アウディTTロードスター | 消えゆく近代アウディの名車「TTロードスター」とのラストラン SUVと電動化で消えゆくオープンカーを楽しむ
- 2020/10/31
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MotorFan編集部
SUV人気の伸張と電動化の波のあおりでクーペ、とりわけオープカーが消えつつある。アウディTTもそのうちの1台だ。TTロードスターも年内に生産終了となる。そこで消えゆく近代アウディの名車「TTロードスター」とのラストランを楽しんできた。試乗車は、ベガスイエローを纏った「45TFSIクワトロ」である。
TEXT & PHOTO◎大音安弘
さまざまな変化をもたらす電動化の波だが、一台の自動車の運命にも少なからず影響を与えることになった。それがアウディのスペシャルティカーTTシリーズのオープンモデル「TTロードスター」だ。
残念なことに、年内での生産終了がアナウンスされており、現在、日本では独自仕様の限定車「TTロードスター ファイナルエディション」を発売。そのフィナーレを飾っている。姉妹車となるハードトップモデル「TTクーペ」の生産は継続されるが、こちらも現行型で最後と見られ、モデルライフもそう長くはないだろう。現在、生産を行なうハンガリー・ジュール工場では、何らかの電動車の生産が行なわれるとみられる。
そこで消えゆく近代アウディの名車「TTロードスター」とのラストランを楽しんできた。試乗車は、ベガスイエローを纏った「45TFSIクワトロ」。最新ラインアップでは、TTロードスターはモノグレードとなり、2.0ℓ直4ターボと4WDの組み合わせのみ。最高出力230ps/4500~6200rpm、最大トルク370Nm/1600~4300rpmを発揮する。馬力はそこまでではないが、これだけのトルクがあれば、かなり俊敏な加速が期待できる。
TTは、ボディも特徴的で、アルミを多用したコンポジット構造とし、軽量かつ高剛性を実現。電動ソフトトップの骨組みには、マグネシウムとアルミを使用することで軽く作られており、クーペ比90㎏増の1510㎏に留められている。
久しぶりに対面したTTロードスターは、コンパクトさが際立った初代(1998-2006年)と比較すると、かなり大きくなったように思えるが、意外なことにサイズ拡大は一回り程度に留められており(初代が全長×全幅×全高:4041mm×1764mm×1346mm ホイールベース2428mm)、コンパクトスポーツの価値は継承されていることがわかる。
しかし、車重が初代よりも10kgも軽いことには驚かされた。いうまでもなくさまざまな装備が追加されているのだから、それだけ軽量ボディの恩恵は大きい。事実、アルミ多用ボディの2代目(2006年-2015年)は、初代よりもずっと軽く仕上げられていた。デザインを見ていくと、デジタル感溢れる直線が多用されるため、クーペだと、ちょっとTTらしい軽快さは薄い。しかし、現行3代目ロードスターは、初代同様トンランクリッド付きでルーフもコンパクトで丸みを帯びるので、よりTTらしいと思う。細かいディーテルだと、TTデザインの給油リッドが愛らしい。
コックピットに収まると、アウディ独自のデジタルメーター「バーチャルコクピット」によるすっきりしたデザインが、スポーツカーらしいインテリアデザインを実現している。他モデルのバーチャルコックピットは、センターディスプレイとの合わせ技だが、R8とTTは、メーターパネルを一枚に集約。不便じゃないかと思うが、ドライバーにとっては、かなり合理的。無駄な視点移動も減り、ダッシュボード上に視界を遮るものがなくなるため、安全かつ運転に集中しやすい環境なのだ。このコンセプトを考えた人は、きっと、かなりクルマ好きかつ運転好きな人だろう。
キャビン内部は包まれ感が強く、歴代モデルと比べても、最もスポーツカー的なデザインである。ただシートまわりにはゆとりがあるので、快適性も高い。シートもホールド性を保ちつつ、タイトではないので、長距離移動でも不満はない。トランクスペースも、ソフトトップのため、クーペには劣るが、ふたり分の旅の荷物など楽々と飲み込んでくれる。容量自体は280ℓを確保する。
乗り味もかなり刺激的と予想されたが、その点は良い意味で裏切ってくれた。脚周りはしっかりとしているものの、乗り心地が悪くないのだ。これは電子制御ダンパー、マグネテックライドの恩恵のようで、ドライブモードを「ダイナミック」に変更すると、より引き締められ、安定感が増す。高速の安定感ある走りは、大型車にも引けを取らない。
心地よい走りを演出してくれるのが、6速Sトロニックとエキゾーストシステム。DCTらしい切れ味の良いシフトを見せ、エキゾーストノートもわりと刺激的で嬉しくなる。やはりスポーツカーはサウンドも旨味なのだ。ワインディングにも連れ出したが、大きすぎないボディが身軽な身のこなしを見せる。やはりTTはこうでなくちゃと嬉しくなる。
オープントップは、50km/h以下なら走行中でも開閉可能。ただ現実的には、40km+αで作動するようで、走行中は意識的に速度を落とさないといけない。ただ信号待ちで操作しても、そのまま発進できるのは便利だ。作動時間もわずか10秒なので、気ままに開け閉めできるのはオープンカーの喜びを満喫させてくれる。走行中の風の巻き込みについても、サイドウィンドウを挙げた状態だけでも割と緩やか。さらにオプションの電動式ウィンドストップを使えば、室内の風の巻き込みはかなり収まる。エアコン、ウィンドストップの調整で車内の風の流れが、コントロールでき、オープンエアも快適だった。
今やオープンカーは貴重な存在となりつつある。アウディも、すでにA5カブリオレが国内では導入が終了。TTロードスターが失われると、残るはR8スパイダーのみに。もちろん、626万円のTTロードスターは身近な存在とはいえないが、日常でも使えるスペシャルティカーが消え去ることは寂しい。セダンニーズだけでなく、スペシャルティカーのニーズもSUVに奪われつつある今、TTロードスターの生産終了も、時代の流れなのだろう。しかし、SUVだらけのカーライフは、果たして幸せなものなのかとも考えてしまう。ただTTロードスターは、3世代、22年と限られた時間ではあったが、己を肯定し、常に進化を続けてきた。それは幸せな生涯といえるだろう。
アウディTTロードスター 45TFSI quattro
全長×全幅×全高:4190mm×1830mm×1360mm
ホイールベース:2505mm
車重:1510kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式Rウィッシュボーン式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCターボ
型式:CHH(EA888)
排気量:1984cc
ボア×ストローク:82.5×92.8mm
圧縮比:9.6
最高出力:230ps(169kW)/4500-6200pm
最大トルク:370Nm/1600-4300rpm
燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射)
燃料:プレミアム
燃料タンク:55ℓ
トランスミッション:6速DCT
燃費:JC08モード 12.5km/ℓ
車両本体価格:626万円
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