1959 Porsche 718 F2 Type547【ポルシェ図鑑:13】

【ポルシェ図鑑】「ポルシェ718 F2 Type547(1959)」フォーミュラカーに生まれ変わった718。

ポルシェ 718 F2 Type547のフロントスタイル
1.5リッターF2規定に合わせ、モノポスト・フォーミュラに改装されて活躍したポルシェ 718 F2 Type547。
ポルシェの初期レース活動を支えた550から発展した718を、新設された1.5リッターF2クラスに参戦すべく改修を受けて誕生したのがモノポスト・フォーミュラの718 F2 Type547。ポルシェ名義としては初のオープンホイール&モノポストのレーシングカーを解説する。

1959  Porsche 718 F2  Type547

1.5リッターF2規定のスタートと同時に進出

550Aのアップデート版というべき718 RSK。写真は1957年にオーストリアのツェルトベクで行われたスポーツカーレースで優勝したヴォルフガング・フォン・トリップスのマシン。

1953年に登場したポルシェ初の純レーシングスポーツ、550 スパイダーは、1956年に新設計の鋼管スペースフレーム・シャシーと改良を加えたリヤ・スウィングアクスルをもつ550A スパイダーに発展。さらに1957年には軽量化されたスペースフレームと安定性に欠けると不評だったリヤサスペンションをウィッシュボーンに変更した718 RSKが登場する。

その後もレギュレーションの変更に合わせ、エンジン背後にトランクスペースを設けるためにシャシーを延長。ウインドスクリーンを大型化するなどの改良を施した1960年型の718 RS60、1961年型の718 RS61へと進化を遂げ、ポルシェのスポーツカーレース活動の屋台骨を支えていく。

ポルシェ名義では初のモノポスト・フォーミュラ

1.5リッターF2規定ではセンターコクピットのシングルシーターであれば参戦可能になったため、ポルシェは718 RSKをセンターコクピットに改修した718 RSK F2を製作。後年、F2がオープンホイールに限定されたのを受け、718 F2 Type547が誕生した。

一方、1957年から1.5リッターF2規定がスタートすると、ポルシェはフォーミュラレースにも進出するようになる。というのも当時のレギュレーションではオープンホイールでなくてもセンターコクピットのシングルシーターであれば参加が可能だったからだ。

1.5リッターF2クラスで活躍した718 F2 Type547のコクピット。グラハム・ヒルやジョン・サーティース、スターリング・モスなど錚々たる名レーサーがステアリングを握っている。

そこで彼らは718 RSKをセンターコクピットに改造。クーパー勢が席巻する1958年のF2選手権では、190psにチューンされた1498ccの空冷フラット4 DOHCを搭載したジャン・ベーラの乗る718 RSK F2がランスとアヴスで優勝する快挙を成し遂げた。

1959年からF2がオープンホイールに限定されると、718をベースとしたType547という形式名のモノポスト・フォーミュラ(ポルシェ名義では初)を製作。F1との混走となったモナコGPではヴォルフガング・フォン・トリップスや女性レーサーのマリア・テレーザ・ディ・フィリップスがドライブしたほか、1960年にはワークスからジョー・ボニエ、ハンス・ヘルマン、グラハム・ヒル、ダン・ガーニー、ジョン・サーティース、イギリスのロブ・ウォーカー・レーシングからスターリング・モスといった面々が出走。ニュルブルクリンクでボニエ、インスブルックでヘルマンが優勝する活躍をみせた。

F2では数々の栄冠を獲得したが・・・

リバプールにあるエイントリー・サーキットで1960年4月30日に開催されたXV BOAC 200レースで優勝したスターリング・モス。イギリスの名門プライベーター、ロブ・ウォーカー・レーシングのエントリーで、ワークスのジョー・ボニエとグラハム・ヒルもそれぞれ2位、3位に入賞している。

その後1961年からF1が1.5リッター規定に変わり1.5リッター時代のF2が廃止されると、ポルシェは718 F2にクーゲルフィッシャーの機械式インジェクションを備えた787 F1を製作し参戦。しかしながらトラブルが頻発したため、718 F2をF1マシンとして投入されるようになるが、全輪ドラムブレーキと大きく重いシャシーは時代遅れで、1963年のドイツGPでの4位以外、思ったような成績を残せずに終わった。

【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 718 F2 Typ547
年式:1959年
エンジン形式:空冷水平対向4気筒DOHC
排気量:1498cc
最高出力:190hp
最高速度:250km/h

TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
COOPERATION/ポルシェ ジャパン(Porsche Japan KK)

ポルシェ図鑑:01-04

ポルシェのヒストリーを追う! 最初の1台から礎を築いたグミュント時代 【ポルシェ図鑑:リンク集】

スポーツカーのメートル原器とまで称えられる911をはじめ、スーパーSUVの元祖的存在のカイエンやマカン、ミドルスポーツの雄・718ケイマン/ボクスター、スポーツサルーンのパナメーラ、新時代を見通すタイカンまで、自動車メーカーとして確固たる地位を築いたポルシェ。その70年以上に及ぶ歴史を解説する「ポルシェ図鑑」を、今回はポルシェの黎明期・グミュント時代を中心に紹介。

ポルシェ図鑑リンク集【05-08】

ポルシェのヒストリーを追う! ボクスター/ケイマンやカイエンの祖先とは? 【ポルシェ図鑑:リンク集】

常に時代を象徴するスポーツカーをリリースし、世界中に多くのファンを獲得しているポルシェ。代表モデルである911シリーズの「リヤエンジン・リヤ駆動」「水平対向エンジン」は356から連綿と引き継がれているが、718ケイマン/ボクスターのミッドシップレイアウトや、カイエン/マカンというSUVモデルのルーツもすでに1950年代に製造していた。ポルシェの現行モデルにとって礎になったレアモデルたちを解説する。

黎明期のポルシェ、完全解説!「ポルシェ図鑑」09-12リンク集

ポルシェのヒストリーを追う! 熟成極まった356から911への転換 【ポルシェ図鑑:リンク集】

スポーツカーブランド「ポルシェ」の名を不動のものとした356は、モータースポーツシーンでも躍進。世界中のレースでポルシェのハイパフォーマンスを喧伝するとともに、多くのファンを獲得し様々な派生モデルをリリースしながら発展を遂げていく。その一方、さらに高性能なモデルを望むマーケットの要望を叶えるため、新型モデルの開発も進んでいた。356の熟成期と、現代へ続く傑作「911」への萌芽を解説する。

投稿 【ポルシェ図鑑】「ポルシェ718 F2 Type 547(1959)」フォーミュラカーに生まれ変わった718。GENROQ Web(ゲンロク ウェブ) に最初に表示されました。

キーワードで検索する

著者プロフィール

藤原よしお 近影

藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…