V100の後継を狙った! しかし立ちはだかった“ブイヒャクの壁”
今に続くスズキの名車「アドレス」の名を確固たるものにしたのはアドレスV100だろう。その名を受け継ぎ、ほぼ新設計の機体として登場したのがアドレス110(CF11A)だ。
フレームはメインチューブから2本のパイプを追加して剛性を高め、その形状を盛り上がったセンタートンネルスタイルで体現。このスタイルは他社よりも比較的早い採用で、今や当たり前となったPCXやNMAXの先駆けとも言える形状だ。

搭載されるエンジンは空冷2スト113cc。同時期のライバル勢よりも約14cc多い排気量は大きなアドバンテージを得た。さらに大柄な車体に見合うシート下スペースも見逃せない。当時20L前後が主だった中、アドレス110は27Lを確保し、フルフェイスに加えて小物類もしっかり収納できたのだ。
しかし、機動力も利便性も抜きんでており、次世代の二種スクとして期待されたが、売れ行きは鈍かった。先代アドレスV100と比較して大柄なうえ約10kgほど重く、車体価格も4万円高。さらに先述したセンタートンネルによる乗降のしにくさ、ヘッドライト位置を下げたために後付けの前カゴが似合わないなど、先代モデルのV100とは対照的。一部のスクーターフリークには刺さったものの、日常使いを主とするユーザーからは敬遠され、結局は二車が併売される形となった。

画像はオーナー車
113ccの余裕が効く! 低中速からグイッと押し出す
アドレス110(CF11A)は販売台数において先代V100に水を差されたが、性能面では確実に進化していた。
113ccの2ストエンジンは出足こそマイルドながら変速タイミングも絶妙で、低回転域からトルクフルに車体を押し出していく。中速域から高速までストレスなく伸びていくのは、排気量差の恩恵もあるだろう。
最高出力は10ps/6000rpm、最大トルクは1.3kgm/5500rpm。低めの回転域からしっかり力を出す設定だ。

シートやステップが長めだから身長176cmのTDF津田氏(車両オーナー)でもゆったり構えられるポジションだ。車体中央部に燃料タンクが配置されるため車重バランスが良く、前後12インチホイールを採用し、最低地上高も高めなのでバンク角も十分に稼げる。ハンドルを使って小回りも効かせやすく入り組んだ街中はスイスイ、峠道では重めの車体をダイナミックに倒し込んで走れちゃう!
駆動系もプーリーやウエイトローラーの設定を少し変えるだけで、スタートダッシュからトップスピードまで大きく変化させられるのはチューニングのしがいがある。
なお、キャブレターにはヒーター及びオートチョークを採用。このパワーユニットは同年発売のストリートマジック110にも一部仕様を変更して搭載されている。
12インチ&27L収納! コンフォートとスポーツの良いとこ取り
大柄な車体は大径ホイールによるところも大きく、原付スクーターでは10インチが常だった時代に12インチ仕様はチャレンジングな試みだった。
そのいっぽうでタイヤは細身とし、ハンドリングも素直。曲道はヒラヒラ、直線はどっしりと構えて安定させられるのが頼もしい。制動力も街乗りなら必要十分と感じた。

90年代当時としてはビッグサイズで、センタートンネルは足を上げて跨る感じ。またアドレス110は年式によって前期、中期、後期に分けられる(撮影車はシルバーが中期、ブルーが後期)。見た目ではホイールの素材、マフラー形状、ライト内のリフレクター、リヤウインカーの色、バイザーの大きさ、駆動系カバーの有無などが異なる。

100km/hスケールの指針式速度計と燃料計のコンビ。上位置には各インジケーターが備わる。



約27L容量のシート下トランクにはスズキお馴染みのU字ロックホルダーを採用。縦長でヘルメット+αもしっかり収まり、後方にはメットホルダーも用意。もちろんフロントラックも備え、キーシリンダー側(右側)の突起はコンビニフックとなっている。また大型のキャリアは根元が湾曲していてグラブバーも兼用。

燃料コックはセンタートンネル部分にセット。シートを開けなくても給油が可能だ。

フロントブレーキはφ180mmディスクとトキコ製キャリパーの組み合わせ。クラス最大級のφ30mmを採用する油圧式フロントフォーク。


可倒式のタンデムステップを採用し、格納時は張り出しもなくスマートな見た目に。
改良を重ねながら2004年まで継続! 静かに生き残った実力派
そんなアドレス110はデビュー時にショートとロングバイザー仕様があったが、1年後にはショート形状のみとなり、アルミホイール仕様が追加されて後にこれがスタンダードとなる。
2000年にはキャストホイール仕様を設定。ヘッドランプはマルチリフレクタータイプとなり、リヤターンシグナルはクリアタイプへ。シートを黒/グレーのツートーンに変更し、リヤキャリアの剛性も高められた。

画像は中期型の駆動系周り。後期(03年式)からは駆動ケースに樹脂カバーが追加されて静粛性が向上している。

2015年には「アドレス110」の名前が復活。インドネシア生産のグローバルモデルで、燃費性にも優れる4ストエンジンや14インチのハイホイールを採用して機動力に優れる一台だ。
当時を振り返るとスズキの二種スクーターは、アドレス二車種に加えてヴェクスター125、アヴェニス125、2ストのストリートマジック110とバラエティに富み、様々なユーザーを支えてくれた。
アドレス110だけに焦点を絞ればヒットとはいかなかったけれど、113ccの余裕、前後12インチ、27Lの収納、そしてチューニングの懐の深さまで備えていた。「アドレスを超えるのは、アドレス」。アドレスV100とは違う方向から次の時代を狙っていた、静かに闘志を燃やすジェントルマンだったのだ。
SUZUKI ADDRESS110 主要諸元
型式:CF11A
全長×全幅×全高:1855×630×1120mm
ホイールベース:1265mm
最低地上高:125mm
シート高:735mm
乾燥重量:90kg
総排気量:113cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒クランクケースリードバルブ
内径×行程:52.5×52.2mm
圧縮比:6.8:1
最高出力:10ps/6000rpm
最大トルク:1.3kgm/5500rpm
始動方法:セル・キック併用
燃料タンク容量:6L
タイヤサイズ:前90/90-12/後100/80-12
ブレーキ:前ディスク/後ドラム
車体価格:23万9000円
※スペック・価格は1998年メーターバイザー仕様。
※この記事は月刊モトチャンプ2026年1月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】