マツダ・ロードスター990S 軽井沢にサプライズ出現!

これが最新最良のND! マツダ・ロードスター990S出現! 価格は意外とお手頃かも?

軽井沢にサプライズ登場した、マツダ・ロードスター990S
10月24日(日)に長野県の軽井沢で行われたマツダ・ロードスターのオーナーズミーティング会場に、まだ公式発表されていないはずの特別仕様車がサプライズ展示された。その名も「990S」。車重990kgを意味するネーミングが与えられた、この最新モデルの真相は?

原点回帰で人馬一体を徹底追求

毎年5月に開催されてきたロードスター軽井沢ミーティングは、コロナ禍の影響で2020年は10月に変更され、21年もまた10月に開催された。単一モデルのオーナーズイベントとしては世界最大級だが、その一方で運営スタッフまでが入場料を払うという手作り感溢れる雰囲気、そして敷居の低さもこのイベントが多くの人に愛されている要因だろう。地元軽井沢の住民にも認められ、このご時世でも開催に際して不安や疑問の声は聞かれなかったという。

そんなロードスターオーナー必見のイベントに、今年はかなりのサプライズが待っていた。まだ発表されていない特別仕様車が突如シレッと展示されていたのである。「かなりの」と書いたのは、これが後々「史上最良のロードスター」と語られる可能性がおおいにあるとレポーターが勝手に予感を抱いたからだ。

その特別仕様車の名前は「990S」で、車重990kgに由来する。エントリーグレードである「S」をベースに、ライトウエイトスポーツらしさを追求するためのさまざまな装備が与えられている。

■ロードスター990Sの主な新装備
ブレンボ製ブレーキキャリパー(専用色)
大径ブレーキディスク
レイズ製ホイール
専用シャシーセッティング
ネイビー ソフトトップ(ボディカラーとの組み合わせ自由)
ネイビー エアコンベゼル
新デザイン フロアマット(他グレードでも注文可能)
車両姿勢安定制御(22年モデルより全グレードに展開)

驚かされるのは、ベースが「S」であるという点だ。常識的には、こうした「走り」を売りにする特別仕様車は、最強グレードをベースにガチガチの、あるいはテンコ盛りのスペックを引っ提げて登場してくるものだ。

ところがマツダの開発陣は、「軽量」「LSDなし」「リヤスタビライザーなし」にこだわったという。

開発主査の齋藤茂樹さんが説明する。

「LSDはコーナー出口で強大なトラクションを得たいときには有効ですが、ターンイン時にも効くので、その場合は素直にノーズが入っていきません。サーキット走行ならともかく、街乗りやワインディングロードなどではどちらかと言えばオープンデフのほうが気持ちいいんですよね」

「パワーが上がっても必ずしも楽しさにはつながるとは限りませんが、軽量化は必ず楽しさにつながります。今回の990kgというのは、既存の最軽量モデルであり990Sのベースとした『S』と同じ重量ですが、大径ディスクによる重量増をブレンボ製キャリパーやレイズ製ホイールの採用で相殺しています」

補足すると、国交省への届け出は10kg単位のためSと990Sは同じ重量となっているが、実際には990Sのほうが僅かに軽いという。

マツダ・ロードスターの開発主査を務める齋藤茂樹さん。

もうひとつの目玉は、KPCと呼ばれる新たな車両姿勢安定制御システムの導入だ。これは0.3G以上の横Gを感知するとイン側のリヤブレーキを僅かにつまんでそれ以上浮かないようにし、車体を安定させるというもの。バイクに乗る人には、コーナリング中にリヤブレーキを軽く当ててリヤのトラクションを確保する、あの感覚と言えばわかりやすいか。もちろんクルマが勝手にやってくれる以上、その動作は極めて滑らかかつ微妙なものでなければならず、実際にKPCの作動によってドライバーが違和感を覚えることはまったくないという。

「ちょっとでも違和感があったらやめようと思っていましたが、まったくそんなことはありませんでした」と齋藤さん。

テストコースで試乗したマツダの別のスタッフによれば「限界性能も上がっているはずですが、なによりドライバーが得られる安心感がすごい」とのこと。


エアコンベゼルがさりげなくブルーに変わっている。
フロアマットは990Sに合わせて新たにデザインされたもの。ただ、ほかのグレードを選んでもこのマットは購入できるようだ。
レイズ製ホイール、ブレンボ製キャリパーに大径ディスクの組み合わせ。

そして興味深いのは、このKPCの採用によって車体の安定性を確保できるため、990Sではダンパーの減衰力を落として柔らかい足にしているという点だ。

足回りのセッティングが柔らかければ、まず当然ながら乗り心地はいい。荒れた路面でもトラクションを失いにくい。さらにはサスペンションが良く動くということは筆者を含む中級者でも荷重の変化を感じやすく、ほどほどの速度域でもスポーツドライビングを楽しめるということである。

いたずらに速さだけを追い求めるのではなく、スポーツカーを操る悦び──つまり「人馬一体」感にこだわり続けてきたロードスターの歴史を考えれば、この990Sこそ究極のロードスターと言ってもいいのかもしれない。

エクステリアに目を向ければ、ネイビーのソフトトップがため息が出るほど美しい。ブラック塗装にブルーのロゴが入ったブレンボのキャリパーもとても新鮮だ。いろいろカスタマイズするのもロードスターの楽しみ方だが、もしも自分がオーナーになったらこの美しさを崩したくないからあんまりイジらないかも。

気になる価格はまだ公表されていないが、マツダの某スタッフによれば「ブレンボやレイズといった特別装備の分、Sより価格は高くなりますが、『より多くの方にロードスターの良さを味わっていただきたい』というコンセプトを考えますと……」ということなので、筆者は「S」より25万円高の285万円前後と予想したい。あくまで勝手な予想なので誤解なきよう。

正式発表は2021年内で、発売は22年初頭からになる見込み。特別仕様車だが限定車ではなく、当面は受注期間限定ということでもないらしい。新たなグレードとしてラインナップされるという認識でもよさそうだ。

■マツダ・ロードスター 990S
● 全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm ●ホイールベース:2310mm ● 車両重量:990kg ● エンジン形式:直列4気筒DOHC ● 総排気量:1496cc ● ボア×ストローク:74.5×85.8mm ●圧縮比:13.0 ● 最高出力:97kW(132ps)/7000rpm ● 最大トルク:152Nm/4500rpm ● トランスミッション:6速MT ● サスペンション形式:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡマルチリンク ● ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡディスク ● 車両価格:未定

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著者プロフィール

小泉 建治 近影

小泉 建治

 小学2年生の頃から自動車専門誌を読み始め、4年生からは近所の書店にカー アンド ドライバーを毎号取り…