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次世代プラットフォーム戦略の先陣を切ったVW
トヨタのTNGA、ルノー・日産のCMF、BMWのCLAR、メルセデス・ベンツのMFA/MRA/MHA/MSA、ボルボのSPA、ステランティスのCMP、ダイハツのDNGAなど、各自動車メーカーはこの10年間で続々とプラットフォームのモジュラー化を進めてきた。
その先陣を切ったのが、フォルクスワーゲンが2012年に発表した「MQB」。ドイツ語の「Modulen Quer Baukasten」の頭文字をとったもので、英語では「Modular Transverse Matrix」、日本語にすると「(エンジン)横置きパッケージモデル向けのモジュール化した基盤」的な意味合いとなる。先にあげたTNGAやCMFなど、いずれもクルマをいくつかのモジュールに分け、それを統合することで1台を構成するという思想は同じだが、モジュールの“粒度”が異なる。
セグメントを超えたモデルの基礎を担うMQB
MQBが画期的だったのは、ひとつのプラットフォームを5つのモジュールとして分割した点。ペダルから前車軸までの部分のみ(上記画像で「uniform」と記されている箇所)を固定とし、それ以外の部分(トレッド、ホイールベース、ホイールサイズ、シートとステアリングホイールの位置関係など)を自由に変更できるようにした。これにより、小型車のポロから上級セダンのパサート、アルテオンまで、多種多彩な車種で同一のプラットフォームを共有することが可能になった。
また、MQBではエンジン搭載位置は統一となっており、吸気を前方、排気を後方に向けて、12度後ろ側に傾けるように配置。その前提で設計した内燃機(ガソリン、ディーゼル、天然ガス)を搭載できるのはもちろん、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、さらには「e-ゴルフ」といった電動化車両までを含めた幅広い車種のベースとして活用できるポテンシャルの高さを誇った。MQBを10年で3200万台もの車両を製造する基礎たらしめたのは、セグメントを超え、パワーユニットを問わずに使えるこの高い柔軟性だった。
MQBの設計思想はEV専用のMEBへ継承
フォルクスワーゲングループ全体で3200万台超、フォルクスワーゲンブランド単体でも2000万台以上の車両のベースとなったMQBの思想は、次世代のEV専用プラットフォーム「MEB」に継承されている。
MEBは高電圧バッテリーを前後アクスル間に配置し、電動駆動コンポーネントを最小限のスペースにまとめることで、最大限の居住・荷室空間を確保する。電気自動車時代を駆け抜けるための新しい“下半身”は、すでにID.3やID.4、ID.5、ID.Buzzと、コンパクトハッチバックやSUV、ミニバンまで様々なスタイルの電気自動車を支えている。