連載
自衛隊新戦力図鑑無人の対艦ミサイル発射車両
海兵隊は上陸作戦の専門部隊で、第2次世界大戦では太平洋の島々で日本軍と激しく戦った。現在でも「海から陸へ展開する戦い方(水陸両用作戦)」を得意とする。
近年は中国軍の脅威に対抗して、「重要な航路に近い島や海峡に、対艦ミサイルや監視システムを機動的に分散展開させ、中国水上艦隊の動きを封じる」という作戦を構想しており、新装備を導入している。代表的な新装備が「NMESIS(海軍・海兵隊遠征艦艇阻止システム)」だ。

NMESISの特徴は「無人」であることだ。「ローグ・ファイア」と呼ばれる無人4輪トラックの車体に、ミサイル発射装置だけを載せている。しかし、「無人」といっても、無人タクシーのようなAIによる自律走行ができるわけではない。
操縦モードは3種類あり、「リーダー・フォロワー」モードは移動時に用いるもので、有人車両の後ろに付き従うもの。そして人間が無線で操縦する「リモート」モード、有線で操縦する「ギャリソン(駐屯地)」モード。いずれにしても、つねに人間が直接的に管理する。

一方で、海兵隊では自動運転に向けた研究も進めており、将来的には実装される可能性が高い。NMESISは、車体前後のカメラ(可視光/赤外線)、レーダー、LiDAR(レーザー・スキャナー)といった複数のセンサーを搭載し、周囲の地形を把握する能力を備えている。報道によれば、数時間にわたり人間の介入なしで複雑な地形を走破することに成功したようだ。

では、ミサイル発射車両の無人化には、どんなメリットがあるのだろうか? ひとつに隊員の安全確保がある。冒頭で述べた作戦構想は、敵の攻撃圏内に飛び込む行為であり、当然、ミサイル発射車両は攻撃を受けやすいからだ。また、少ない人手で多数の発射車両を運用できるメリットもある。

小型だが大型ミサイルにも匹敵する戦闘力
NMESISは、地対艦ミサイル発射車両としては小型である点も特徴だ。車両が小型であれば小規模な船舶や航空機による輸送も可能となり、機動的に島や海峡に展開するという作戦を実行しやすくなる。

もちろん搭載できるミサイルは小さく低威力になるが、性能で補っている。使用する「NSM(海軍打撃ミサイル)」は、ステルス設計や先進的な目標探知システムにより「敵に発見されないため」の機能を追求している。さらにピンポイントで敵艦の弱点部位を選んで攻撃することまで可能だ。

このようにNMESISは、無人化・小型化により分散展開という海兵隊の新しい戦い方を体現した装備だといえる。すでに中国艦隊が、たびたび沖縄周辺の海峡を通過して太平洋に進出しているなかで、抑止力を担う存在として大きな意味があるだろう。
