原チャリ界に新風! 「KS-1/2」から進化した本気のミニモタード

こと“原チャリ”となると、話題に挙がることが少ない国産メーカーがある。大排気量車を中心に展開している「カワサキ」だ。自社ではかたくなにスクーターを作らず、スズキからのOEMでビッグスクーターを販売していた過去はあるが、現在まで発売された50ccモデルを数えても片手で足りるほど。そんなカワサキ車のなかで、Zやニンジャなどと比肩するブランドこそKS/KSRシリーズである。

フルサイズ原付スポーツのAR50/80のパワーユニットを用いて、1987年に登場したのが元祖ミニモタードと呼ばれる「KS-1/2」。その3年後、水冷化や倒立フロントフォーク、リヤのディスクブレーキ、12インチホイール化などでアップデートしたのが「KSR-1/2」だ。オフルックの装いを考えれば、AE50の後継と言った方が正しいかもしれない。

1987年に登場した前身モデルのKS-1。10インチホイールを履く小さな車体に、AR50系の空冷2ストエンジンを搭載していた。

1990年に登場したKSR-1。12インチホイールや倒立フォークを採用し、KSシリーズから車体も走りも大きく進化した。

さておき、ペット感覚の可愛らしいフォルムと、フルパワーを叩き出す7.2psのパフォーマンスは、硬派気質のカワサキ乗りにとって絶好のセカンドバイクとして重宝された。とくに79cc版のKSR-2の方が人気を集めたのも、“原付小僧”だけでなく中免以上のライダーが好んだ証だろう。引いてはNSR50/80やTZM50Rの好敵手として、10年以上にわたって親しまれたのである。

12インチなのに存在感十分! “カッコ可愛い”オフロードルック

KSR-1は、NSR50やTZM50Rの良きライバルと評されることも多いが、デビュー当時の対抗馬はデュアルパーパスのTDR50が該当する。なぜかTDRは早々に脱落したが、KSRシリーズがこれほどの人気を獲得したのは、当時流行していたフルカウルのレーサーレプリカではなく、オフロードスタイルを貫いたことも要因だろう。

12インチ向けに絶妙なバランスでデフォルメされたボディは、小さいながらもしっかりとシュラウドを備えて“カッコ可愛い”のだ!

ヘッドライトを包む小さなライトカウルと、左右へ張り出したシュラウドを装備。ミニサイズでもトレールマシンらしい存在感は十分だ。

可愛らしい見た目とは裏腹に、中身はかなり硬派。49ccの水冷2ストローク単気筒エンジンは最高出力7.2ps/8000rpm、最大トルク0.65kgm/7000rpmを発揮し、6速ミッションを組み合わせる。単に小さく作ったバイクではなく、しっかり走って、しっかり遊べるように作り込まれていたのである。

倒立フォーク&ユニトラックサス! 原付離れした本気の足周り

KSR-1/2と言えば、外せないのが倒立フロントフォークとユニトラックサスペンションだ。国産市販車として初めて倒立フロントフォークを採用したレーサーレプリカモデル「ZXR」シリーズに続いて採用され、φ30mmのインナーチューブにゴールドのアウターを組み合わせた。剛性はもちろん、見た目も豪華!

リヤにはスタビライザー付きの角形スイングアームと、カワサキ伝統のユニトラックサスを採用。小さな車体ながら前後に十分なストロークを持たせ、街中だけでなく荒れた路面でも軽快に走れる足周りを作り上げていた。

ゴールドのアウターチューブが目を引く倒立式フロントフォーク。ミニサイズながら、見た目の本気度は大排気量車にも負けていない。

リヤショックは車体中央へ収めたリンク式。スタビライザー付きスイングアームと合わせ、コンパクトな車体をしっかり支える。

フロントとリヤにはともにディスクブレーキを装備し、タイヤサイズは前後ともに100/90-12。小径ながら十分な太さを持つタイヤと本格的な足周りが、KSR独特のどっしりしたスタイルを形作っていた。

低速からキビキビ! 街中でも峠でもパワーを使い切れる

見た目は“カッコ可愛い”ミニオフだけれど、走らせればキッチリ2ストスポーツ。しかも、ただ高回転までブン回して楽しむだけではなく、街中でもパワーを使いやすいように仕立てられている。

機能面もトレール車的で、ピークパワーを低速寄りに設定。6速ミッションも全体的にローギヤードに振られており、低速から車体をしっかりと押し出していく。

アップライトなハンドルと腰高のポジションも相まって、入り組んだ細道などでもハンドルを使って強引に方向転換するのも容易! 原付といえども、街中では持て余しがちな2ストのパワー感を発揮しやすいため、普段使いではNSR50などよりフレンドリーに感じられた。

小さな車体を生かし、街中をキビキビと駆け抜ける。高回転まで引っ張らなくても前へ出る扱いやすさが、KSR-1の持ち味だ。

また、純正サスペンションはソフトだけれどストローク量はたっぷりで、ステップも足底をがっちりホールドしてくれる。前後ブレーキも程よく効き、街中から峠まで安全に楽しく走れるファンバイクなのだ。

これらは90年代後半に登場したDトラッカー250にも通ずるところが多い。当時のカワサキを振り返れば、ゼファーやZZ-Rなど各ジャンルで定番化させたモデルも多々あり、KSRも含めて我が道を突き進んだ“反骨精神”が花咲いた結果なのだと思う。

小さくても窮屈じゃない! 立ち気味の姿勢でラクに操れる

見た目はちんまりしているけれど、跨ってみれば案外ちゃんとしている。腰高でアップライトな姿勢は窮屈さがなく、ハンドルをグイッと使って車体を振り回しやすい。小さくても、乗った感触まで“おもちゃ”ではないのだ。ブレースバーが追加されたオフロード風のハンドルバーを採用。ハンドルまでの距離は短めで、自然とシート後方へ座るポジションになるが、シート高は715mmあり、アップライトな姿勢なので窮屈感はない。

身長179cmのモルツが跨るとこのサイズ感。小さな車体でもヒザ周りに余裕があり、上体を起こした自然な姿勢で乗れる。

メーターは大きめの速度計に、ウインカー、水温、オイル、ニュートラルなどのインジケーターを内蔵したシンプルなもの。KSR-1は60km/hスケールで、原付二種となるKSR-2は110km/hスケールを採用していた。

ハンドル中央にはブレースバーを装備。左右へ大きく切れるため、狭い場所での取り回しやUターンもしやすい。

KSR-1/2はいずれも一人乗り設定。細身の一体型シートは、最終年型となる1998年モデルを除いて基本的にブルー系だが、ボディカラーによって微妙に色が異なる。

前後に長いフラット形状で、走る場面に合わせて着座位置を変えやすい。車体の小ささに対して座面には余裕がある。

シートを外せば、エアクリーナーボックス、バッテリー、車載工具や書類などの収納にアクセスできる。ただし、スクーターのような荷室はない。

シート下は収納庫ではなく、バッテリーや工具類へアクセスするためのサービススペースとなる。

純正サイレンサーはアップタイプを採用。テールレンズやウインカーはKDX125SRなどと同じ部品を使用しており、細部からもカワサキのオフロード車らしさが感じられる。

純正サイレンサーは車体右側へ高く配置。シンプルで機能的なテール周りも、オフロード車らしい仕上がりだ。

KSR110として再登場! AT仕様でさらに身近な存在へ

そんなKSR-1/2は、1998年の排ガス規制を受けて2000年過ぎに生産を中止。このままフェードアウトすると思われたが、2003年に4スト化されてカムバック! 新生KSR110はタイ生産で、コンペ仕様のKLX110のエンジン一式を転用しており、カブと同じような構造の遠心クラッチを採用。クラッチレバー操作を必要としないため、AT限定免許でも扱える異例の存在として注目を集めた。

2003年に登場したKSR110。2ストから4ストへ転換しながら、12インチの小さなオフロードルックはしっかり受け継いだ。

原付一種の49ccモデルは廃番となったものの、同時期のエイプ100/XR100モタードと切磋琢磨し、4MINI(ヨンミニ)ファンを楽しませてくれた。なお、レースではKSR-1/2時代から活躍していたが、このKSR110も負けず劣らず大フィーバー! 初期のDE耐レースなどは排気量の関係でレギュレーションに合致せず参加できなかったけれど、ワンメイクレースも開催された。

さらに鈴鹿ミニモト4時間耐久レースでは、排気量分?のストレートスピードを武器に、ホンダ勢と互角の勝負を繰り広げたのを鮮明に覚えている。

独自の世界観を持ち、他車とつかず離れずの良き関係を築いたKSR110は、2009年に日本での販売を終了。以降は輸入モデルとして数年間販売された。正味30年近い歴史を持つKS/KSRブランドの魂はZ125へと引き継がれ、今に至っている。

“カッコ可愛い”だけじゃない! カワサキらしさを凝縮した一台

中古車市場ではKSR-1/2が、古いながらも希少な2ストということもあって高値傾向で、その人気ぶりがうかがえる。とくにグリーンカラーは経年劣化による色褪せが目立ちやすいため、購入時は外装の状態も要チェック!

可愛らしい12インチの車体に、7.2psの水冷2スト、6速ミッション、倒立フォーク、ユニトラックサス、前後ディスクブレーキを凝縮。街中では気軽で、アクセルを開ければしっかり刺激的。原チャリ界に新風を巻き起こしたKSR-1は、“カッコ可愛い”だけでは終わらない、実にカワサキらしい本気のミニモタードだったのである。

カワサキKSR-1主要諸元

全長×全幅×全高:1660×720×960mm
ホイールベース:1140mm
最低地上高:210mm
シート高:715mm
車両重量:86kg
総排気量:49cc
エンジン形式:水冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ
内径×行程:39×41.6mm
圧縮比:7.9:1
最高出力:7.2ps/8000rpm
最大トルク:0.65kgm/7000rpm
始動方式:キック
燃料タンク容量:8L
タイヤサイズ(前・後):100/90-12・100/90-12
ブレーキ(前・後):ディスク・ディスク
価格:23万3000円
※スペックおよび価格は1990年当時

※この記事は月刊モトチャンプ2024年7月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】