バイク通勤の時代にハマった“原チャリじゃない原チャリ感”

巷のバイク好きを振り向かせた二種スク(原付二種スクーター)。それがスズキ・アドレスV100とヤマハ・グランドアクシス100である。PCXやシグナスXなど、今でこそ125ccスクーターは通勤・通学の定番だが、当時の空気感はもう少しワイルドだった。バイク通勤が今より多く、バイク便も街を走り回っていた時代。50ccより速く、二段階右折も不要で、それでいて原付並みの車格で扱える二種スクは、まさに都会の移動にピッタリだったのだ。

大きなバイクほど構えずに乗れて、50ccよりも余裕がある。しかも2ストなら加速も元気。ラッシュアワーの流れに乗りやすく、狭い道でも扱いやすい。そんな“原付じゃない原付感”が、多くのライダーに刺さった。今なら少し物騒に聞こえるかもしれないが、当時のストリートではまさに“すり抜け番長”的な存在感を放っていたのである。

アドレスV100は街を駆ける元祖通勤快速だった

アドレスV100のキモは、ごくごくシンプル。「50cc並みのコンパクトボディに、パワフルな2ストエンジン」という分かりやすさである。エイティーズに青春を謳歌したヤングアダルト層にもドンピシャで刺さり、通勤快速として大人気に。バイク便の普及も追い風となり、都市部ではアドレスV100を見ない日はない、と言っても大げさではないほど街にあふれていた。

ラッシュアワーを軽快に駆け抜けるスーパーコミューターとして、「V100こそ我らの味方!」とばかりに支持を集めたのだ。もちろん20万円を切るリーズナブルな価格設定も大きな魅力。小さく、速く、安い。実用車でありながら、どこかヤンチャで頼もしい。そんなスズキらしさを全身で貫いた一台だった。ビバ、スズキ!

SPECIFICATIONS
サイズ:1745×610×1015mm シート高:718mm 重量:83kg(乾燥) エンジン:空冷2スト99cc 最高出力:9.0ps/6000rpm 最大トルク:1.1kgm/5500rpm タイヤサイズ(前・後):3.50-10・3.50-10 車両価格:19万9000円 ※スペックは1991年モデル

シンプルなアナログ速度計と燃料計のコンビネーションだが見やすさはバツグンだった。スピード表記は100km/hまで刻まれている。燃料タンク容量は4.8Lとたっぷりで、給油の回数を減らしたいバイク便ライダーにとってうれしいポイント

フルフェイスヘルメットが格納できるシート下スペース。コンパクトな車体サイズながらきちんと日常での利便性が考慮されている。

フロントにはディスクブレーキを採用。一般的なテレスコピックフォークではなくボトムリンク式を採用することで、ブレーキ時の姿勢変化も安定。この乗り味が通勤&バイク便ライダーにドンピシャにハマった!?

グランドアクシス100はチューニングで一気に化けた

いっぽうのグランドアクシス100、通称GアクのデビューはアドレスV100登場から7年後。こちらも比較的アダルトでフレンドリーなコンセプトを持つ二種スクだったが、実際に熱い眼差しを送ったのはチューニング好きのマニアたちだった。

理由は、台湾などでも併売されていたことによるパーツの豊富さ。さらに搭載エンジンがBW’S系と共通だったこともあり、「BW’Sのパーツが使えるぞ……ウフフ」と、ベース車としての可能性にワナワナと胸を打ち震わせたのである。吸排気や駆動系を詰めていけば、一気に化ける。そんな素材としての面白さがGアクにはあった。

前後12インチホイールも大きな特徴で、ハイグリップタイヤの装着にも向き、ラフな路面でも安定感を失いにくかった。50ccスクーターの延長線上にあったアドレスV100に対して、グランドアクシス100はカスタムや走りの遊びまで受け止める懐の深さがあったと言えるだろう。

「これほど常に全開で走らせた愛車は、後にも先にもコイツだけだったな」と振り返るV100オーナーやGアクファンは少なくないはずだ。通勤路を全力で走り、休日には仲間とパーツ談義で盛り上がる。そんな時代の空気にぴたりとハマり、ストリートにも通勤路にもカスタムシーンにも広がっていった2スト二種スクたち。

今となっては、状態のいい個体を見つけるのも簡単ではないが、人気モデルだったため社外製パーツで補完できる環境がある。かつてのフルスロットル青春を取り戻すなら、まさに今がラストチャンスかもしれない。

SPECIFICATIONS
サイズ:1850×680×1085mm シート高:745mm 重量:95kg エンジン:空冷2スト101cc 最高出力:10.0ps/7000rpm 最大トルク:1.1kgm/6000rpm タイヤサイズ(前・後):110/70-12・120/70-12 車両価格:20万9000円 ※スペックは1998年モデル

シンプルだが機能は十分な楕円形アナログメーター。グランドアクシスは全体的に丸みのあるラウンドデザインが貫かれている。

20ℓを確保するシート下トランクだが、アドレスV100のような内張りはない。ガソリンの給油口も付近にレイアウトされている。

いかにも実用性の高そうな大型リヤキャリアを標準装備。「エンジンや駆動系はフルチューン」でもトップケースを乗せて見た目はノーマル風。そんなカムフラージュマシンもGアクは多かった印象。

※この記事は月刊モトチャンプ2025年6月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】