マツダのコンパクトSUV『CX-30』が、異例ともいえるロングライフモデルになりそうだ。現行型は2019年に登場したが、次期型の投入は2030年度となる見通し。タイミング次第では、フルモデルチェンジまで約12年という長いモデルサイクルを迎えることになるようだ。

マツダ CX-30

CX-30は、『CX-3』と『CX-5』の間を埋めるクロスオーバーSUVとして2019年に登場した。商品改良を重ねながら販売を続けているものの、基本的なエクステリアやインテリアはデビュー当初から大きく変わっていない。

それでも販売力は衰えていない。2025年の世界販売台数は20万8869台。33万4578台を販売したCX-5に次ぐ、マツダ第2位の販売規模を持つモデルである。

マツダ CX-30

つまり、「売れないからモデルチェンジを先送りする」というわけではない。

次期CX-30について、マツダの毛籠勝弘社長は中国新聞のインタビューで、投入時期が2030年度になることを明らかにしている。2030年度は2031年3月までを意味するため、2019年の現行型登場から10年以上、投入時期によっては約12年間も同一世代を販売する計算になる。

では、なぜ売れ筋SUVの全面刷新をそこまで待つのか。

その背景にあるのが、マツダが進める開発・生産コストの抜本的な見直しだ。

原材料価格の上昇や世界経済の変化など、自動車メーカーを取り巻く事業環境は厳しさを増している。マツダは2025年度から2027年度にかけて、変動費1000億円、固定費1000億円の計2000億円規模でコスト構造を改善する方針を打ち出している。

新型車についても、従来以上に開発効率と生産効率を重視することになる。

一方、CX-30の世代交代を急がないことには、もうひとつ大きなメリットがある。それが次世代パワートレインの投入時期だ。

マツダは現在、次世代ガソリンエンジン“SKYACTIV-Z”を開発中である。さらに2027年には、SKYACTIV-Zと組み合わせたマツダ独自開発のハイブリッドシステムをCX-5へ導入する計画だ。

次期CX-30が登場する2030年度には、これらの新技術が市販車で数年間の実績を積んでいることになる。次期型にもSKYACTIV-Zと新世代ハイブリッドを展開するには、むしろ好都合なタイミングとなる。

プラットフォームについては具体的な情報はまだ少ない。現行型と同じく前輪駆動を基本とし、次期『MAZDA3』と基本設計を共有する可能性もあるが、この点についてマツダから正式な説明はない。

興味深いのは、CX-30よりコンパクトなCX-3との世代交代の順番である。

マツダはCX-3を次世代モデルへ移行し、タイで生産する計画を明らかにしている。つまりコンパクトSUVではCX-3を先に刷新し、その後にCX-30が続くことになる。

すべてのSUVを短期間で一斉にモデルチェンジするのではなく、車種ごとに開発時期や生産体制、新技術の導入タイミングを最適化する。CX-30の全面刷新が2030年度まで延びる背景には、マツダの商品戦略そのものの変化が見えてくる。

もちろん、それまで現行CX-30を放置するわけにはいかない。内外装のアップデート、安全・快適装備の強化、パワートレインの見直しなど、次期型登場までに複数回の商品改良が実施される可能性もある。

現在の乗用車で約12年というモデルサイクルは異例だ。しかしCX-30の場合、単なるモデルチェンジの先送りとは少し事情が違う。

CX-5に次ぐ世界販売を支えるモデルだからこそ、現行型の商品力を維持しながら開発期間を確保し、次世代エンジンと独自ハイブリッドが熟成したタイミングで一気に刷新する。2030年度に姿を現す次期CX-30は、マツダの新世代技術を凝縮した重要なモデルとなりそうだ。