ヤマハ・アエロックス:48万1800円

155ccモデルでは第三世代となる、最新型アエロックスのデザインコンセプトは”Ultimate Super Sport Scooter”で、直接的なモチーフはYZF-R9。カラーリングは、マットグリーニッシュグレーとシルバーの2種を設定。

いろいろな意味でサプライズ

2026年3月に開催された大阪/東京モーターサイクルショーで最も注目を集めたモデルと言ったら、世間的には日本初公開となったホンダCB400SFとCBR400Rフォアだろう。

ただし個人的な最大のサプライズは、ヤマハのブースに突如として展示され、日本での正規販売が発表された155ccスクーター、アエロックスだった。

と言うのも、僕は以前から並行輸入で日本に入ったアエロックスをしょっちゅう見かけていて、このモデルに興味津々だったのである。

もっとも近年のヤマハは軽二輪スクーターとして、NMAX155やXフォース、XMAXなどを日本で販売しているので(ただし2026年8月に、ヤマハは年内でXフォースの販売が終了することを発表)、アエロックスの導入は難しそうな気がしていた。

だからこそ僕にとっては、このモデルの日本への導入はサプライズだったし、今回の試乗ではさらに大きなサプライズを実感することとなった。

先に結論を言ってしまうと、アエロックスはこれまでの日本で販売された150~180cc前後のスクーターとは方向性が異なるスポーティさを備えていて、ついに国内販売を決意してくれたヤマハに、今の僕は感謝の意を述べたい気分なのである。

最新型のモチーフはYZF-R9

本題の前に大前提の話をしておくと、アエロックスシリーズは、1997~2010年代前半に欧州で販売された2スト50/100cc・4スト50ccモデルと、2016年から東南アジアで発売が始まった125/155ccモデルの2種に大別できる。

そして東南アジア向けの155ccモデルは、2025年型で大幅刷新を受けたアエロックス・アルファに進化し、電子制御式のYECVTやトラクションコントロール、リザーバータンク付きリアショック、4.2インチTFTフルカラーディスプレイ、スマートキーなどを装備する、上級仕様のターボを設定。

2026年8月から発売が始まった日本仕様のアエロックスは、基本的には東南アジア仕様のターボと同様と考えてよさそうだ。

2024年から発売が始まったYZF-R9は、ワールドスーパースポーツ選手権を念頭に置いて生まれた並列3気筒スーパースポーツ。

そんなアエロックスと対面して、僕が最初に興味を惹かれたのはスーパースポーツ然としたデザインである。

と言ってもこのシリーズは、初代から一貫してスーパースポーツのYZFシリーズに通じるデザインを採用してきたのだけれど、YZF-R9をモチーフとする最新型は、もはやスクーターの範疇には収まっていないような? 

中でも僕が目を見張ったのは、軽快さとシャープさを徹底的に追及したテール周辺の造形だが(アシストグリップはボディと一体化)、アグレッシブなフロントマスクに惹かれる人も少なくないだろう。

いずれにしても、アエロックスのデザインはインパクトが抜群で、スクーターの新境地を開拓したと言っても過言ではないと思う。

エンジンも車体も驚くほどスポーティ

可変バルブ機構のVVAを備える水冷ブルーコアエンジンは、基本的には既存のNMAX155やXフォースなどと共通。最高出力は15ps/8000rpmで、最大トルクは1.4kgf-m/6500rpm。

ただしルックスに感心しつつも、実は当初の僕は乗り味にあまり大きな期待はしていなかった。タイヤは同社のスクーターでは珍しい前後14インチを採用しているけれど、フレームはNMAXとよく似たアンダーボーンタイプだし、水冷単気筒のブルーコアエンジンのスペックは既存の155ccモデルと同様だし、YECVTの美点に関しては、僕はすでに2025年型NMAX155で把握している。

ところが実際のアエロックスは、ルックスと同様にスクーターの新境地を開拓したと言いたくなる、スポーティなライディングフィールを実現していたのだ。

僕がそう感じた一番の原因は、YECVTを含めた駆動系の設定である。

前述したように、エンジンは既存の155ccモデルと同様で、2種のライディングモードが存在し、3段階の疑似的なシフトダウンが可能なYECVTの基本構成に変更はないものの、アエロックスのパワーユニットは右手の操作に対する反応がとてつもなく忠実で(Sモードなら俊敏)、7000rpm以上の吹け上がりは往年の2ストロークを思わせるほどシャープで鋭い。

一般的なCVTが車速や負荷に応じた遠心力で変速比が決まるのに対して、YECVTはライダーの操作や走行状況をセンサーで検知し、電子制御で変速比を能動的に調整。

しかもSモードを選択すると、状況に応じて自動で行われる疑似的なシフトダウンに積極性が生まれ、ここぞいう場面では高回転域を維持してくれるから、コーナーからの立ち上がりでは“我が意を得たり‼”と大声で叫びたくなるほど、気持ちいい加速が味わえるのである。

さらに言うなら、アエロックスはシャシーも素晴らしかった。前後14インチタイヤと運動性重視のセッティングが行われた前後ショックの効果なのだろう、コーナリングの安定感は特筆モノで、進入でも立ち上がりでも相当な無理、と言うか融通が利く。

そのおかげでこのモデルを走らせていると、自分の中に自信が生まれてくるので、コーナーを攻めることが楽しくて仕方がないのだ。

誰もが大絶賛するわけではない?

そんなわけで、アエロックスのルックスと乗り味に大いに感心した僕ではあるけれど、だからと言ってすべてのライダーがこのモデルを絶賛するとは思わない。

5.5ℓのガソリンタンク容量(WMTCモードの燃費は41.1km/ℓで、計算上の航続可能距離は226.05km)や790mmのシート高、フットスペースの狭さ、積載性を考慮した純正アクセサリーパーツが存在しないことに不満を抱く人はいるだろうだし、混雑した市街地では14インチタイヤをネックに感じる場面があるのかもしれない。

でもヤマハが公言している通り、このモデルは“スーパースポーツバイクに最も近いスクーター”なのだ。そしてその資質に共感を覚えた僕の中には、実用性に異論を述べようという意識は芽生えてこなかったのである。

前後14インチというタイヤサイズは、ヤマハにとっては2000年代後半に生産が終了したタウンメイト90以来かもしれない。なおアエロックスの標準タイヤは、スポーツ性重視のキャラクターが伺えるIRC SCT-005。

ディティール解説

フロントマスクは完全にスーパースポーツ。コンパクトなLEDプロジェクターヘッドランプの上部には、猛禽類を思わせるシャープなデザインのLEDポジションランプを配置。
コクピットは高級にして戦闘的な雰囲気。左側のグローブボックス内にはUSB TYPE-C電源が備わる。右側に隠れているイグニッションスイッチはスマート式。
4.2インチTFTフルカラーディスプレイは、スマホとの連携機能を装備。画面パターンは3種類で、トラックモードではラップタイムを大きく表示。
左右スイッチボックスは2025年型以降のNMAX155と共通。左にはライディングモードの切り替えとシフトダウン用のボタン、右にはアイドリングストップ用のオン/オフレバーが備わる。
ガソリンタンクキャップはセンタートンネルに配置。なお高めのセンタートンネルは、車体のホールド感に大いに貢献。
スーパースポーツのようなセパレートタイプを意識して、シートは前後で異なるレザーを採用。接合部には赤いステッチがあしらわれる。
トランクスペース容量は24.5ℓ。アライのラパイドNEOはギリギリで収まったものの、上部に大きなエアロパーツを備えるフルフェイスヘルメットの収納は厳しいかもしれない。実際にアライのジェットヘルメット、VZラムはギリギリで、ヘルメットの位置を調整してなんとか収納できた。
フロントマスクと同じく、テールカウルのデザインも完全にスーパースポーツ。左右下部にはアシストグリップを設置。
パワーユニットと駆動系の外観は、2025年型以降のNMAX155と同様。とはいえ既存のブルーコアエンジンと比較すると、レスポンスや吹け上がりのフィーリングは別物である。
ブレーキは前後ともφ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーで、ABSはフロントのみの1チャンネル式。フロントフォークのインナーチューブ径は30mm。
Y字3本スポークのキャストホイールは専用設計。リヤショックはリザーバータンク付きだが、残念ながら調整機構はナシ。

主要諸元

型式:8BK-SG97J
全長×全幅×全高:1980mm×765mm×1170mm
軸間距離:1350mm
最低地上高:145mm
シート高:790mm
装備重量:132kg
キャスター/トレール:26°30′/102mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:155cc
ボア×ストローク:58×58.7mm
圧縮比:11.6
最高出力:11kW〈15PS〉/8000rpm
最大トルク:14N・m〈1.4 kg-f・m〉/6500rpm
燃料供給装置: フューエルインジェクション
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
クラッチ形式:乾式自動遠心シュータイプ
変速機形式:Vベルト無段変速・電子制御式
フレーム形式:アンダーボーン
ブレーキ形式前:油圧式ディスク
ブレーキ形式後:油圧式ディスク
タイヤサイズ前:110/80-14
タイヤサイズ後:140/70-14
燃料タンク容量:5.5ℓ
乗車定員 2名
燃料消費率WMTCモード値:41.1km/L(クラス2・1名乗車時)


【モトチャンプ】