日本の新車の3台に1台以上が軽! BYDが狙った巨大市場

2025年の日本の新車販売台数は約456万台。そのうち3分の1強にあたる166万台が、実は軽自動車だった。昨年トップセールスを記録したのはホンダN-BOXで、3位にスズキ・スペーシア、5位にダイハツ・タント、6位にダイハツ・ムーヴと、上位に軽自動車がずらりと並ぶ。その間にトヨタ・ヤリス、カローラが2位、4位に割って入る。台数で見ても、トヨタの2モデルが合計30.5万台なのに対して、上位の軽自動車4モデルは合計61.4万台と、ダブルスコアの状態だ。
| モデル名 | 2025年販売台数 | |
| 1位 | ホンダN-BOX | 20万1354台 |
| 2位 | トヨタ・ヤリス | 16万6533台 |
| 3位 | スズキ・スペーシア | 16万5589台 |
| 4位 | トヨタ・カローラ | 13万8829台 |
| 5位 | ダイハツ・タント | 112万4619台 |
| 6位 | ダイハツ・ムーヴ | 12万2349台 |
しかも、上位4モデルのうち、全高1655mmのムーヴを除けば、3モデルは1750~1800mmというスーパートール系。全長、全幅は軽自動車のフル規格としながら、全高をたっぷりとったスーパートール系はスペース効率に優れ、お値打ち感もある。軽自動車モデルを新規に投入するなら、スーパートール系が手堅い――と考えるのは至極当然のことだ。
日本の十八番であったこの軽自動車市場に、世界のEVトップメーカーとなった中国のBYDが参入。7月28日、「RACCO」がデビューした。
N-BOXと全長・全幅、ホイールベースも同じ!日本専用「X-PACK」も開発

昨年のジャパン・モビリティショー2025で見た記憶に間違いがなければ、外観に大きな相違はない。パワーユニットは自主規制枠となる47kW・160Nmのスペックを持ち、リン酸鉄リチウムイオンのブレードバッテリーを組み合わせ、フロントを駆動するFFモデルとなる。
22.4kWhの駆動用バッテリーを採用し、一充電走行距離210kmを可能とする「200」と、35.84kWhで320km走行可能な「300」の2モデルを設定。300には「Plus」のほか、合成皮革の6ウェイ電動パワーシートを採用する「Premium」が用意されている。

| グレード | 電池容量 | 航続距離 | 車両価格 |
| RACCO 200 | 22.4kWh | 210km | 214万5000円 |
| RACCO300 Plus | 35.84kWh | 320km | 239万8000円 |
| RACCO300 Premium | 35.84kWh | 320km | 249万7000円 |
床下には駆動用バッテリーを配置。電子制御ユニット、DC-DCコンバーターと車載充電器を組み合わせたDC/OBC統合ユニット、高電圧配電ユニット、バッテリーコントローラー、車両コントロールユニットなどをバッテリー内に一体化し、統合制御を行う「X-PACK」をRACCO専用技術として開発、搭載した。


また、新設計のシャシーは、BYDの最新モデルに採用されているEV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」をベースに、X-PACKを車体構造の一部として組み込むセル・トゥ・ボディ「CTB」を採用。シャシーの70%に高強度鋼板を用い、レーザー溶接を組み合わせることによって高剛性ボディを実現した。これが左右スライドドアの採用にも大きく貢献している。
車両寸法は全長×全幅×全高3395×1475×1800mm。軽自動車規格をほぼいっぱいに使ったスーパートールボディで、ホイールベースは2520mm。奇しくもN-BOXと同じ数値だ。ショーモデルを見た際に妙な親近感を覚えたのは、見慣れた日本のスーパートール軽のフォルムを重ねたせいかもしれない。
BYD RACCO
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1800mm
ホイールベース:2520mm
ホンダN-BOX
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1790mm
ホイールベース:2520mm
1230kgでも重さを感じない! RACCOの走りは想像以上だった

日本の軽自動車を徹底研究し、すべてにおいて新開発したRACCOの走りは想像を上回った。量感のあるシートに身を預けると、背中から下半身を優しく包み込むようなホールド感があり、高い視線が左右に動くことが少ない。グルグルとたくさん回す必要のあるパワーステアリングにもかかわらず、上体がしっかりと支えられていて、背の高さも気にならない。
アクセルレスポンスは初期こそ穏やかで、滑らかな加速状態をキープしつつ、中速域以降から伸びやかさを見せる。EVならではの滑らかさに加えて、力強さもしっかりと味わえる。ピークパワーは決して高い印象ではないものの、パワーの落ち込みが少ないことで、日産サクラと比較して大人2人分ほど重い1230kgという車重も気にはならなかった。

富士山周辺の登坂路や一般道を走る限りでは、制限速度に短時間で到達することも多く、高速道路での合流や巡航速度のキープのしやすさなど、実用面での不満は少ない。
もっとも気に入ったのが、揺れの少なさだ。ロールの中心が身体の近くにある印象で、頭だけがグラグラしたり、お尻付近でグラッと沈み込んだりすることが少ない。クルマの動きと身体に感じるGに位相のズレがなく、落ち着いてドライブしていられる。
足元の接地感もしっかりとしていて、急なGの抜けや沈み込みの抑制が効いているのだろう。旋回中にパワーをかけていき、一瞬タイヤが鳴くような場面があっても復帰は早く、接地性の良さが窺える。背の高さが決してネガティブに作用しない点は、これまでの日本車よりも好印象だ。
もっとも、騒音、振動に関しては劣る。路面の粗れた部分を走る際には、路面を正確になぞりすぎるためか、細かな振動が伝わってくる。特にフロントまわりから入ってくる床面の微振動は気になる。タイヤの当たりの硬さに加えて、細かな振動がダイレクトに支持部分へ伝達されてしまっている印象だ。
リヤタイヤが段差を乗り越える際にも、路面をしなやかに追従することなく、コツンと次の振動を発生させてしまう。ボディ全体のしっかり感や、大きな入力に対する収まり、ロール抑制などは上手にこなしてくれるものの、負荷の少ない領域では支持部分やタイヤの硬さが伝わりやすいのが惜しい。
最上級でも249.7万円! RACCOは日本の軽市場を揺さぶる“黒船”になるか?

期待以上の安定性や走りのスムーズさを実現した初めての海外製軽自動車は、ひと言でいえば、軽サイズ離れしたオーバークオリティな最新EVモデルとして評価できる。BYDが作った軽自動車は、決して単なるエントリーモデルという位置付けではなく、BYDファミリーのひとつのモデルとして存在価値がある。上から下まで、サイズにかかわることなくクオリティを保っている点は評価したい。











これで車両価格が上位モデルでも250万円を切っているのは、超バーゲンプライスだ。しかも国のCEV補助金はRACCOが15万円なのに対し、日産サクラは58万円。その差は43万円もある。それだけ大きなハンデを背負いながら、この価格で競争力を持ってデビューした点は見事というほかない。日本車にとっては脅威だが、クルマには罪はない。性能と価格のバランスをしっかりと見極めたい。今後登場する日本車にも期待がかかる。良い刺激だ。まさに黒船来襲である。
BYD RACCO 300 Premium
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1800mm
ホイールベース:2520mm
車両重量:1230kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
フロントモーター
TZ180XSAB型交流同期モーター
定格出力:25kW
最高出力:47kW(64ps)
最大トルク:160Nm
駆動用電池
LFP(リン酸鉄)リチウムイオン電池
総電圧:224V
総電力量:35.84kWh
WLTC交流電力量消費率:124Wh/km
市街地モード97Wh/km
郊外モード110Wh/km
高速道路モード145Wh/km
一充電走行距離320km
車両価格:249万7000円
