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ステンレスってどんな金属?
ステンレスというとクルマ好きの人は映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアンDMC-12を思い出す。その他でクルマ関係でステンレス製のものは?「そうだなぁ、アフターパーツで排気系があったかな」くらいでかなり馴染みが薄い金属だ。それでも生活環境を見てみると、実はかなり身近にある金属だ。
ではステンレスとは?となるのだが、ステンレスは鉄を主成分とする合金。鉄に含有させる金属はクロム、ニッケル。ステンレスの錆び難さが生まれるのは、含有されるクロムが酸化して薄い酸化皮膜を作るからだ。ステンレスは重いと思われがちだが、比重は約8、鉄が約7.9なので実はあまり変わらない。
ではどうしてクルマ関係の素材として使われないのだろか? どうやら加工が難しいようだ。プレスによる成形、溶接も鉄に比べてやり難いからなのだろう。
ステンレスを使うなら、鉄にめっきを掛けたり、塗装を施せば錆び難さも確保できる。プレスでも自由な形、ラインを作る方が商品価値も上がる。
ちなみに比重であるが、同じ質量で作った場合、鉄なら8kg、アルミなら2.7kgでできる。だが強度は同じにはならない。強度(色々な強度、曲げ、凹む等があるので、数字は説明的に、わかりやすく述べているだけです)を同じにするとなると、アバウトな言い方だが、アルミは倍の厚さが必要とする。とすると鉄で作ると8kg、アルミだと4kgとなってしまう。その上にボックス構造で作るとすると、金属の性質でもまた違ってくる。必要とする強度が同じなら、アルミで作ると1kgで済む可能性もゼロではないことになる。
ひとつのパーツを作るだけでも、素材、強度、そしてコストと色々な条件が重なり合って、クルマはできている訳だ。そのパーツ数、1万点から2万点とさえ言われている(この大きな数字の開きは例えば基盤、これをひとつのパーツと考えるか、それともバラして100のパーツで構成されているか、どう考えるかで変わる。単にパーツリストの数を数えればいいわけではない)。
さて、アウトドアではステンレスはどうなのか? 錆び難さ、光沢の美しさから焚き火を使うキャンパーに人気がある。徒歩や自転車等を移動手段として使うなら、軽さが重要である。だが、基本クルマでキャンプサイトまで入れるのなら、重さや大きさよりも、いかに自分らしいアウトドアが演出できるかの方が優先されるわけだ。
ステンレス製スモーカーを新規導入!
焚き火台、薪ストーブ、前回紹介したピザオーブン、今回のスモーカー、そして形の良いヤカンもある。ステンレス製の製品はどちらかと言うとキャンプグッズを眺めたり、使いながら静かに夜を過ごすのに、ちょうど良い素材なのかもしれない。
今回のこのスモーカー、どこが気に入ったかと言うと、まずは形。中は中空なので、ここに小さなキャンプグッズを入れれば、荷物の全体の容積はそれほど増えないのではないか。そしてやはりステンレスの光沢である。
時間があれば広葉樹の枝を自分で削ってチップを作り、その時だけの燻製を味わうなんて良いではないか、味や薫りなんて二の次でも、まあ良いではないか。そんな夢がどんどんと広がっていくのである。
構成されるパーツはハンドルを本体の一部と数え、本体、蓋、グリルラック、ドリップトレイの4パーツ。重さは約1.2kg。寸法は縦約17.5cm、横30.5cm(ハンドルを伸ばした状態で約42cm)になる。高さはハンドルを折った状態で約8.5cm(本体の高さは約7.5cm)だ。クルマでの移動でなら苦になる大きさ、重さではない。
内側の高さはドリップトレイ、グリルラックを入れた状態での約5cm。スモークする時は上にも空間が欲しいので、食材の厚さは3cm以下あたりが適当であろう。
オプションで専用カバーも販売されているのでこれも入手。ハンドルを出したままでも収納できるので、カバーを掛けて吊るして保管ができる。
対応している器具はキャンプ用のシングルバーナー、家庭のガスコンロ、焚き火、炭、IHにも対応しているので、ほぼすべての調理器具を網羅している。
さっそくスモークしてみる
スタートセットとしてチップが300g付属されている。日本で販売されているチップの形状とはかなり違う。配分はポプラ6、松4。ここでアイデア、この形状ならナイフで作れるかもしれないぞ。
別に用意したチップはSOTOのスモークチップミニ。小分けの100g入りのパックなので色々なチップを楽しめる。お気に入りが見つかったら、それを今度は購入すれば良い。
食材は肉、魚介類、ポテトチップ、ナッツ類、塩と即席麺。さぁ、素人スモーカー、どうなることやら。
燻製は3つの製法に分かれる。熱燻(80℃から140℃)、温燻(30℃から80℃)と冷燻(15℃から30℃)。このスモーカーは熱燻になる。食材はそのまま燻製に出来る物と、ソミュール液(今回は水500ml、塩大さじ2、砂糖大さじ1、日本酒大さじ2、胡椒、ローリエ2枚。これを一煮立ちさせて冷ます)に漬けて味付けし、乾燥させてからスモークする食材に分かれる。
肉類、魚介類はソミュール液に漬け、乾燥させスモークする。牛肉は乾燥前にブラックペッパーを多めに振っておく。ナッツ類、ポテトチップス、即席麺はそのままスモーク。どちらもスモークしてから、時間を置いて馴染ませた方がより美味しくなるのは同じである。
準備ができたら、アウトドアでスモークだ。まずは塩とナッツにチャレンジ。チップはウイスキーオークを使ってみる。10分ほど。
結果はスモークし過ぎでえぐ味が出る。塩は下まで燻されないので、ビニール袋等に入れて叩いて細かく戻し、混ぜる。
即席麺は高温になりすぎて焦げてしまったのでやり直した。やはり温度管理は難しい。味はスモークが強過ぎて、焼そばには向かないかもしれない。汁のあるラーメン等でほんの少し薫り付け、その辺りが狙えたらよさそうだ。
牛肉は柔らかめのビーフジャッキーを目指してみた。かなり出来は良かったが、胡椒が多過ぎ。僕には効きすぎた。
厚みがあり脂分が多い肉は燻製には向かないとされるが、あえてスペアリブを燻製にしてみる。僕的にはこれが一番の仕上がりで、このスモーカーは燻製の薫りを付けるオーブンとして使うのが最も良い方法だと気が付いた。スペアリブ等をスキレットで焦げ目を付けて、小量のスモークチップを入れて中まで火を通す。これだ。
海産物、海老とカニカマは桜を使いスモークしてみる。海老の方が強く燻製されるようだ。正確に時間を突き詰めていくなら、同じ食材だけにした方が良さそうだ。
鯵の干物はソミュール液を使わず、一度日本酒で戻してから乾燥させてみる。燻製のチップは桜を選んだ。さて、燻製にえぐ味が出てしまった場合は水で洗うと良い。もちろん、煮込み料理に使うのならそのままでも良いとは思う。
最後に感じたことは、アウトドアでその日に食べる食材を燻製にするなら、すべての食材を燻製にするのは、あまりお勧めできない。ひとつ、ふたつの食材を燻製にして料理に幅を持たせるのが良いと思う。
じつはいままで2台のスモーカーを使ったことがあるのだが、目指したのは温燻、だが熱燻になることも多かったが、それはそれ、けっこうルーズに考えていた。ルーズでもいけたのはスモーカーの容積が大きかったからである。しかしこのスモーカーは容積も小さく、温度計もない。簡単なようでかなりの熟練が必要である。ただ、小量のチップを使い、あれ? スモークされているの? くらいに仕上げられたら、容量の大きなスモーカーではできない薫り付けが可能だと思う。あとはこの燻製した後のスモーカーの汚れ、その清掃が大変と思わないかた、ぜひチャレンジしてください。