語り合うのはこの2人!

津田洋介:80’sスクーターを中心に往時のバイク文化にあまねく精通する「TDF」代表。

宮崎正行:CB750Fにずっと乗っています。最近グラトラを格安で手に入れました。気負いのまったくない原付みたいな250です。


打倒ホンダ・リード! 追いつき、追い越せ!

まさかの、主役のバイクより大きい汗だく写真!

──3分前に名刺交換したばかりの、まったく初対面のアラフィフ男子2名が編集部のSさんに「さあ、ヤマハのアクティブスポーツについて存分に語ってください!」といきなり促されても困っちゃいますよね?

津田 イメクラなのにトーク一切無しって、ありえないですよね。行ったことないですけど。

──前戯なしで本番を強要される身にもなってほしい。まあ僕も行ったことないですよ、イメクラ。

津田 Sさんは前戯なんてしなさそうなタイプですからね。いちおう前説から始めると、千葉県に東京ディズニーランドが完成した1983年にヤマハから発売された高級スクーターが「アクティブ」です。

──売れに売れていたホンダ・リードへの対抗馬ですよね?

津田 そう。リードと同じような大柄ボディに搭載されたのは、当時50㏄スクーターでは初めてという「7ポートトルクインダクションシステム」装備の新エンジンです。

──5.7馬力! でも7ポートなんとかって、何ですかね?

津田 スタンダードが5.5馬力なので、0.2馬力の出力アップを果たしている。そのあたりは当時、商品力アップのために欠かせない0.2馬力だったわけです。そのわずかな馬力差にライダーは興奮し、「オレのほうが速いはず」と新車購入のモチベーションにしたのですから。5.7馬力という数字も当時の50㏄スクーターとしては最高スペックでした。

──7ポートのくだりはやんわりスルーしましたね。

津田 フロントサスにはアンチノーズダイブ機構付きのボトムリンクを、リヤサスにはガスクッションを採用しています。凝った装備が目白押しでカタログにはキーワードこそ満載ですが、ページ数の都合かいささか駆け足ぎみに説明されています。

──そこらへんが勿体つけていなくて好感が持てます。「スポーツ」仕様ならではの派手なグラフィック、ボディカラー同色のバックミラーやプロテクターも、自動車コンプレックスが垣間見えてうなづいてしまう。

津田 たしかにオプションで用意されているナックルガードも、もはやクルマのドアミラーにしか見えません。でもじつはこのアクティブでマニアがいちばん注目したのは、アルミキャストホイールなんです。

──スポーツのカタログではいっさい触れられていませんね。書いてあるのはチューブレスタイヤのことだけ。パンクに強いですよ、と。

汗だくのタンクトップ外人表紙をひとたびめくれば、さらに“ハード”な脱衣シーンに目を奪われる。追加仕様の「スポーツ」でフィーチャーされるのは3連のアナログメーターで、とくにタコは1万rpmまで刻まれており、速度計の60㎞/h表記との間に温度差を感じてしまう。

津田 このホイールをペリカン(初代ジョグ)や後期のタテ型エンジン車に流用してしまうんです。当時、そんなことが流行っていました。

──太いタイヤが履けたんですね。メーターは、スタンダードモデルではアナログとデジタルの2つから選ぶことができました。スポーツになるとアナログ一択。デジタル式がなんとなく偉い、カッコいいとされていた1983年当時にあっては、かなりのアナログ推しと言えますね。

津田 自動車のスポーツカーではまだまだアナログ式が主流でしたし、メーター類がたくさん着いているほど“走り重視”を感じさせてくれました。だからアクティブもアナログ3連で、鼻息荒かった(笑)。

──そこはスタンダードモデルのデジタルっぽい“都会派シティボーイ”イメージと、スポーツモデルのアナログっぽい“体育会系エリート”イメージのせめぎ合いかも。結果の2仕様併売システム。体育会といえば、カタログのメインビジュアルは、マッチョな白人男性が汗まみれでエクササイズ㏌フィットネスジムなイメージですね (笑)。

津田 そんなにはかかないだろうってくらいに、滝のように汗をかいている。ハンパない“シズル感”。表紙からしてこの熱気、高湿度。口も半開きでサムソンな感じ。


左3台が「スポーツ」、中央3台が「スタンダード」のアナログメーター仕様で、右3台がデジタルメーター仕様となっている。いちばんエラいのがアナログメーター仕様であることは言うまでもない。

──えー、いちおう補足しますと、80年代に創刊された雑誌「サムソン」はデブ専フケ専がメインターゲットですのでちょっと違います。強いて言うなら「薔薇族」っぽい。

津田 ……詳しいね。くり返しますがフロントサスはアンチノーズダイブ機構付きボトムリンク。当時、各方面でやたら持てはやされたアンチノーズダイブですが、どれも完成度がイマイチで、ノーズがダイブしたまま戻らずっていうのもあったな。

──どこか空回りしていた新機軸テクノロジーが懐かしいですね。

津田 そうそう、アクティブには「ワンツースタート機構」という新装備もありました。

──何ですか、それ?

津田 イグニッションのONとOFFの間に「START」があるんですよ。そのSTART位置でまずエンジンを始動。いざ走り出す段になったらONにすると後輪も回転し始める。飛び出し急発進防止のためのセーフティ機構ですね。

──なるほどー。ちなみにスタンダードモデルのカタログに踊るメインコピーは、「男たちの行動感性を36 °に広げて、ダイナミックデビュー」です。とくに「感性」あたりが80年代チックですね。

津田 行動感性って、何だろう……自由気ままに、ココロの赴くままに走り回れってことかな?

ひと通り取り揃えられたオプションパーツ群、とくに豊富なカラバリには目を見張るものがある。バックレストパッド付きリヤボックス1万6000円はなかなか高いが、マッドガード900円はかなり安い。

──たぶん、勢い余ってのコピーかと。深く考えないでやみくもに前進するのが80年代の流儀でしょう。

津田 モデルの彼はスクーターのカタログって知らされてたのかな? 今どこで何をしているんだろう、彼。

──もしプライベートで今でもアクティブに乗っていたら美談ですね。

津田 それはない!(笑)


※こちらの記事はモトチャンプ2018年12月号に掲載されたものです。