チャオ! イタリア生まれのVIAが日本へやってきた

真横から見ると16インチホイールの大きさがよくわかる。一般的な小径ホイールのスクーターとは違い、細身で腰高なモペットに近いプロポーションだ

HONDA VIA|1997年発売

VIA(ビア)最大の特徴は、まずその“生まれ”にある。

生産していたのは、イタリアの現地法人「ホンダ・イタリア・インダストリアーレ社」。アテッサ工場で造られた車両を日本へ輸入し、1997年7月18日から販売したモデルだ。ホンダは年間3000台の輸入を計画した。

さらにユニークなのが、日本に来る前の経歴。VIAは1997年2月から、イタリアをはじめベルギー、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガル、スイス、オランダなど欧州市場で「Honda SKY」として展開されていた。

つまり、日本向けに“欧州風”へ仕立てたモデルではない。もともとヨーロッパで走っていたスクーターを、そのまま日本へ持ってきたわけだ。

だから見た目にも、どこか“日本の50ccじゃない感”がある。

丸型ヘッドライトにスリムなレッグシールド、前後16インチの大径ホイール。深みのあるコスタブルーの車体に、シートとホイールへサンダーオレンジを組み合わせるという配色もかなり大胆だ。このカラーリングは、ヨーロッパらしいイメージを強調していた。

走破性の高い16インチ車、狙ったのは“モペット+スクーター”

また大径ホイールは、単なるデザインではない。

VIAは、石畳の多いヨーロッパで主流だったモペットの走破性と、スクーターの使いやすさを組み合わせることを狙ったモデル。前後に軽量なアルミ製キャストホイールを採用し、タイヤはピレリまたはミシュラン製。フロントはテレスコピック式サスペンションに油圧式ディスクブレーキを組み合わせるなど、足周りも50ccスクーターとしてはなかなか凝っている。

エンジンは、49cc空冷2ストローク単気筒。最高出力は4.0ps/6750rpm、最大トルクは0.44kgm/6000rpmで、数値だけ見れば当時の7ps級スポーツスクーターにはおよばない。

でもVIAは、そもそもそこで勝負していない。

低・中回転域で扱いやすい出力特性とVマチックを組み合わせ、毎日気軽に使えることを重視。そのうえ大径ホイールと独特の車体構成で、いつもの50ccスクーターとは違う乗り味を狙ったモデルだった。

【SPECIFICATIONS】

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:4.0ps/6750rpm
最大トルク:0.44kgm/6000rpm
全長×全幅×全高:1860×665×1065mm
重量:75kg
タイヤ:21/2-16・23/4-16
発売当時価格:20万8950円(税込)

海外生産車がまだ珍しかった時代。VIAは“一代限り”の変化球

「海外生産のホンダ車を、そのまま日本へ持ってくる」というやり方は、VIAが初めてではない。

たとえば1989年には、同じホンダ・イタリア・インダストリアーレ社製のNSR125Fを日本へ限定輸入している。こちらも欧州市場向けに開発されたモデルで、イタリア製のフレームや足周り、灯火類などをふんだんに使った、かなり濃い1台だった。

VIAは、それをもっと身近な50ccスクーターでやってみた存在ともいえる。

今ではグローバルモデルや海外生産車も珍しくないけれど、当時はまだ「日本メーカーのバイクは日本で造る」という感覚が強かった時代。そんななか、イタリアで生産した50ccスクーターをそのまま日本へ持ち込んだVIAは、かなり異色の存在だった。

日本の売れ筋へ寄せるのではなく、欧州で走っている空気感をそのまま持ち込む。だからこそ16インチで、だからこそこのスタイルで、だからこそこの配色なのだ。

そしてVIAは、国内では1997年型のみで終わり、二代目へバトンを渡すことはなかった。イタリア生まれの50ccをそのまま日本へ持ち込んだ、まさに“一代限りの変化球”だった。

※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】