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海上自衛隊:練習艦「かしま」 若き海上自衛隊幹部が遠洋練習航海に出る理由。練習艦の役割

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2017年5月、横須賀基地を離岸し、61回目の遠洋練習航海へ向け出航した練習艦「かしま」。

日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくり見る機会がない最新兵器たち。本連載では、ここでは、そのなかからいくつかを紹介しよう。今回は、海上自衛隊の練習艦「かしま」である。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

横須賀・逸見岸壁での出国行事のあと、整然と「かしま」へ乗り込む実習幹部たち。

 2020年6月9日、海上自衛隊練習艦「かしま」(そして「しまゆき」)は遠洋練習航海のために広島県・呉基地を出港した。遠洋練習航海とは、文字どおり外国航路を辿り世界各国を巡りながら各種の訓練などを行なう航海のこと。乗り組むのは、この3月に海自の幹部候補生学校を卒業した新米の初級幹部155人。加えて、彼らを教育・訓練する役割の教官なども乗っている。初級幹部を育成する航海訓練だ。

横須賀・逸見岸壁での出国行事のあと、整然と「かしま」へ乗り込む実習幹部たち。

 遠洋練習航海は新型コロナウイルスの影響で延期されていた。例年なら幹部候補生学校を卒業してすぐ、5月には出航することから毎年春の恒例行事といえるものだった。それが「コロナ禍」により出航は1ヵ月ほど延期され、航海期間も短縮された。航海期間は従来なら約5ヵ月間、それが今回は1ヵ月強でしかない。遠洋練習航海は通常、ほぼ世界一周するが、今回のルートは西太平洋のみのようだ。従来なら十数か国へ寄港するが、今回の訪問はシンガポールのみで、上陸もせず補給するだけだという。これらの変更はすべて感染防止のためだが、当事者の海自初級幹部たちはきっと残念な気持ちだろう。

2017年5月22日、横須賀基地を出港する「かしま」。第61回目の遠洋練習航海、67期生たちの「登舷礼式」「帽振れ」による船出である。

 海自初級幹部とは3等海尉の階級にある若い幹部のことをいう。3等海尉とは、旧軍の階級でいう「少尉」にあたるもので、幹部としては最下級にあたる。防衛大学校や一般大学を卒業した人で、海自の幹部を目指して入隊した若者を育成するための施設が幹部候補生学校だ。広島県の江田島にある。幹候校で約1年間学び、卒業すると同時に3等海尉の階級が与えられる。いきなり幹部から始まるが、当然、現場経験というものはないままだ。
 そんな彼らが現場部隊に配属されると、広い年齢層の部下を束ねる所属長になる。歳下も当然居るが、歳上も多い。自分の父母と同年代の部下を抱える立場となるわけだ。しかし階級は下でも部下の方が経験は豊富だ。現場経験を得るため幹候校卒業から部隊配属されるまでの間に、実際の艦艇に乗務して実習を行なう必要がある。遠洋練習航海を行なう理由がこれだ。

 遠洋練習航海は、その年度ごとに航路は異なる。そして航海中に艦艇の運用方法などを体得してゆく。手旗信号や発光信号、天測などの基礎知識や技能から、戦闘訓練や実弾射撃訓練、寄港した国の海軍との共同訓練なども行なう。航海中の練習艦で集中的に訓練を重ねるわけだ。

外洋を航行する「かしま(TV-3508)」と「しまゆき(TV-3513)」。荒れた外洋で実習幹部たちは船酔いと戦う。

 遠洋練習航海中の彼らは見習い期間であり「実習幹部」と呼ばれる。そして自衛隊の訓練をハナから容易くこなせる者は少ない。教官・指導役の幹部から叱られることは度々だ。加えて船酔いにも悩まされ、不慣れな艦内生活に苦労もする。規律は厳しくスケジュールはみっちりだ。初級幹部としての基礎を艦で学び、実際の航海を通じて技能や資質、心がけなどのシーマンシップを獲得する。

 実習幹部たちを鍛え、育てるのが練習艦「かしま」だ。「かしま」は1995年1月に就役した専用艦で、練習艦としては2代目にあたる。初代は「かとり」で、1969年に就役、約30年稼動し1998年に退役している。海自は見習い幹部らの実習航海に、創設以来護衛艦を使ってきたが60年代には専用装備へ更新したことになる。艦齢を重ねた護衛艦を練習艦へと変更し、「かしま」を支援している態勢もあって、現在では「はつゆき」型の「しまゆき」「やまゆき」「せとゆき」の3隻が練習艦となり「かしま」と行動を共にしている。

古くなった護衛艦を練習艦へ艦種変更させ、「かしま」を支える態勢が敷かれている。現在では「はつゆき」型の「しまゆき(TV-3513、写真手前)」「せとゆき(TV-3518、中央)」「やまゆき(TV-3519、奥)」の3隻が、練習艦となっている。写真/海上自衛隊

 練習艦「かしま」は訓練のための設備・装備が充実している。護衛艦の兵装としては艦首に62口径76㎜単装砲を1基、礼砲を2門、3連装短魚雷発射管を装備する。艦橋や操縦室などは広く、教育指導が行ないやすい設計と構造にある。煙突後部には約170人が一度に受講できる実習員講堂を設置。艦尾にはヘリコプター甲板を備えるが、ここは寄港地でのレセプション会場にもなる。寄港先・訪問国の要人や海軍高官を招待し、パーティーを開くのだ。実習幹部や海上自衛官たちは外交官の要素を持ち役割を果たしている。国際交流やミリタリー同士での良好な関係を築いておくことは、平時にも増して有事で効果を示すものとなるはずだからだ。
 艦内設備では海自艦艇として初めて女性自衛官専用の区画を設けた。8人部屋が2区画ある(男性居住区も8人部屋)。居室と寝室は別構造。サロンも設けられている。女性実習幹部たちは1995年の世界一周・遠洋練習航海から乗務した。現在、その当時の女性実習幹部のなかから護衛艦の艦長や護衛隊司令に就く女性自衛官が生まれている。
 遠洋練習航海は1957年から毎年行なわれ、今回で64回目を数える。前述通り155人の新米幹部が乗務し、うち10人が女性自衛官だ。練習艦「かしま」は来月、7月22日に帰国する予定だ。

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