が訪れていた。駐車場にカブを止めセンターに足を踏み入れると、2つの建物があり、手前にある建物がわくわく山梨館で奥にあるのがどきどきリニア館となっている。リニア中央新幹線の情報を知るにはミュージアム要素のあるどきどきリニア館を見学するのが最適。もちろん館内から実験線の走行シーンを見ることができる。入館料は一般・大学生が420円だ。
 一方のわくわく山梨館はお土産物などの販売がされている観光施設で、こちらは入館無料。3階のフリースペースで走行シーンを見ることができる。
 このリニア見学センターには4、5回来ていて、どきどきリニア館もすでに見学済み。なので今回は、わくわく山梨館で走行を見るだけにした。
 見学スペースに行くとさっそく、甲府方面からの車両が走行していて、2分ほどで目の前を通過する状況だった。走行状況はモニターで確認できるようになっているのだ。そしてホワイトのボディにブルーのラインがあしらわれたL0系が時速500kmのスピードで駆け抜けていった。速い!何度見てもその速さに圧倒される。
 1時間ほど待って、折り返しを見る。この日の車両は従来型のL0系だった。昨年からブラッシュアップされたL0系改良型の走行実験も行われていて、本当はそちらが見てみたかったのだが、まあ仕方がない。いずれにしても、手軽に時速500kmを見られるのはすごいことだと再認識した。

観光施設になっているわくわく山梨館
リニア中央新幹線のさまざまな情報を知ることができるどきどきリニア館。入館料は一般・大学生420円
走行の位置情報などはフリースペースのモニターで確認できる。速度は504km/hを表示している
時速500kmで目の前を通過するL0系。速さに圧倒される

 帰りのルートには秋山地区を通る県道35号線を利用した。交通量が少なくて快適なのでよく利用する道だ。実はリニア実験線も秋山方面に伸びているのだ。なのでトンネルや橋梁などを見られるところも何ヶ所かある。県道沿いでは雛鶴峠の手前で施設が見られる。また橋梁などは南側に林道をたどった先で見ることができる。

林道をたどっていった先にあるリニア中央新幹線の軌道

 こうして新旧の鉄道施設を訪ねながら、観光名所や名物料理を堪能したゆるカブツーリングを楽しんだのである。
 走行距離は約150kmで、給油量は2.23L。燃費は約67km/Lという結果だった。昼食の肉うどんとガソリン代を合わせてかかった費用は、約1000円だった。