総合モビリティメーカーとしての姿勢を明確に

2025年10月30日から東京ビッグサイトで開幕する「Japan Mobility Show 2025」で、スズキは「By Your Side」をテーマにしたブースを展開する 。この言葉は2025年2月に発表された新中期経営計画で示されたコーポレートスローガンであり、来場者一人ひとりの生活に寄り添い、移動に関わるさまざまな課題解決を提案する姿勢を象徴する。ブースでは軽BEV、二輪BEV、小型電動モビリティ、船外機、さらにCBG(圧縮バイオメタンガス)事業や電動ユニットなどを一堂に展示し、総合モビリティメーカーとしての現在と未来を示す内容となっている。
軽BEVを中心とした四輪分野の新展開

四輪分野で注目を集めるのは、軽乗用BEV「Vision e-Sky」だ 。全長3395mm×全幅1475mm×全高1625mmという軽自動車規格のボディに、航続距離270km以上のEVシステムを搭載。通勤や買い物、週末の小旅行など、生活の足として軽自動車を活用するユーザーの日常に寄り添う“ちょうど良い”EVとして、2026年度内の量産を目指すコンセプトモデルである。「ユニーク・スマート・ポジティブ」をテーマとしたデザインは、スズキらしい親しみやすさと前向きな印象を両立している。

もう一台の重要モデルが「e EVERY CONCEPT」だ 。スズキ、ダイハツ、トヨタの3社で共同開発が進められている商用軽バンのEV版で、航続距離は200km。軽バンとしての積載性や使い勝手を維持しながら、EVならではの静粛性と力強い走行を実現している。さらに非常時には車両の電力を外部に供給することも可能で、地域社会への貢献を視野に入れたモデルだ。加えて、エタノール燃料を活用した「フロンクス FFV コンセプト」も展示し、カーボンニュートラルに向けたマルチパスウェイ戦略を紹介する。市販車としては、新型eビターラや新型クロスビー、ジムニーノマド、スペーシアなども展示予定で、BEVと既存ラインナップの両面から未来の移動を描く構成となる。


二輪BEVで「楽しさ」を再定義

二輪分野では、「e-VanVan」が大きな存在感を放つ 。1970年代のレジャーバイク「VanVan」をモチーフとし、独特のスタイリングとデジタルテーマのカラーで未来感を表現した原付二種相当のBEVだ。EVになっても操る楽しさを重視し、ファンバイクとしての新しい遊び方を提案する。また、ペダル付き折りたたみ電動バイク「e-PO」は、日常とレジャーを横断する新ジャンルのモビリティとして開発された。強力な電動アシストとアクセル走行の両立により、カーボンニュートラル時代にふさわしい自由な移動を実現する。


さらに、インドで発表されたBEVスクーター「e-Address」の日本初展示や、GSX-8T/8TTなどの市販予定車、鈴鹿8耐で披露されたGSX-R1000R、バイオエタノール対応のGIXXER SF 250 FFV、水素エンジンを搭載したバーグマン技術展示車など、技術からライフスタイルまで幅広い視点で構成されている。

電動小型モビリティとセニアカーの進化
スズキ独自の領域として注目されるのが電動小型モビリティ群だ 。四脚モビリティ「MOQBA(モクバ)2」は、2023年のJMSで話題を集めた初代を進化させたもので、荷物配送仕様やバイク仕様など多用途展開を可能にした。さらに「SUZU-RIDE 2」も登場し、日常から商用・レジャーまで気軽に使える電動モビリティを提案する。セニアカーは発売40周年を記念した展示を行い、初代モデルと現行モデルの比較や歴史を紹介するパネルで高齢者の移動を支えてきた歩みを振り返る。

船外機60周年と環境技術の取り組み
スズキのモビリティは陸上だけにとどまらない。船外機事業は2025年で60周年を迎え、初代D55と現行フラッグシップDF350Aの実機展示を通じて歴史を紹介する 。さらに、マイクロプラスチック回収装置などを搭載した「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」の取り組みを映像や実機で披露し、環境保護への姿勢を強調する。加えて、エタノール燃料対応の「DF60A FFV コンセプト」を技術展示し、船舶分野でもカーボンニュートラルを見据えた開発が進む。

CBG事業とMITRA、Glydwaysで未来の都市交通へ
インドの酪農廃棄物を活用するCBG事業では、ビクトリスCNG/CBG仕様車やACCESS試験車両、バイオガスプラント模型を展示し、現地社会課題の解決と環境対応の両立を示す 。さらに、多様なロボットの足回りを担う電動ユニット「MITRAコンセプト」や、自動運転小型EVによる都市交通システム「Glydways」との連携を紹介し、未来の交通インフラへの展望を描いている。

軽BEVから四脚モビリティ、船外機、CBG事業まで、スズキの展示は自動車メーカーの枠を超えた総合的な内容となっている。生活に寄り添い、地域や環境との共生を目指す「By Your Side」の理念を、実物と技術で体現するブースは、JMS 2025のなかでも異彩を放つ存在になりそうだ。
「Vision e-Sky」画像ギャラリー

















