富士スピードウェイで毎年春に開催されているイベント「モーターファンフェスタ」。そのコンテンツのひとつとしてD1GPのエキシビションマッチ「ラウンドゼロ」が開催された。シーズン開幕前の前哨戦で、ポイントはつかないが、ふだんドリフトを見ないような来場者にもアピールする絶好の機会だ。エントリーは19名、追走トーナメントは8名で行うという縮小版で、DUNLOP勢としては石川隼也がマッハ車検 HT86 マッハ号(GR86)でエントリーした。

過去のラウンドゼロでは、チーム・ドルーピーのGR86はなにかしらのトラブルに見舞われることが多かったが、今回はトラブルがなく、完調のまま走りきった。

このチーム・ドルーピーのGR86は、昨シーズン終了時から運動性能に直結するアップデートは受けていない。しかし、ドライバビリティの向上を目指して、ペダルとシフトレバーを交換してきた。ペダルはレーシングペダルから純正に戻し、シフトレバーをサムソナスのものに交換した。

ペダルを純正に戻したことで、ドライバーの石川は「クラッチ蹴りを使った振り出し、振り返しという選択肢が増えて思いっきりいけます。あと半クラが増えてスタートもやりやすくなりました」という。
トランスミッション自体はアルビンズのままだが、シフトレバーのみをサムソナスのものに変更。これも「しっかりして扱いやすくなりました。ストロークをもう少し短くできれば完璧です」と石川は好感触だ。
 

本番前の練習走行は1ヒートのみ。このとき石川は、思いきったキレのある振り返しを試してみたものの、派手にスピンをしたりドリフトが戻ってしまったりして走行が決まらないまま本番を迎えてしまう。

しかし、ここで石川が「とにかくちゃんとゴールすること」と目標を変えたことがこのラウンドではいい結果につながった。単走決勝の本番、石川はあえて振り返しをかなり抑えたアクションで走行したが、距離感や安定感はバッチリで1本目から98.00点という高得点を獲得。2本目にはさらに精度を上げた走行で得点を98.40点に伸ばし、3位で単走を通過した。

石川は2本ともきれいに走りをまとめた。距離感が合っていて正確なコントロールができていたので、ラインも狙いどおりだった。

午後に追走トーナメントが行われた。石川の最初の対戦相手は、D1GP初登場のGRヤリスを駆る金田だ。1本目は先行の石川が金田を大きく引き離し、2本目にやや失速気味になった金田に対しても後追いからドリフトをうまく合わせて勝利。準決勝に進出した。準決勝では1本目の走行で対戦相手の多田がパイプ抜けのトラブルで石川についてこられず、2本目は石川が後追いからしっかりドリフトを合わせて、石川は決勝進出を決めた。

準決勝で多田を追い詰める石川。ベスト8、準決勝ともに、スピードで優位に立ち、後追いから余裕を持って相手に合わせることができていた。

決勝の対戦相手はGRカローラの松山。D1GPでも屈指のスピードを誇る車両だ。1本目は松山が先行。石川は松山をとらえきれず、角度もやや浅くなってしまう。そして2本目、石川は先行で質の高い走りを見せたが、松山に近い距離で合わせられ敗北。優勝はならなかった。

決勝では、松山に近い距離でのドリフトを許してしまったものの、石川自身も先行ではいい走りを見せた。

石川は、「今回は対戦相手も国産タイヤばかりだったのが、なんかワクワクしました。単走が3位だったので、ちょっと自信はついて思いっきりいけたかなと思います。でも振り返しはだいぶ安全に行きました(苦笑)。思いきった振り返しはもう少しクルマを煮詰めてからやろうと思います。決勝の後追いは、相手も速かったのでガムシャラに行って、ちょっとミスが多かったかな。前がアンダーっぽくなってしまって、このままだとマズいぞっていうモゴモゴした状態のまま行ってしまったので、ちょっと離れてしまいました。決勝にあまり行くことがないんで、ちょっと舞い上がってしまったかな(笑)」と反省点はありつつも、手応えを感じているようだった。

エキシビションマッチとはいえ、大観衆の前で2位を獲得した石川隼也。追走の内容にもあるていど満足できているようだった。

競技終了後チーム・ドルーピーの松岡監督は、こう語ってくれた。

「ペダルやレバーを替えて、ドライバビリティがよくなってね。スタートでちぎれたりするんですよ。それで単走は先行でやっつけることができた。その領域に来ることができた。ドライバーの操作のしやすさに関しては、細かいところでもっと煮詰めしろがあるし、そうすると走りがメキメキよくなることがわかった。テストからびっくりしてたの。別人みたいな走りかたをするから。『アバウトになってすごく使いやすい』と。クラッチを蹴るという操作がすごくナーバスだったのが、どこからでも蹴れるっていうくらいになって、それがここでも出てたし、そうやって、DUNLOPのポテンシャルをこれまで以上に引き出して使いこなせるようになった。操作の自由度が高まってタイヤの使い道がいっぺんに増えた感じ。今回追走をいっぱいできて、ドライバーがその変化をすごく感じてる。あとライフのマネージメントに関しては、オレらの腕の見せどころだし。今季はいろんな意味で期待してもらっていいと思います」

追走前は、「トラブルなく走れているだけで満足」と話していた松岡監督だが、車両の仕様変更が追走でも目に見えて効果を発揮していたのを確認してより満足そうだった。

今回のラウンドゼロには参加していないが、同じくチーム・ドルーピーのマッハ車検 HT85マッハ号(AE85)に乗る松川和也と、URAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINE(ER34)に乗る野村圭市も昨年同様ダンロップ勢としてシリーズ戦に参戦する。

松川が乗るハチロクは昨年後半好調だったこともあり、開幕戦は昨年同様の仕様で走る予定だが、その後リヤのコントロールアームなどを仕様変更するかもしれないとのこと。また、野村のスカイラインは、フロントサスペンションをシルビア系のストラットに変更。タービンもMGD製G40-1150に変更してパワーアップ。野村も「タイヤと車両とのバランスもマッチしてコントロール性が大幅に向上してポテンシャルが上がったのをひしひしと感じています」とのことなので、走りを見るのが楽しみだ。

グランツーリスモD1グランプリシリーズ2026年の開幕戦は、中部国際空港近くの愛知スカイエキスポで5月9、10日の週末に開催される。