三菱自動車が2026年秋、新型『パジェロ』を世界初公開すると正式発表したことで、長らく休止していた『パジェロ』ブランド周辺が、にわかに活気づいてきたようだ。

現時点で公式に発表されているのはフラッグシップSUVとなる新型パジェロのみだが、その発表内容を読み解くと、もうひとつ気になる存在が浮かび上がってくる。それが、かつて販売されていたコンパクトSUV『パジェロio(イオ)』の復活である。

一見すると意外な存在かもしれない。しかし現在のSUV市場や三菱の商品ラインアップを見渡すと、「今だからこそ復活する価値があるモデル」と考えることもできるのだ。
1998年に登場したパジェロioは、パジェロジュニアの流れを受け継ぐコンパクトSUVとして誕生した。
ボディは全長4m前後の5ナンバーサイズに収まり、街中でも扱いやすいサイズでありながら、本格的な悪路走破性を追求したことが最大の特徴だった。モノコックボディにビルトインラダーフレームを組み合わせた構造を採用し、上級グレードにはスーパーセレクト4WDも設定。本格SUV顔負けのメカニズムを備えた「小さなパジェロ」として独自の存在感を放っていた。
また、日本のみならず、ブラジルや中国でも製造販売され、欧州ではフェラーリなどを手がけるピニンファリーナがデザインおよび生産を担当した欧州むけモデル『パジェロピニン』として販売されたワールドワイドなモデルであった。
しかしながら当時はミニバン人気が急速に高まり始めた時代でもあり、SUVが全般的に不人気となり始めただけに、正直、販売面で大ヒットとは言えなかった。
だが現在は事情が違う。コンパクトで本格的なSUVへの需要は世界的に高まっている。そう考えると、パジェロioは20年以上前に現在の市場を先取りしていた一台だったと言えるだろう。
そして今回、新型パジェロの復活発表で興味深かったのが、三菱がブランドの歴史を紹介する中で、初代パジェロから現行モデルだけでなく、パジェロミニ、パジェロジュニア、パジェロioといった派生モデルにも触れていたことである。
もちろん、これだけで派生モデルの投入を示唆しているとは言えない。しかし、三菱が『パジェロ』という一車種ではなく、ブランド全体の歴史や価値を改めて打ち出したことは事実だ。そのことから、今後パジェロブランドを活用した新たなモデルが登場するのではないかと期待する声が出てくるのも不思議ではない。
では、もし現代版パジェロioが誕生するとすれば、どのようなモデルになるのだろうか?
現在の三菱SUVラインアップを見ると、エクスフォース(編注:日本未発売)、エクリプスクロスやアウトランダー、などクロスオーバーSUVは充実している。一方で、扱いやすいボディサイズと本格的な悪路走破性を両立したSUVは不在だ。
市場ではスズキ『ジムニー』シリーズの人気が続くほか、トヨタ『ランドクルーザー250』など、本格オフローダーを思わせるデザインと高い走破性を備えたSUVへの注目度は年々高まっている。そうした市場環境を考えれば、現代版パジェロioが入り込む余地は十分にあるだろう。
予想されるのは、全長4.2〜4.4m級の扱いやすいボディに、最新のダイナミックシールドデザインを採用した力強いスタイリングである。パワートレインについても、入手した情報によると、三菱・ルノー・日産アライアンスが開発を進める次世代電動パワートレインを活用し、HEVやPHEVを展開する可能性も考えられる。悪路走破性と環境性能を高いレベルで両立したモデルとなれば、パジェロブランドの新たな柱となる可能性も十分ありそうだ。
今回制作された予想CGも、そうした方向性をイメージして仕上げられている。往年のパジェロioが持っていたスクエアなシルエットを継承しながら、新型パジェロにも通じる最新のダイナミックシールドを融合。薄型LEDヘッドライトと縦型LEDシグネチャーランプによって力強い表情を与える一方、ブラックルーフとの2トーンカラーや大径ホイールを組み合わせることで、都会的な上質感も演出した。本格SUVらしいタフさと日常での使いやすさを両立した、新時代の「小さなパジェロ」を目指している。
もっとも、現時点で三菱からパジェロio復活についての公式発表はなく、車名がそのまま復活するかどうかも分かっていない。新型パジェロの発表だけで派生モデルまで断定することはできない。
それでも、新型パジェロの復活によってブランドが再び動き始めた今、その世界観を広げるモデルを期待したくなるのは自然な流れである。パジェロは一台の車名ではなく、多くの派生モデルを生み出してきたブランドでもあるのだ。
三菱は現在、ブランド価値を高める商品戦略を進めており、その流れの中でフラッグシップだけでなく、より幅広いユーザーに向けた「小さな本格SUV」が加われば、ブランドの魅力はさらに広がるはずだ。現時点で復活を示す公式情報はないものの、『パジェロio』が再び脚光を浴びる日は案外遠くないのかもしれない。


