Husqvarna Motorcycleは1903年にスウェーデンのHusqvarna社のモーターサイクル部門として設立されたが、何度かのM&Aを経て(そのなかにはBMWも含まれる)、現在はKTMと同じ親会社のグループ企業となっている。元々オフロード車のイメージが強いHusqvarnaだが、KTMのプラットフォームを活用したオンロードバイクは、そのデザインのユニークさと相まって注目されている。
Husqvarnaのオンロードバイクのラインナップは大きく3つのカテゴリーに分類されていて、アドベンチャー(オフロードツーリングバイク)系のNorden、モタード(オフロードバイクのオンロード仕様)系のSupermoto、スポーツバイク系のNakedに分かれている。それぞれの説明はここでは省略するが、Nakedに関してはVitpilenとSvartpilenの2つのシリーズがあり、前者はロードスポーツタイプ、後者は少しオフロードテイストの入ったスクランブラータイプとなっている。この801にも両方のタイプがありベース車両は共通だがタイヤをはじめ仕様装備に違いがあり、どちらも今年のニューモデルとしてデビューした。ロードスポーツモデルにはVitpilen801の兄弟機種として401がラインナップされている。

今回紹介するのはVitpilen801というスポーツバイクである。801という数字だが排気量は799ccでKTMの790 (790 Dukeなど)と同系列のエンジンを搭載している。エンジンの他にもメインフレームや足回りなど多くのパーツを共用しているが、それを感じさせないほど独創的なデザインが目を引く。シンプルな構成ながらレモンイエローに近い鮮やかなカラーを採用し、ブラックやガンメタリックなどの暗い色との組み合わせにより、強いコントラストを放っていることで、よりインパクトが感じられる仕上げになっている。そしてそのデザインを詳細に見ていくと、他社のモデルではあまり見かけない造形処理を発見することとができる。なおカラーバリエーションは他にシルバーメタリックが設定されている。
ユニークなデザインのコンポーネンツ
フューエルタンク
フューエルタンク(実際にはタンクカバー)はVitpilen801のデザインの最も注目されるコンポーネンツであろう。タンク全体は緩やかな曲面基調でニーグリップ部分でもタンクをえぐったようなデザイン処理ではなく、クリーンで全体に曲率が変化し適度にタイトな幅となっている。前方に向かいハンマーヘッドシャークのように横に張り出した部分は、その先端を垂直面で切り落としたような造形処理となっていて、これまでのどんなタンクデザインとも異なるHusqvarnaのオリジナリティを強く感じるものである。曲面とエッジの効いたラインや垂直面との構成が印象的で、この切り落とされたような面は801ロゴのグラフィックスペースとなっており独特な断面をより強調している。後ろから見ると左右のタンクカバーが中心線上ではなくジグザグとしたラインで繋がっていることに気がつく。これは左右のタンクカバーの面をひとつの曲面として綺麗につなげるために有効な手法の一つで、タンクの形状を保つためにこだわった合わせ方であると考えられる。そこにタンクパッドを取り付けることで締め付け部分やラインを目立たせないような工夫も見られる。


サイドカバー
サイドカバーからリヤカウルへつながる造形も緩やかな面で構成されたひとつの塊のような造形で、シートもその一部を切り取ったように収まっている。カーデザインなどではフラッシュサーフェイスという手法があるがそれに近い造形処理と言える。リヤカウルは前方に向かって張り出していくところがタンクの造形を反復しているようにも見えるが、サイドカバーとの組合せ部分はエアインテーク(空気を取り入れる)形状になっている。三角形のような少し無機質で平面的な形状になっておりタンクやリヤカウルとは対照的な造形である。リヤシート(ピリンオンシート)の後端も垂直に近い面で切り落とされたような形状になっており、長楕円形の断面を見せている。その上半分はHusqvarnaのロゴがエンボス加工されたシートで、下半分にLEDのブレーキランプが収まっている。ブレーキランプも機能部品として独立して存在するユニットではなく、シートの一部にしてしまったところにもこの801のデザインの面白さが見える。


灯火機
ヘッドライトはライトリングと呼ばれるリング状のLEDとその中心に浮かんでいるように配置された四角い小さなプロジェクターランプで構成されており、フロントビューでも独自性を打ち出している。ライトリングは円筒形で走行風が通り抜けるような形状で、ヘッドランプとは独立した存在として扱われている。またサイドビューでみるとライトリングがフロントフォークと並行になるように角度をつけた配置となっており、ここにも他部品と関連付けるというデザイン意図が表れている。
ウインカーも現代の車両らしく細く小型のLEDが採用されていて、形状も横長のシンプルなもので、主張せず他の部分を引き立てる脇役のような存在になっている。メーターは矩形の液晶パネルによるデジタル表示となっており、気をてらわないシンプルな構成だが速度やギヤポジションは見やすい。タコメーターは横にバーが動くタイプで、その他の機能や表示の切り替えはハンドルスイッチで行う。スマホとの連動や走行モード切り替えもハンドルスイッチでおこなうことができる。




エンジン
エンジンはKTM790系列だがクラッチカバーにはHusqvarnaのマークが入り、塗色をブラウン系にするなど差別化を図っている。クラッチカバーに施されたリブ形状はメカニカルで軽量なイメージを視覚化したようなデザインで目を引く処理となっている。エキゾーストパイプは2気筒エンジンのためシリンダー前方からフレームに沿って下方へ出され、2本がツイストするように並行して同じカーブを描きながら車体の下で集合している。そこには触媒が設置されていて、熱対策やデザイン上の処理としてエンジン下ではカバーを設けているが、カーバーには横長の穴を開けパイプをみせることで、視覚的な重さを低減している。パイプは艶消し黒塗装ではなく、金属の光沢感を残した表面処理であるため、ワイルドな感じを演出しているとともにユーザーは焼け色を楽しむことができる。マフラー本体はリヤカウルに沿って後方へ向かって上がっていくアップマフラーで長楕円形の断面を持ち、シート後端のラインと呼応した位置で垂直に切られたように終わっている。マフラーエンドの四角い排気口の周りには放射状のアクセントが施されていて、細部への造形も抜かりがない。


スイングアームはKTMが得意とするアルミダイキャスト製のものを流用していると思われるが、トラスに配置されたリブ形状を外観部品のデザイン要素として見せているのが目を引く。これは他のVitpilen, Svartpilenモデルでも同様のタイプのスイングアームを採用している。
サイドビュー
ボディパーツには特徴的なラインがそれぞれのパーツを横切るように通されていたり、関連づけられていたりすることが良くわかる。一般的にモーターサイクルのデザインでは各パーツを機能に沿って独立した形状にすることが多く、特にトラディショナルなデザインではこの傾向が強いが、このVitpilen801では線や面のつながり、立体としての一体感を表現した唯一無二ともいえるユニークなデザインであった。そのボディワークとフレーム・エンジンといったメカニカルな部分とのテイストとの異なるデザインが一体化しているところがVitpilen801の大きな特徴であり個性であると感じた。これはスウェーデンを含む北欧のクリーンで機能的なスカンジナビアデザインに通じるテイストなのかもしれない。

主要諸元
全長x全幅x全高(mm): – 軸間(mm): 1475 シート高(mm): 838 車両重量(kg): 180
エンジン種類: 水冷4サイクルDOHC 4バルブ 並列2気筒 総排気量(cc) : 799
最高出力(kw[ps]/rpm): 77[105]/9500 最大トルク(N・m/rpm): 87/8000
トランスミッション: 6速リターン
タイヤサイズ: 前120/70 ZR17 後180/55 ZR17 タンク容量(L): 13.7

