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マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ試乗記 これは買いだ! マセラティ・レヴァンテ・トロフェオはかつてのテーマ8.32を想起させるエンスー濃度の高い1台

  • 2019/03/22
  • GENROQ編集部
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マセラティ初のSUV、レヴァンテに昨年3.8ℓV8ツインターボを積む最強グレードのトロフェオが追加された。その走りはこれまでとは別物か? 吉田拓生が確かめた。

REPORT◉吉田拓生(YOSHIDA Takuo)
PHOTO◉田村 弥(TAMURA Wataru)/市 健治(ICHI Kenji)

※本記事は『GENROQ』2019年3月号の記事を再編集・再構成したものです。

トロフェオと名付けられただけあって

 Sというアルファベットを「スペース」と「スポーツ」のどちらに解釈するかでSUVの定義は分かれる。それでもトレンドは確実にスポーツの方向に突き進んでいる。その動きに拍車をかけているのがステルヴィオやウルス、そしてレヴァンテという近年登場したイタリアンSUVたちだろう。SUV界では後発の彼らだが、ひと際熱い自らのナショナリズムには忠実なのである。

 マセラティ・レヴァンテ・トロフェオという車名の中で聞き流すことができないのは「トロフェオ」の文字列だろう。英語で言うところの「トロフィー」というグレード名は、カイエンに「RS」グレードが追加されたような違和感を覚える。果たして、SUVにそんな暴挙が許されるのか? 
 

 「ついにV8が載った」という程度の予備知識しか持たずにレヴァンテ・トロフェオで走りはじめたら、ものの1分で体中が熱くなり「これは凄いぞ!」と実感した。何しろ新たに搭載されたV8のフィーリングが圧倒的である。2.3t超えの車重を1.5tほどにしか感じさせないパワーの出方、高回転域でビブラートが加わる排気音などエンジンに関するすべてが頭抜けている。590㎰を3.8ℓツインターボから絞り出すというスペックも結構なものだが、なによりそれがマラネロ謹製であることも効いている。

 新車特有の革の匂いで満たされた極上のインテリアに身を置き、高いアイポイントから周囲を見下ろしつつ、フェラーリの官能に浸る。ターンパイクを駆け抜けるうちに、脳裏に懐かしい1台が思い浮かんだ。ランチア・テーマ8.32。フェラーリのV8エンジンを搭載した、ランチアの最上級セダンである。

 フェラーリV8をフロントに搭載することで、シリンダーヘッドのノイズまでつぶさに楽しめる。かつてそんなモデルはテーマしか存在しなかった。レヴァンテ・トロフェオはテーマ8.32の再来なのか? 「内燃快楽」の面では完全にイエスだ。だがクルマ全体として見ると、前輪駆動の8.32に比べ、レヴァンテは最新のAWDであり、ドライバビリティは比べるべくもない。そう、レヴァンテ・トロフェオがエンジンファスターであることは疑う余地もないが、溢れんばかりのパワーを阻害しないシャシーの仕立ても見事だ。

 乗る度に壊れる(!)ことで有名だったビトルボ時代のマセラティは、信頼性はさておきシャシーの性格はとても素直で好感が持てた。相応のロールを許容しつつ、リヤのトラクションを生々しく伝えてくる、そんなレヴァンテの走りの中にもマセラティの血脈が確かに感じられた。

 レヴァンテ・トロフェオだけに用意される「コルサ」モードはレスポンスだけでなく音も圧倒的で、その性能を公道で全開放するのは御法度に思えた。やはりトロフェオはその名に相応しく、サーキットで真価を発揮するモデルなのである。地を這いつくばるようなスポーツカーたちをサーキットで眼下に見下ろしつつ、コーナーでブチ抜いてやりたい。トロフェオをドライブしていると、そんな不遜な感情がムラムラと湧き上がってくる。コレは買いの1台だ。

SPECIFICATIONS マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ
■ボディサイズ:全長5020×全幅1985×全高1700㎜ ホイールベース:3005㎜
■車両重量:2340㎏
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:86.5×80.8㎜ 総排気量:3798㏄ 最高出力:434kW(590㎰)/6250rpm 最大トルク:734Nm(74.8㎏m)/2500rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ265/40R21 Ⓡ295/35R21
■パフォーマンス 最高速度:304㎞/h 0→100㎞/h加速:3.9秒
■環境性能(EU複合モード) 燃料消費率:13.5ℓ/100㎞
■車両本体価格:1990万円

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