日産アリアB6 1週間750km走って充電性能と航続距離、電気代を考えた

日産アリア B6 2WD 車両本体価格:539万円 試乗車はop付き
BEVの日産を代表するアリア(Ariya)。66kWhのバッテリーを積んで470kmの航続距離をもつアリアは、優れた電費性能を持つ。でも、BEVの性能はそれだけではない。充電性能も重要だ。1週間、アリアと付き合って、いろいろ検証してみた。

「そろそろBEVもありかな?」と思っている人へ

日産アリア(バッテリー容量66kWh:470km 車両価格539万円)、トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ(71.4kWh:559km FWD 594万円)、ヒョンデIONIQ5(58kWh:498km FWD479万円)といった新世代のBEVが揃い始めた。補助金を受ければ、400万円台での購入も見えてくる価格だから、「そろそろBEVもありかな?」と思っている人も多いだろう。

アリアは「BEVの日産」に社運を賭けた日産の”切り札”的モデルである。2019年の東京モーターショーでのワールドプレミア(アリア・コンセプト)から実際に市販されるまで、思いのほか時間がかかったが、そのぶん商品としての完成度を高めて登場した印象だ。

そのアリアB6を1週間ほど借りだして使ってみた。今回の注目ポイントは、「電費」と「充電性能」「実際の電気代」である。

じつはエントリーグレードのB6

横浜の日産グローバル本社地下駐車場で対面したダークグレーメタルのアリア。

アリアB6(FWD)は、アリアのラインアップのなかで、じつはエントリーグレードにあたる。先行して販売開始となっているのがB6(FWD)で、ほかのグレードはこの夏以降に販売開始となる。

B6(FWD):バッテリー66kWh 470km 
B6(4WD e-4ORCE):バッテリー66kWh 最大430km
B9(FWD):バッテリー91kWh 最大610km
B9(4WD e-4ORCE):バッテリー91kWh 最大580km

バッテリー容量と駆動方式で、B6(FWD)が一番プライスタグが軽いわけだが、外観や内装では他のグレードとの差はない(らしい。まだ登場していないので、わからないが)から、FWD、470kmで問題なければ、これが一番”お買い得”になるわけだ。

日産グローバル本社地下駐車場で対面したダークグレーメタルのボディ色のアリアは、文句なしにカッコよかった。借り出す際に、「アカツキサンライズカッパー以外の色がいいです」と伝えていたので、このボディ色で大歓迎だ。なぜ、アリアのイメージカラーのアカツキサンライズカッパーではダメだったかというと、その前週に同じカラーのリーフe+をお借りしていたから。

全長×全幅×全高:4595mm×1850mm×1665mm ホイールベース:2775mm
トレッド:F1585mm/R1590mm 最小回転半径:5.4m
最低地上高:180mm 車両重量:1960kg 前軸軸重1050kg 後軸軸重910kg

借り出した時点でバッテリーは100%、航続可能距離は「467km」と出ていた。日産グローバル本社がある横浜から首都高速~第三京浜を通って都内へ。さらっと走った電費は7.5km/kWhだった。

アリアB6のモード電費は
交流電力量消費率WLTCモード:166Wh/km
 市街地モード 159kW/km
 郊外モード 170kW/km
 高速道路モード 176kW/km
一充電走行距離(WLTCモード):470km

なかなかわかりづらいが「166kW/km」は、1km走るために166kWのエネルギーを使うという意味だ。言い換えると「6.024km/kWh」となる。

交流電力量消費率から計算すると
アリアB6が搭載しているバッテリーは66kWh。66000(66k)÷167=397.6km。
一充電走行距離から計算すると
470kmを66kWhで走るわけだから470÷66=7.12km/kWh(140kW/km)
となる。

エンジン車の燃費と違って、なかなか難しい。
難しい理由のひとつは、電費の計算が「使った電力量」ではなく、「使った分を充電した際に充電した電力量」で行なうためだ。難しい。つまり電費は、バッテリーに貯めたエネルギーをどう使うかだけでなく、いかに効率よく充電するか、総合力が問われるわけだ。

室内長×幅×高:2075mm×1540mm×1210mm
リーフと違って自然な姿勢で座れる後席。
シートはオプションのナッパレザー製。ナッパレザーシート+運転席パワーシート+前席ベンチレーションシート 30万8000円

急速充電はどうか?

首都高 横浜の大黒PAには最新の急速充電器が6基、設置されている。

次は急速充電性能についてだ。
日産のホームページにはアリアの充電性能についてカタログには

急速充電器50kW(125A)で約65分
急速充電器90kW(200A)で約45分
(急速充電は、バッテリー温度が約25°C、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から、充電量80%までのおおよその時間。特に急速充電の場合、夏季・冬季には充電時間が長くなる場合があります)
とある。急速充電器を連続で65分や45分使うというのは、現実的ではない。いつも、このカタログ表記には違和感を覚える。

アリアが本来持っている急速充電性能は130kWである。この性能をフルに引き出せる急速充電器があれば、10分間で約20kWh充電できるわけだ(130kW以上の高出力の急速充電器なら30分で理論的には65kWh、実際には60kWh程度の充電ができるはず)。
問題は、高出力の高速充電器がないこと。現在あるCHAdeMO対応の急速充電器の多くは30~50kWだ。これだと、30分間で15~30kWh分しか充電ができない。

関東近郊でアリアの急速充電性能を試せそうな場所がある。大黒パーキングエリアとほかならぬ日産グローバル本社だ。どちらも90kWの急速充電器が設置されている。今回はまず、大黒PAを目指すことにした。

90kWで30分間充電できるとすると、理論的には45kWh分が入るはず。もちろん、充電にかかる装置が使う電力、熱で逃げていくロス分などもある。それでもきっと40kWh分くらいになるだろうと勝手に想定した。バッテリーの80%まで急速充電しようと考えると、40kWhはアリアのバッテリーの60%だから、バッテリー残量が20%以下になったところで90kWの急速充電器で30分間充電すれば、20%→80%になる、という目論みだ。

大黒PAに到着したとき、アリアのバッテリー残量は18%となっていた。ここまで339.8km走行して電費は7.1km/kWh。大黒PAの新しい急速充電器は6基。他に充電をしているクルマはなく、アリア1台で充電開始。その後1台のリーフが充電をしたが、新しい急速充電器の性能をフルに発揮できるはずだった。

30分間で充電できたのは29.0kWhだった。

ところが、30分間で充電できたのは29.0kWhだった。バッテリーは66%まで回復。
前週に同じ条件で充電したリーフe+は28.7kWhだったから、ほぼ同じ。リーフe+の充電能力は100kWだ。

どうして40kWh前後の充電ができなかったのか? 後日、日産広報部を通して質問してみた。

「大黒PAの急速充電器はe-Mobility Powerの6台設置でパワーシェアのものかと思いますが、この充電器は連続定格125A、短時間定格(ブースト)で200Aの能力で、充電のシェア状況によって出力がそれぞれ変わってきます。今回は1台での充電と想定して回答いたします。ブースト時間は15分、平均バッテリー電圧360Vで充電と仮定すると、15分ずつで、
360V x 200A x 1/4 Hour + 360V x 125 x 1/4 = 29.2 kWh となります。
温度影響がなくてもご連絡頂いた充電量は妥当であると推察します。また、リーフe+も優れた受け入れ性を持っており、今回の充電では両車とも充電器の性能をフルに使った充電を行なったことで近しい充電量となったと想定しますので妥当だと考えます。アリアの充電性能130kW、リーフe+の充電性能100kWで、リーフのバッテリーもアリアに劣らず性能が良いバッテリーですので、このような結果になったと思われます」

という回答を得た(ありがとうございます)。なるほど、この新型急速器は50kWを超える高出力を15分までに制限する「ブーストモード」を搭載しているのか。

今度は自宅で200V 15Aつまり3kWの普通充電をしてみた。普通充電用の充電口は右側。

今度は自宅に戻って、200Vの普通充電(200V 15Aの3kW)でフル充電をすることにした。
ここでトラブル発生。
ラゲッジスペースのどこを探しても200V普通充電のケーブルがないのだ。前週のリーフにはあった。アリアにないわけはない。だが、ない。

仕方ないので、日産広報部に電話してみると……
「アリアの普通充電ケーブルはオプションなんです。ですから広報車には載ってません」
(!!!

容量も充分のラゲッジスペース。フロア下まで探したが普通充電ケーブルは発見できず。

なんと、リーフには標準装備の普通充電ケーブルが、アリア(とサクラ)にはオプション設定だというのだ。そりゃないぜ。BEVの充電は普通充電が基本、急速充電はテンポラリー、というのがセオリーのはず。だったら、200V 3kWの普通充電ケーブルは当然標準装備にしておくべきだと思う。すでに持っている人には「レスオプション」設定にすれば問題ないはず。
ちなみに、充電ケーブルのオプション価格は
200V (3m)が5万6100円
200V(15m)が6万3910円
100V(7.5m)が5万8960円

というわけで、再び横浜の日産グローバル本社までケーブルを取りにいく。

自宅に着いた時点でバッテリー残量は59%・航続可能距離は280km、平均電費は7.0km/kWh(平均速度51km/h)だった。一晩200V 15Aで充電すると平均電費が6.7km/kWhになっていた。1mmも動いていないのに、平均電費が7.0km/kWhから6.7km/kWhに下がったのは、充電中に消費した補機電力分も電費演算に用いているからだ。

バッテリー100%時の航続距離は「473km」と表示されていた。WLTCモード一充電走行距離(470km)と同じである。優秀だ。

今回1週間、アリアと付き合って765.6km走行した(他のドライバーがそのうち40%を占めた)。平均電費は6.6km/kWh(平均速度48km/h)だった。

満充電で430kmは走れる計算だ。これなら航続距離で不自由することは、ほぼないだろう。

目的地設置をすれば、到着時のバッテリー残量も計算し表示してくれる。便利。

電費 で、いくらなの?

756.6kmを平均電費6.6km/kWhで走行したということは756.6÷6.6=114.6kWhの電力を消費したことになる。
すべてを普通充電、30円/kWhで充電したとすると
114.6×30=3438円
かかったことになる(もっと安く電気を使える契約の人もいるだろうが)。

同じ756.6kmを、たとえばトヨタ・ハリアー(ガソリン2WD)で走行したと仮定すると
ハリアーZ WLTCモード燃費:15.4km/ℓだからレギュラーガソリン170円/ℓで8352円のガソリン代がかかる。

ハリアーHEV(2WD モード燃費22.3km/ℓ)なら5768円のガソリン代がかかる。これを1km走るのにいくらかかるか、で見ると次のようになる。
アリアB6:4.54円/km
ハリアー(ガソリン):11.04円/km
ハリアー(HEV):7.62円/km

「普通充電で充電する限り」BEVはエネルギーコストが安い。ただし、急速充電をメインで考えると、だ。

現在メインである50kWの急速充電器で114.6kWhの充電をしようとしたら、3年契約で月額6600円の「プレミアム20」に加入する必要がある。こうなるとハリアーHEVに費用面で逆転されてしまう。

エントリーグレードのB6はFWD。つまりフロントにモーターが積まれている。モーターは新開発の巻線界磁式。

BEVを選ぶ理由が「ガソリン代より電気代の方が安いから」という人は少ないと思うが、ようやく普及期を迎えたいま、さまざまなケーススタディをしたうえで、「BEVもありかな、次のマイカー候補のリストにBEVを載せてもいいかな」となるのが良いと思う。

日産アリアB6は、航続距離も走りも使い勝手も、現在比較的リーズナブル(補助金ありの前提だが)なBEVのなかでトップクラスだ。しかし、今回いろいろ検証したように「そろそろBEV」と思っている人は、考えること、思いをはせることがまだまだたくさんある。そして、いまアリアやBEVを購入する人が、たくさん考え、発言していくことが、BEVがよりよいカタチで社会に受容さえていくことに繋がるはず。BEVでないとだめな人、BEVが向いている人、BEVだとだめな人、いろんな人がいる。いろいろな自動車が共存共栄できる多様性のある自動車社会になるといいなぁと思いながら、日産グローバル本社にアリアB6を返却しに行った。

じつは、最後に日産グローバル本社の90kWの急速充電器で、アリアの急速充電性能をフルに発揮させるつもりだったのだが、残念ながら到着した時点ですべての充電器が使用されていた。30分は待てない……。

アリアは間違いなくBEVを次の次元に引き上げている。それでもやっぱりBEVは、いろいろまだ難しい……ことがあるだ。

日産アリア B6 2WD
全長×全幅×全高:4595mm×1850mm×1665mm
ホイールベース:2775mm
車重:1960kg
サスペンション:Fストラット式/Rマルチリンク式 
駆動方式:FWD
駆動モーター
形式:AM67型交流同期モーター
定格出力:45kW
最高出力:218ps(160kW)/5950-13000pm
最大トルク:300Nm/0-4392rpm
バッテリー容量:66kWh
総電圧:352V
交流電力量消費率WLTCモード:166Wh/km
 市街地モード 159kW/km
 郊外モード 170kW/km
 高速道路モード 176kW/km
一充電走行距離(WLTCモード):470km
車両本体価格:539万円
試乗車はop付き
オプション:BOSEプレミアムサウンドシステム13万2000円/プロパイロット リモートパーキング+ステアリングスイッチ+ヘッドアップディスプレイ+アドバンストアンビエントライティング+ダブルシャークフィンアンテナ+パノラミックガラスサンルーフ+プロパイロット2.0 57万3500円

BOSEサウンドシステム(10スピーカー)は13万2000円
ナッパレザーシート+運転席パワーシート+前席ベンチレーションシート 30万8000円
プロパイロットリモートパーキング+ステアリングスイッチ+ヘッドアップディスプレイ+アドバンストアンビエントライティング+ダブルシャークフィンアンテン+パノラミックガラスサンルーフ+プロパイロット2.0:57万5300円
オプション合計101万5300円

フロアカーペット(石庭調)は7万4800円のディーラーオプション

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…