初代のシルエットやプロポーションを、どこまで残し、どう新しくするか。ほぼ1年をかけたデザイン開発の過程
シトロエンは10月28日、2CVコンセプトのデザイン開発で描いたスケッチとドローイングを公開した。
2CVコンセプトは、10月のパリモーターショーで世界初公開したコンセプトカー。初代2CVをそのまま復刻するのではなく、ひと目で2CVとわかる特徴を残しながら現代的なデザインにまとめることを目指し、デザインチームはほぼ1年をかけて検討を重ねたという。公開されたスケッチは、初期のアイデアから最終的なデザインが決まるまでの過程を示すものだ。



デザインディレクターのピエール・ルクレール氏は、このプロジェクトの重みをこう語る。
「新しい2CVのデザインに取り組むことは、どのデザイナーにとっても夢ですが、とても大きな挑戦でもあります。2CVはフランス人がいちばん好きなクルマで、世界でもっとも多くコレクションされているモデルでもあります。観光客にとっては、フランスの道や町、村で見掛けるクルマです。歴史の中に2CVをもつメーカーはほかにありません。だから、失敗するわけにはいかなかったのです」
初期のスケッチでは、シルエットやフロントまわり、全体のプロポーションについてさまざまな案を検討。2CVらしさを決める要素を見極めながら、よりダイナミックで現代的な表情を与えることを狙った。



2CVの原点にならい、張り出したフェンダーを再現。レトロに寄りすぎないよう、リヤのホイールスパッツは見送った
先進デザイン部門の責任者を務めるアントワーヌ・ガイヨ=ドルボン氏は、エクステリアの方向性を次のように説明する。
「2CVコンセプトは、張り出したフェンダーを含めて戦前のデザインを再解釈しつつ、法規にも適合させるようにデザインしました。レトロなスタイルに寄りすぎないように、またお客さまにとっての実用性も考えて、リヤのホイールスパッツは採用していません。フロントは、子ども向けのおもちゃのように見せずに、魅力のあるものにする必要がありました」
張り出したフェンダーは残し、ホイールスパッツは省く。初代の特徴を取捨選択しながら、現代のクルマとして成立させたというわけだ。

フロントまわりでは、ボディから離して置いた丸いヘッドライトと、初期の2CVにならってリブを刻んだボンネットが目を惹く。サイドビューは、ルーフからリヤバンパーまで弧を描いて下りていくラインが初代譲り。ボリュームのあるフェンダーと、すっきりと張りのあるボディサイド、新たにデザインしたスチールホイールの組み合わせで、力強い佇まいに仕上げている。

エクステリアデザイナーのピエール・イカール氏は、ネオレトロのデザインの難しさをこう話す。
「ネオレトロのデザインで難しいのは、すでにあるクルマのラインをシンプルに表現しながら、細部をひとつずつ手直ししていくことです。2CVコンセプトでは、手で開閉するキャンバスルーフのように、デザインに人間味をもたせ、見た人が子どものころのワクワクした気持ちを思い出せるようにしました」

1本スポークのステアリングにベンチシート、取り外せるラジオ。初代の工夫を受け継ぎ、余計なものを省いたインテリア
インテリアも同じ考え方でデザインされた。コクピットには1本スポークのステアリングとシフトノブを配置。キャビンには前後のベンチシート、取り外せるラジオ「Radioën(ラディオエン)」、収納用のバスケットを備え、いずれも初代2CVの、日常の使い勝手を考えた工夫を受け継いでいる。当時の室内を再現するのではなく、余計なものを省いた、居心地の良いキャビンを目指したという。
インテリアデザイナーのアンドレアス・シュトゥンプ氏はこう話す。
「インテリアデザインは、初代2CVのキャビンがもっていた機能性とミニマリズムを指針にしました。2CVコンセプトでは、必要なものに絞り込む考え方に、今のシトロエンがもつ快適性と明るい雰囲気を組み合わせています」



黄色と白のキャビンにタータン柄のシート。ベークライトを思わせるベージュと、籐細工をモチーフにした織り目
キャビンは、広さと明るさ、楽しい雰囲気を重視。明るい黄色と白を基調に、シートにはタータン柄を採用し、温かみのあるファブリックを組み合わせた。各部には、初代にちなんだ「イースターエッグ(隠れた仕掛け)」を数多く仕込んでいる。

カラー&マテリアルデザイナーのマドレーヌ・テルニジアン氏はこう説明する。
「2CVコンセプトの室内には、ゆとりが感じられます。黄色の色づかいと素材が、温かさと明るさをもたらしています。また、『プルーストのマドレーヌ』のように記憶を呼び起こす効果を狙い、2CVのベークライト製の操作部品を思わせるベージュを加えました。素材の織り目は、フランスで親しまれている工芸、籐細工へのオマージュです」
2CVコンセプトのデザインの詳細は、パリモーターショーでの公開時の記事で紹介している。

