安心の青森ヒバを使った和の空間を創造

昭和世代にとって、畳の和室が身近だという人は少なくないと思う。もちろん、家に洋室しかなかったという向きもあると思うが、大抵は和洋折衷というのが昭和の住宅だった。それもあってか、筆者もくつろげるのは畳の空間になってしまうのである。
畳のキャンパーと言えば、岡モータースの「ミニチュアクルーズ遍路」があるが、今回紹介するロードセレクト青森の「コンパクトEAH和」はそれとは違うアプローチで考えられたものだ。

多くのキャンピングカーの家具は、現代的な工法で造られていることが多い。例えば、重量増を抑えるために家具は接着材を使うし、使っている部材にもケミカル的な材質が含まれていることもある。こうしたものがファクターとなって、人によってはアレルギー症状を発する場合がある。
ロードセレクト青森のユーザーにも、アレルギー症状がある人がいて、同社の中島大社長は“人にやさしい素材でキャンピングカーが造れないだろうか”と考えていた。数年間の試行錯誤で行き着いたのが、“和”だったという。

人体に優しい空間を創造するにあたって、まず考えたのは、家具にどんな部材を使うことだった。身体に優しいのはやはり天然木だが、問題はどの産地のどの樹を使うか。林業関係者と相談した結果、ようやく辿り着いたのが地元の「青森ヒバ」。
青森ヒバは高級木で、抗菌や消臭といった効果がある成分を発する。また、見た目にも美しく、香木になるほどのいい香りもあるのが特徴だ。これを家具の部材に使うことで、車内に漂うカビ菌や雑菌などハウスダストを抑制できるというわけだ。

車内の環境を良くするのにもうひとつ重要なのが、ベッドマットだった。そこでロードセレクト青森がチョイスしたのが、「畳」。布を使わないことで、アレルギーの要因となるダニやホコリなどを減らせるというわけだ。これもまた試行錯誤した結果、住宅建材に使われている畳表を採用。和紙が折り込まれた畳表は、カビの原因になる結露の水分を吸収する。
ただ、通常の畳の使い方とは違って、用途はベッドマット。そこで柔道用の畳のクッション材を芯部に使い、畳表や畳縁も職人が特殊な方法で張っていった。その結果、どこから見ても美しい畳に仕上がっているのである。

標準仕様にオプションをプラスすることで自分仕様に
コンパクトEAH和の装備は、いたってシンプルだ。家具は扉を開放することでミニテーブルとなり、横には洗顔などで重宝するシンクが付く。蛇口はシャワーヘッドになっており、車外でレジャーシャワーとして使うことができる。相対する車内左には、ミニテーブルとマガジンラックを兼ねた家具がインストールされる。


加えて、40Aサブバッテリー、リチウムバッテリーにも対応する走行充電システム、集中電源システム、12V電源ソケット、電圧計、LEDが標準装備。取材車両に付いている他の装備は、すべてオプションとなっている。最もスタンダードな状態での価格は、272.25万円。これに、FFヒーターなど車中泊に欲しいものを加えていくと、300万円台半ばから後半の価格になるだろう。

ちなみに、オプションで2段ベッドにすることも可能だが、上段ベッドはマットがレザー仕様になること、畳は厚みがあるために上段空間が若干狭くなることを事前に知っておきたい。
軽バンコンとしては、標準的な装備と価格だが、最大の特徴はやはり和室であるということだろう。畳はベッドマットほどクッション性がないため、そのまま寝袋で寝るのは寝心地が硬いかもしれないが。だが普段、布団で寝ているという人にとっては日常と環境が変わらないのは、かえって好都合とも言える。

何より、アレルギーのあるユーザーが、安心して使えるというのは、これまでのキャンピングカーになかった“性能”だ。一人で、そしてファミリーで安心して使いたいというは、ぜひチェックしてみて欲しい。