太田哲也の「ジェントルマンレーサーのすゝめ」:第5話

「勝つマシン」をつくり上げる醍醐味 【太田哲也の「ジェントルマンレーサーのすゝめ」:第5話】

太田哲也の「ジェントルマンレーサーのすゝめ」:第5話
全開に引き続き、アルファチャレンジをレポート。車体とドライバーに施したレース対策を披露する。
太田哲也氏が参戦しているもうひとつのジェントルマンレース、アルファチャレンジの魅力とその戦い方をレポートする第二弾。今回は実際にレースに勝つために行っている施策を、車両とドライバー双方について言及していきたい。

アルファロメオ 4Cでレースに勝つ施策とは?

4Cで真夏のレースを戦う際、熱対策がもっとも重要となる。車体のどの部分に対策を施すか、メーター類もトランスミッション油温計、エンジン油圧計に加え、デフやトランスミッション、吸気温度などあらゆる部分を計測できるようにした。

アルファロメオ4Cをベースに、「TEZZO 4C RT1」と名付けたカスタムを進めてきた。TEZZOとは自分が主宰しているチューニングブランドで、市販車をサーキットで楽しく走らせるためのカスタムを信条として展開している。そして「RT1」とは、「ラジアルタイヤ最速プロジェクト」のことで、一般市販ラジアルタイヤを装着して公道走行OKの「自主規制」範囲でカスタムする。つまり車検対応車で今季はSRクラス(Sタイヤ装着+無制限改造のスーパーレーシングクラス)にエントリーする。

4Cの不調原因は「熱」であることは特定できていた。ただその対策となると、かなりのことをしないと難しい、依然として大きな課題として表面化したのが、前述した前戦の菅生Rd.2だった。6月の東北はまだそれほど暑くはなかったにもかかわらず、前日の練習走行中にチェックランプが点灯し、シフトチェンジが不能になってしまったのだ。急遽、現地で冷却ダクトを追加するなどして10周は走りきることができたものの、薄氷を踏むような奇跡的な勝利だった。

最大の弱点である熱対策を施す

ラジエーター、インタークーラー、デフオイルクーラーに水を霧状して直接当てて冷却するシステムを作成。ウインドウウォッシャーを流用した。

今回の真夏の筑波は大変暑く、しかもテクニカルコースでエンジンルームに熱がこもりやすく、前戦以上の熱対策が必要となることは分かっていた。

そこでどこをどう冷やすべきかピンポイントで見極めるため、まずは計測機を各部に装着した。メーター類もトランスミッション油温計、エンジン油圧計のみならず、デフ、トランスミッション、吸気温度、その他さまざまな部分の温度を計測できるようにした。

工夫と技術で問題を解決するのもレースの一環

エンジンルーム内に熱がこもりやすいため、外気を積極的に導入するエアダクトを製作。TEZZOが培ってきたパーツ開発技術が遺憾なく発揮されている。

過熱を抑えるため、デフオイルクーラーも装備した。4Cはエンジンルーム内に熱がこもりやすいので、ルーフから外気を導入できるエアダクトを製作した。さらに真夏は外気も熱いので、いったん保冷剤を溜めておく保冷庫を作り、冷気がデフとトランスミッションにピンポイントで当たるように工夫。ラジエーター、インタークーラー、その下のデフオイルクーラーを冷やすためには霧状の水を噴霧するシステムも装着した。

このあたりはワンメイクレースとは異なり、アルファチャレンジのSRクラスがとくに安全対策に関しては無制限的なレギュレーションになっていることに対応する。

ドライバーにも熱対策を施して完勝!

加齢に伴う体力の低下対策など、シニアドライバーにはそれなりの準備が不可欠。車内の暑さに対抗するため身体を冷却するアイテムを装備してレースに臨む。

オイルに関しても、オイルサプライヤーのUnil opalと協働で前戦時のオイルを化学分析し、その分析結果を元に、オイルの粘度を決め(夏場だから固めの粘度とは限らない)添加剤も配合した。

こうして迎えた前日のテスト走行では、「シニアドライバー(=太田哲也。笑)」の冷却も必須であることが判明。急遽、愛犬が散歩に行くときに首に巻いている「首ひんやりパッド」を拝借し、さらに保冷剤をポケットに収納できるベストを着こんで予選、決勝に臨んだ。

アルファチャレンジとしては長めの12周、凍らせた保冷剤が溶けてくる後半はシニアにとって暑さがきついレースとなったが何とか集中を切らすことなく、車両に関しても最後にはエンジン油音の針が140度に近づく場面もあったが、結果としてはポールトゥーウィンという理想的なリザルトを残すことができたのであった。

REPORT/太田哲也(Tetsuya OTA)
PHOTO/TEZZO
COOPERATION/ブリヂストン

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