車重わずか35kg! QR50は小さな本格オフローダー

キッズがクローズドコースでバイクに親しむために、1982年にホンダから発売されたQR50。ホンダの公式資料では、教育用2輪車として開発され、一般公道では走行できないモデルとされている。
乾燥重量はわずか35kg、シート高も495mmという超コンパクトな車体に、最高出力2.7psを発揮する49cc空冷2ストローク単気筒エンジンを搭載。クラッチ操作を必要としないオートマチック変速に加え、スピード/出力制御機構や飛び出し防止機構も備えるなど、初めてバイクに触れる子どもでも扱いやすいよう工夫されていた。
もちろん、ノーマルのQR50は大人が乗ることを前提にしたモデルではない。そこでエンジンや車体周り、電装系を見直し、大人も楽しめる独自の一台へと再構成。小さな車体へ本気の技術と遊びゴコロを注ぎ込んだのだ。
手掛けたのは、モトコンポのカスタムやパーツ開発でもお馴染みのサブアーム。実はこのQR50、ラーメン店の裏で長く置かれていたところを不憫に思い、譲り受けたのだとか。役目を終えかけていたキッズバイクが、ここから世界に1台のマシンへと生まれ変わっていく。

赤くパウダーコートされたフレームに、NASCAR風のフルラッピングを組み合わせたQR50。大人が乗ると、その小ささがさらに際立つ。
モトコンポ譲りの電装と70cc化で“大人仕様”へ

競技専用車のQR50を公道で楽しめる仕様へ仕立てるうえで、最初の課題となったのが電装系だ。ノーマルにはヘッドライトもウインカーもないため、モトコンポ用CDIを移植し、ハーネスはワンオフで製作。ヘッドライトはゼッケンプレート内に小型LEDライトを2個埋め込み。超小型LEDのウインカーとテールランプも追加し、小さな車体の雰囲気を崩さず灯火類をまとめている。
エンジンはメトラ製キットによって70ccへ排気量アップ。ワンオフ製作したステンレスチャンバーを組み合わせ、大人が乗っても“まぁまぁそこそこ”走れる力を手に入れた。ただし、駆動系はノーマルだから1速固定のまま。排気量だけを聞けばものすごく速そうだが、実際にはスピードを競うようなマシンではない。小さな車体がチョコチョコと走る、その感覚こそが楽しいのだ。
足周りはホンダDJ・1用ホイールを流用して8インチ化し、モンキー用の3.50-8タイヤを装着。ノーマルの前後10インチから小径&ワイドな組み合わせへ変更したことで、車高を抑えながらカスタム車らしい塊感を作り出している。スピードメーターにはエースウェル製を採用。マグネット式のデジタル表示で、速度のほか走行時間や平均速度なども確認できる。シートは車体色に合わせてブラウンのアルカンターラへ張り替えた。
そして、このマシンの印象を決定づけているのが外装だ。フレームは鮮やかなレッドでパウダーコートし、サイドカウルにはNASCARをイメージしたフルラッピングを施工。表から見える部分だけでなく、カウルの裏側にまでイラストが描かれているところにも遊ゴコロが表れている。
70cc化されたからといって、未踏の大地をグングン進めるわけではない。爆発的に速いわけでもない。でも、こんなに小さなQR50が大人を乗せて走り、信号待ちでは周りから二度見される。そんな楽しさは、速さや便利さだけでは決して味わえない。小さいからこそ本気で遊べる、間違いなく世界に1台のカスタムマシンである。
「これ、どこで乗るの?」「そもそも実用性はあるの?」と正論を並べれば、答えは簡単かもしれない。でも、ミニバイクの楽しさは“正解”だけでは測れない。小さな車体にアイデアと手間を詰め込み、誰も思いつかなかった一台を形にする。その自由な発想と熱量こそ、ミニバイク文化の面白さではないだろうか。

エースウェル製デジタルメーターをコンパクトに装着。速度はマグネット式で検出し、走行時間や平均速度なども表示できる。

シートはカラーに合わせブラウンのアルカンターラで張り替えられている。

NASCAR風グラフィックは、カウルの表面だけでなく裏側まで施工。見えない場所にも遊びゴコロが詰め込まれている。ウインカーとテールランプには小型LEDを採用。

メトラ製キットで排気量を70ccへアップ。ワンオフのステンレスチャンバーを組み合わせ、大人が楽しめる力を与えた。
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※この記事は月刊モトチャンプ2022年4月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
