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これはトヨタ製ワンオフオペレーションによるチューニングマシンだ! 【GR特集 その1】パーツがスペシャルなら製造現場もスペシャルな86GR 製造現場の「秘密」!

  • 2018/03/28
  • HYPER REV編集部
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86GRラインオフを機に86GR関係者がトヨタ自動車元町工場に会した。

2017年に立ち上がったトヨタ自動車の新しいスポーツブランド「GR」。全国のGRガレージ展開とともに、GRグレードの各車が続々とお目見えしています。そうしたなか、2017年12月より86GRの納車が始まっていますが、その製造現場であるトヨタ自動車元町工業での取材の様子をお伝えします。

 日本全国のGR Garageを含むトヨタディーラに、話題のスポーツカー「86GR」の納車が始まっています。すでに店頭に見に行ったり、試乗予約を入れてその日を心待ちにしている方もたくさんいらっしゃることでしょう。
 GRGarage関係者に聞くと、店頭でシートに座ってステアリングを握った瞬間に購入を決めた方もいらっしゃるとか。86GRへの期待の高さがうかがわれるエピソードです。
 さて、トヨタ86といえばスバルと共同で開発されたクルマであり、製造は今でもスバル群馬工場のラインが使用されていることで知られています。
 一方、86GRは、通常の86とは異なる製造方法が採用されることになっています。スバル群馬工場で組み上げられたベース車両の完成車を「トヨタ自動車元町工場」に運送し、ここからトヨタ自動車の手によって専用パーツを装着されてラインオフされていくというものです。なぜここまでの手間暇とコストをかけてまで、こうした製造方法が採用されたのでしょうか。

 それは、この『トヨタ自動車元町工場』が採用されたことに大きな意味があります。トヨタ自動車元町工場とは、かつてレクサスLFAや、150台限定の86GRMNといった、トヨタのスポーツカーの歴史を彩る伝説的スポーツカーが製造された工場です。そのなかでも特に希少なスポーツグレードは、同工場内の「LFA工房」という特別なラインで製造されてきました。今回、86GRを製造するにあたっては、まさにこの「LFA工房」が採用されたのです。

 2017年12月下旬に86GRのラインオフ式の取材をする機会をいただきましたが、このセレモニーに参加したGazooRacingカンパニーの友山茂樹プレジデントが、86GRの製造現場スタッフの前で、その意義を熱く説明してくれました。
「皆さんの並々ならぬ努力のおかげで、この86GRを世に出すことができました。
Gazoo Racingカンパニーは、レースで培ったノウハウを駆使して世界に通用するスポーツカーを作る。そういうなかで、新しい仕事のやり方、新しいクルマの作り方に果敢に挑戦します。その第1弾となるクルマが、この86GRであり、その挑戦が、ここ元町工場から始まったということです。Gazoo Racingカンパニーはこの後にも、心ときめくスポーツカーを継続的に投入していきたいと考えています。そして、それを作る所は、ここ元町工場にしたいと考えています。みなさん、一緒に、心ときめくクルマを作りましょう! この86GRが、そして、ここ元町工場が出発点となって、トヨタの新しい未来を切り開くものと信じています」。
 開発者や実際にラインで架装作業を行なうメンバー、そしてパーツを供給するパーツメーカー担当者など多くの関係者が、心を一つにした瞬間でした。

「LFA工房には、トヨタの生産現場で働く従業員の中でも特にスキルが高かったり、モータースポーツに対する理解や実際の活動を行っているなど、まさに選りすぐりの従業員が集まったラインです。LFAや86GRMNといったスポーツカーを選んで購入されるお客様は、特に乗り味やバランスを気にされる。そうしたお客様が納得されるクルマを作るためには、本当にボルト一本までしっかりと職人自らが行なう必要があります。もちろん、通常ラインの他クルマもしっかりと作っていますが、それ以上の基準と意識で製造しています。86GRをこのLFA工房でつくるというのもそういう意味です。GR開発部が最初にお届けするGRグレードのクルマである86GRに対し、我々はそういう意気込みで作っているんです」と説明してくれたのは、86GRの開発リーダーであるGR開発部の今井孝範さんです。

 トヨタ元町工場の二之夕(にのゆう)工場長によれば、常日頃から「元町工場でスポーツカーを作らせてください!」と叫び続けてきたそうです。今回、86GRの製造ラインに選ばれ、実際に製造作業を行なうにあたって、ボルト1本気持ちを込めて作業する気持ちを高め、乗車するお客様の気持ちを共有するために、職人の皆さんはスパ西浦サーキットで実際に86GRの試乗を行なったそうです。
 そうした製造現場のこだわり同様、86GR開発陣のこだわりも相当なものでした。
 2017年7月に86GRの仕様が仮決定し、元町工場で製造することを決定したそうですが、その後、ニュルブルクリンクに86GRを持ち込んで評価テストを行った結果、「リアの挙動が遅れる」という現象がテストドライバーにより指摘されました。それに対して開発陣が協議した結果、「リヤサスペンションの仕様変更やホイールのインセットを変更する」という判断を行なわれました。
「仕様が仮決定するということは、工場の現場はパーツ点数を確認して製造工程をデザインします。これを変更するというのは、そうした現場の動きをすべて変更することになるのです。同時に、これまでテストドライバーが評価してきたことがすべて無しになり、評価をし直す必要がある」(前出の今井さん)ということを意味するのです。
 開発陣もテストドライバーも、そして製造ラインの誰もが妥協せずにつくられているクルマ。それが86GRなのです。86の開発責任者である宍戸さんも「設計変更などで、これまで経験したことのないようなことがあり、皆様に助けていただきました」と感謝の言葉を述べていたのが印象的でした。

実際のラインを見学させていただきました。
ベース車両となる86がライン前に待機しています。
これは、スバル群馬工場から輸送されてきたもので、足回りやシート、バンパーなど、86GR専用パーツを装着するために、まずは外すべきパーツを外します。

 サスペンション、ブレーキ、LSD、スポイラー、シート等といった専用パーツの多くはパーツサプライヤーからの調達によるものですが、リアバンパーは1本出しのマフラーに対応するため、その加工を元町工場で内製していました。
 まずはバンパーに装着されている黒いロア部分を取り外します。その後、元町工場内でプレス加工された対応パーツを再装着します。バンパー部分の作業だけで1~2時間はかかっているのではないかという手間のかかった作業ですが、それだけていねいな手作業が行なわれていたのです

 実際、1日あたり製造できる86GRはわずか4台。これだけ専用パーツが装着され、手作業で架装されてゆく86GRですので、498万円(税込)という価格は、ベース車両との差を考えるとむしろ安いのではないでしょうか。
 GazooRacingカンパニーがレースのフィールドで開発・蓄積したノウハウ、特に86においては、ニュルで培ったノウハウが色濃く反映されたクルマです。2016年春に発売された86GRMNにそのすべてが注入されましたが、この86GRはまさにそのDNAが受け継がれた量販モデルと言えるでしょう。
 そんな86GRが、今、一日あたり4台ずつ、丁寧に組み上げられ、出荷されています。ぜひとも全国のGR Garageで、こんなストーリーを思い浮かべながら、86GRの試乗をしていただきたいと思っています。
(写真:佐藤宏治、取材:ハイパーレブ編集部)

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