SGPの次へ。次世代プラットフォームは100kg軽量化を目指す

スバルは2026年10月17日に栃木県佐野市のスバル研究実験センター(SKC)で「SUBARU 開発戦略 説明・取材会」を開催した。この場では自社開発BEV(電気自動車)で取り入れた開発変革、次世代ADAS、次世代プラットフォーム、次世代パワーソース(新エンジン/BEV)、制御統合ECU/E-Eアーキテクチャーなどの説明と試験車の試乗体験があった。本稿では次世代プラットフォームについてレポートする。
スバルはスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)の後を受ける次世代プラットフォームを開発中だ。「SGPの素性を磨き、世界一の安心と愉しさを実現」するのが開発の狙いであり、具体的には動的質感を磨き、車両重量を低減する。
動的質感に関しては現在でも競争力の高いポジションにあると自負しているが、さらに高いレベルに引き上げるべく開発に取り組んでいる。車両重量はベンチマーク(競合他車)に対してわずかに軽いと分析しているが、これを100kg(!)軽量化する目標を立てて検討しているという。

ボディは硬ければいいわけではない。重要なのはエネルギーの伝搬速度

「動的質感を高めるにはボディが重要」と開発に携わる技術者は話す。スバルは「ダイナミック・スティフネス・コンセプト」のコンセプトを掲げ、路面の状態を効率良く伝えるボディの開発を行なっている。動的質感を評価する指標のひとつに操舵応答性がある。操舵してからリヤにエネルギーが流れる時間が非常に重要で、この時間に遅れが発生すると「良くない」と感じられることが多いという。
従来、操舵に対する代用特性はねじり剛性値が言われてきた。ねじり剛性は高ければ高いほどいいんだと。この考えはまったく的外れというわけではないが、ほかにも重要視すべき要素があるとスバルは考えている。「エネルギーをどう流すか」という視点だ。フロントタイヤの接地点からリヤタイヤの接地点へ、エネルギーの伝搬速度を速くするようなボディがいい。
この視点を持ち込むと、ただ固めればいいだけではないことがわかってくるし、不快な振動につながる不要なエネルギーの流れも見えてくるという。無駄なエネルギーをなくし、必要なエネルギーをきちんと流すようなボディにすると、動的質感の向上につながるし、軽量化にもつながる。従来は試作車を作ってはテストし、課題出しと対策を繰り返して熟成させていったが、現在はシミュレーションがこのプロセスを代用し開発期間の短縮に結びつけている。
エネルギー伝搬時間を30%短縮。AWDとの組み合わせで操舵応答性を高める

スバルはAWD(四輪駆動)システムも磨いていく。スバルのAWDは前後均等かつ連続的に駆動力配分ができるシステムなのが特徴だ。FFベースでフロント偏重になりがちなAWDシステムで滑りやすい路面を直進する場合、前輪のグリップを駆動力で使い切ってしまうので直進性が保てず、修正舵が必要になる。前後均等に駆動力を配分できるスバルのAWDなら直進性が確保され、修正操舵が少なく安心して走れる。
滑りやすい路面でハンドルを切り込んでいった場合、FFベースの4WDはフロントタイヤのグリップを駆動で使い切ってしまうので横力がなかなか出ない(ヨー応答が悪い)ので、舵の効きが悪いと感じやすい。いっぽう、前後均等に駆動力を配分できるスバルのAWDはハンドルを切ったなりのリニアな応答を示すことができる。
「エネルギー伝搬時間を現状より30%短縮すると、応答が良くなります。加えて前後の適切な駆動力配分により、ドライバーとクルマが自然に対話できるようなクルマをつくることで、無意識に安心して走れる。応答性のいい素性のいいボディにすると、ADASの制御にもいい影響があると考えているので、この方向で作り込んでいきたいと考えています」と、開発に携わる技術者は話す。
レーザー溶接とホットプレス、衝突荷重経路の最適化で車体を軽くする


検討中の事例とのことだが、次世代プラットフォームには軽量化技術も織り込んでいる。従来どおり、強度の高い鋼板を採用して板厚を薄くし軽くしていく開発も進めるが、一体化による軽量化も進めている。例えばフロントドアまわりの骨格はAピラーとBピラーなど部位ごとに分かれているものを溶接でつなぎ合わせているが、次世代プラットフォームでは部位ごとに必要な強度・板厚を選択して平板の状態でレーザー溶接。これをホットプレスして成形する技術を検討をしている。これにより効果的に板厚を下げることができ軽量化を図るというわけだ。

また、衝突時の荷重経路を改善することで軽量化に結びつけようともしている。例えば現状、フロントのアッパーフレームは先端で途切れた構造となっているが、次世代プラットフォームではバンパービームとつなぐことで荷重をしっかり流せる骨格構造に変更。これにより板厚の最適化が可能になり、軽量化を図ることができると考えている。

開発期間は従来の半分に。デジタルと大部屋開発が変えるクルマづくり

さらに、開発プロセスを変える。デジタルと大部屋制を融合した開発変革で、企画・設計を経て実車検証に持ち込むまでの開発期間を従来の約2分の1にまで短縮した。これができたのはマイルストーン管理の手法を変えたからだという。
「従来は細かなマイルストーン管理でゲートをたくさん設けて開発を進めていました。またそれを縦割りの分業組織がこなしていました。すると、ゲートをクリアするためになんとかしなければというマインドになる。自分のところでとにかく丸めることに注力しがちで、隣の状況やクルマ全体の視点が失われやすい。新しい開発ではマイルストーンを最小限にして時間枠にとらわれないようにし、大部屋開発を導入することで、開発の初期からパートナー企業様を含めいろんな部署の人たちと会話できる環境にしました。実際にやってみると、チャレンジするマインドが醸成できている手応えを感じています」(技術者)
課題解決に費やしていた時間を半分に短縮することで、浮いた時間を実車の作り込みや技術開発に還元する考え。スバルはこれを「ぐるぐる回す」ことで、世界一安心して移動できるクルマづくりを追求していく。
