ホンダ・プレリュード 全長×全幅×全高:4520mm×1880mm×1355mm ホイールベース:2605mm 車両価格:617万9800円

プレリュードで東京から豊田まで往復した。3日間で810.9km。走り終えて思ったのは、このクルマは果たしてスポーツカーなのか、スペシャルティカーなのか、ということだった。

2025年に5代目の販売終了から24年ぶりに復活して話題をさらった6代目ホンダ・プレリュード。SUV全盛時代に2ドアクーペ(実際は3ドア・ファストバックボディだが)を開発し、実際に市場に投入したホンダの意気や良し、である。

実際、発売直後の国内販売は、受注が販売計画(300台/月)の8ヵ月分に当たる2400台となって、それもニュースとなった。発売から8ヵ月経って、初期の受注分のデリバリーが終わったタイミングだが、まだ街で見かけることは稀。”特別なクルマ”感はまだまだある。

新型プレリュードの開発コンセプトは「Unlimited Glide」

さて、そんなプレリュードをロングドライブに連れ出した。目的地は愛知県豊田市である。そうWRCラリージャパン取材の相棒だ。プレリュードにはクローズドコースや箱根のワインディングロードで少し試乗させていただいたことがある。印象は非常に良く、とくに「S+シフト」による爽快なドライブ感覚は文句なしに愉しかった。さて、ロングドライブではどうか。

シーン1:高速道路こそプレリュードの主戦場だ

高速道路はプレリュードの得意科目だ。

プレリュードは、シャシーにシビックタイプRの技術が投入されている。フロントサスペンションはタイプR譲りのデュアルアクシスストラットだし、ブレンボブレーキも装備する。が、プレリュードはピュアスポーツカーではない。シビックタイプRが本格スポーツで、プレリュードはハイブリッドGTというポジショニングだ。だから、高速道路はプレリュードの得意種目のはず。

シビックとは違うインテリア。シートの出来は非常に良い。

東名高速から新東名に入ると制限速度は120km/hになる。ここでACC(アデプティブクルーズコントロール)とLKAS(車線維持支援システム)をオン。ハンドルに軽く手を触れていれば、プレリュードは滑るように進んでいく。開発コンセプト(Unlimited Glide)にあるような「グライダーのように滑空する気持ち良さ、どこまでも走りたくなる爽快な移動体験」を存分に味わえる(ただし、グライダーに乗ったことはないのだけれど)。WLTC高速道路モードの23.5km/Lを楽に上回る区間燃費をマークする。好印象である。パワートレーンはホンダ得意のe:HEVで、パワーフローをモニターに映し出すと、きめ細かくモーター走行、回生、エンジン直結が切り替わっているのがわかる。が、ドライバーはよほど注意していないと気づかないほどスムーズだ。風切り音もよく抑えられているが、タイヤからの走行音はそれなりだから、ということもある。

タイヤはコンチネンタル PremiumContact 6 サイズは235/40R19

シーン2:成人男性4人で乗ってみたらどうだった?

リヤシートは2名用。とはいえ、通常は手荷物を置いておく場所と考えた方がいい。
後席は足下よりも頭周りがキツイ。
後席を倒せばラゲッジルームはこんなに広くなる。

プレリュードの乗車定員は4名だ。だが、まぁなかなか4名フル乗車する機会は多くないだろう。多い人はそもそもプレリュードを選ばない。今回、名古屋城から豊田市駅まで50km弱1時間弱を4名乗車で走行した。成人男性4人がプレリュードに乗っている姿は、まぁなかなかシュールなのだが、後席に座った人は「つま先が前のシートの下にうまく入る。シートはグッド。ただ、どう座っても頭が天井につかえて、首を傾けないといけないのはしんどかった」「後席に1名ならけっこう長時間でも大丈夫かも」という感想を述べていた。

シーン3:三河湖SSで見えたプレリュードの得意・不得意

今度は、ワインディングロードだ。ラリージャパンのDAY 1にSSが設定されていない方面を選んで走ってみた。広めのワインディングを流すとき、プレリュードは本当に気持ちがいい。ずっとドライブモードは「GTモード(ノーマル)」にしてきたが、ここで「SPORT」に変更し、いよいよ「S+シフト」ボタンを押す。といっても、何度も言うけれど、プレリュードはスポーツカーではない。「気持ち良く流す」ときに真価を発揮する。コーナー手前でパドルを引けば、「フォン、フォン」と快音を発してシフトダウンフィールを楽しませてくれる。

自分が思ったとおりのラインを滑るようなスムーズさでトレースしているときが、プレリュードの真骨頂だ。

そろりそろりと走った。トップラリーストはここを全開で走るのであろう。信じがたい……。

広い道から一本脇道に逸れてみる。だいぶ道が狭い。標識に「三河湖」という文字を見つけたので、そちらへステアリングを切る。DAY 3に確か「三河湖SS」があったはず(SS16&SS20)、と思いながら三河湖を目指す。もちろんコースは閉鎖されていない。道はどんどん狭くなる。

あとからSSのコースマップを見ると、走ったルートの一部はまさにSSに含まれていた。プレリュードのハンドリングの良さはここでも活きるのだが、いかんせん車幅1880mmはコースに対してちょっと広すぎで、本当に慎重にゆっくり走るしかなくなった。前から対向車が現れたら間違いなく行き違いはできないほどの狭さ。キモを冷やしつつ、ゆっくり走った(20km/hくらい)。

「とはいえ、ラリードライバーはここをペースノートを頼りに全開で走るんだよな。頭のねじが一本、いや何本も外れてないと、できないよな」とトップドライバーの驚異的なドライビングを想像しながら走った。

「しかもRally1マシンは、1880mmよりももっと車幅がありそう」と思っていた。あとで調べたら、GRヤリスRally1のボディサイズは
全長×全幅:4225mm×1875mm
ホイールベース:2630mm
だそうで、プレリュード(1880mm)とほぼ同じだった。いずれにせよ、狭くてひとつ間違ったらコースオフするようなところでコンペティションをするラリードライバーに敬意を表するしかない。と同時に、こういうコースはプレリュードには向いてないことも、はからずも再確認できた。

プレリュードの最小回転半径は5.7mで、小回り性は高くない(ちなみにシビックタイプRは5.9m)。

三河湖の湖畔。美しい場所だ。

3日間で810.9km走って燃費は21.7km/Lだった。これだけの走りでこの燃費というのは、非常に優秀(しかもレギュラーガソリン)だ。

プレリュードに求めたい「スペシャル」とは何か

エンジン
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:LFC
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
燃料供給方式:DI(筒内燃料直接噴射)
最高出力:141ps(104kW)/6000rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
モーター
H4型交流同期モーター
最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000rpm

さて3日間、プレリュードと付き合って、その良さをたっぷり味わえた。が、同時に、600万円オーバーという価格については少し考え込まされた。プレリュードといえば、やはり「スペシャルティカー」「デートカー」であってほしい。617万9800円というプライスタグを掲げていたら、おいそれとは手が出せない。シビックタイプR譲りの走行性能はなくてもいいから、肩の力を抜いて乗れるスタイリッシュなクーペであってほしいと思った。

新型プレリュードと歴代モデル。大ヒットした3代目は後列右端だ。

大ヒットした3代目プレリュードの価格はプレリュード2.0Si 191万7000円。同時期のシビックSiの価格は138万5000円だった。

現在のシビック e-HEV EX 440万3300円で、3代目プレリュードと当時のシビックの関係を現行モデルに持ち込むと、プレリュードは609万5000円になる計算だ。だから、シビックとの関係で言えば新型プレリュードの価格はけっして高くはないのだ。要はシビックがかつてのシビックのポジションではなくなって上級移行しているということなのだろう。

電動パワーシートもボンネットのダンパーも重量増を嫌ったから装備しなかったのだろう。けれど、やっぱり600万円オーバーの美しいクーペなら、必要だと思うのだが。

新型プレリュードがいまの車両価格のままでいくなら、シートはパワーシートにしてほしいし、ボンネットにもダンパーがあってほしい。インテリアももっとスペシャルであってほしい。

誰もいない林道にプレリュードを停めて撮影。新緑にプレリュードはよく似合う。

美しいスタイル、先進装備、高い走行性能……プレリュードの素材としてのポテンシャルは高い。でもいつの時代もプレリュードは「スペシャル」であってほしいと思う筆者としては、「スペシャル」の意味は「シビックタイプR譲り」ではないように思った。

20~30代が少し背伸びをすれば購入できる”デートカー(死語だけど)”としてのプレリュードで、シティポップをBGMにしながら走る……そういうプレリュードもあってほしいと思う。プレリュードは速さを競うクルマではなく、人生を少し豊かにしてくれるクルマであってほしい。

そんなことを考えながら、帰路の東名高速で再びS+シフトのパドルを引いた。

ホンダ・プレリュード
全長×全幅×全高:4520mm×1880mm×1355mm
ホイールベース:2605mm
サスペンション:Fマクファーソン式/Rマルチリンク式
エンジン
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:LFC
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
燃料供給方式:DI(筒内燃料直接噴射)
最高出力:141ps(104kW)/6000rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
モーター
H4型交流同期モーター
最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000rpm
WTLCモード燃費:23.6km/L
市街地モード20.6km/L
郊外モード26.1km/L
高速道路モード23.5km/L
車両価格:617万9800円