砂浜では高性能クロカンSUVでも簡単にスタックする

一般的な二輪駆動の乗用車では砂浜を数m進むことさえままならない。SUVだとしても、タイヤ径が大きく車高がやや高いだけで一般乗用車と何ら変わらないクルマも多いため、たとえ4WDであったとしても過信は禁物だ。
知っての通り、砂はわずかに力を加えるだけでサラサラと崩れてしまう。どれほど優れた四輪駆動システムや電子制御機能が搭載された高性能なクロカンSUVであっても、駆動力を受け止める路面そのものが崩れてしまえば意味をなさない。
ただし砂の状態や砂浜の地盤によっては、ある程度の距離を進めてしまう。ここで過信してしまうと、取り返しのつかない事態を招くことになる。
湿気を含んだ砂は締まっているため路面として機能するが、乾燥した砂は駆動力が逃げてしまうためタイヤが空転するばかりで動けなくなる。干潮直後の湿気を帯びた砂なら難なく走行できても、時間が経つと強い日差しによって砂が乾燥すれば動けなくなってしまい、あえなくスタック状態に陥ってしまう。
その状態でむやみにアクセルを踏み込むと、砂を掻いてタイヤはどんどん埋まっていき、車体下面が砂に接触する状態に陥ってしまうと自力での脱出はほぼ不可能だ。
また、波打ち際は砂が湿って走りやすい反面、波に近づきすぎると砂が崩れて即スタックする恐れもある。とくに干潮時に波打ち際付近でスタックしたまま動けずにいると、満潮時にはクルマが波に飲まれることになりかねない。
車体が海水に浸かると、電気系統のショートを起こすとともに深刻な金属腐食を引き起こす。淡水ならまだしも、海水に浸かったクルマの完全修復は難しいため廃車は免れられないだろう。
頼るべきロードサービスも砂浜スタックでは高額に

砂浜という特殊環境下ではロードサービスの救援にも時間がかかる。人気観光地では渋滞で到着が遅れる場合があるほか、救出作業自体にも時間がかかるため時間帯によっては救援を待っている間に満潮を迎えてクルマが海水に浸かる恐れもある。
そのうえ、砂浜からのスタック救出は、雪道などでのけん引や簡易脱出作業とは異なり、特殊車両やウインチなどの使用に加え、複数の作業員が同行する場合が多いため救援費用も数万円ほど上乗せされる場合が多い。
なお、自動車保険のロードサービスは一部の保険会社を除き、砂浜や雪道でのスタックは実費請求となる点には注意したい。
JAFの場合は会員なら砂浜でのスタック救出でも原則無料だ。ただし、非会員の場合は通常の基本料金に加えて数千円から数万円程度の特殊作業加算費用や作業延長料金が発生する。
砂浜でスタックすると、たとえ廃車は免れたとしても、高い救出費用が請求されることは覚悟しておきたい。
そもそもクルマは砂の上を走るのが苦手な乗り物

近年は安全や環境保護を名目に、クルマで砂浜に降りられない場所が増えている。例えば、ウミガメの産卵地として有名な千葉県の九十九里浜は、一部を除いて砂浜への車両乗り入れが条例で禁止されており、これに違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑だ。
禁止表示を無視した侵入は厳罰の対象であり、悪質な場合は前科がつく場合もある。
砂浜はもっとも身近にあるオフロード環境だ。とりわけ高性能なクロカンSUVに乗っているなら、砂浜に降りてみたくなるのは誰もが持つ心情と言えるだろう。
その様子をSNSにアップロードすれば注目を浴びる。仮にスタックしたとしても注目を集める。しかし、興味本位や承認欲求から砂浜へクルマを乗り入れさせる行為は廃車のリスクを伴う。
確かに高性能なクロカンSUVはスタックしにくいが、決してスタックしないわけではない。
砂浜を走行するには、4WDとオフロードタイヤ、デフロックの3点を備えていることが最低条件だ。これでもスタックするリスクは拭い去りきれないため、スコップと脱出ラダーに加え、スタック時に周囲の砂を濡らすための水汲みバケツ等も必携となる。
また、進入が許可されている砂浜であっても、スタックのリスクはつきまとう。車種を問わず、クルマは砂の上を走るのが非常に苦手な乗り物であることを心得ておきたい。