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ハッカペリッタ R3/R3 SUV ノキアンタイヤのスタッドレスタイヤ:フィンランドの本気タイヤは氷路で怖くない

  • 2018/09/28
  • Motor Fan illustrated編集部
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ノキアンタイヤのスタッドレスモデル「ハッカペリッタR3/R3 SUV」を試す機会を得た。そのインプレッションとともに、このニューモデルがどのような特質を備えているのかをご紹介しよう。
FIGURES:NOKIAN TYRES PHOTO:篠原晃一(Shinohara Koichi)

 フィンランドのタイヤメーカー・ノキアンタイヤがスタッドレスタイヤ「ハッカペリッタ」をフルモデルチェンジした。R3/R3 SUVと称する新モデルは、先代にあたるR2/R2 SUVに対してすべての性能を上回ることを目的とし、とくにウェット路のブレーキング性能、転がり抵抗性能、ドライ路におけるハンドリング性能、そして氷上路でのグリップ性能を著しく高めている。

 スタッドレスタイヤに限らず、パフォーマンスを向上させるには「形状の工夫」あるいは「素材の代替」が必要だ。ハッカペリッタR3/R3 SUVにおいても、数多くの技術が盛り込まれている。

形状の工夫と、そのねらい

 ドライバーがウィンタータイヤに求める性能はさまざまあろうが、そのなかでも多くのひとがアイスグリップ性能を挙げるだろう。極寒の環境下、毎日降り積もる雪が昼夜の温度変化で融解と凍結を繰り返し、氷の厚さが増していく。さらにクルマがその上を通ることでどんどん路面はツルツルに磨かれていく。その上に新雪がまたもや降り積もり、一見すると雪道、だけど通ってみたら氷盤──当方が雪道に慣れていないということを差し引いたとしても、歓迎したいシチュエーションでないことは確かである。

 なぜ嫌かといえば、滑るからである。その場合、大きく二通りが考えられる。グリップしないという状況と、トレッド面が接地していないという状況である。

 グリップしない状況を打破するためには、トレッド面が氷を引っ掻くような形状にすればいい。大きなブロックでどしんと接地するのではなく、同じ面積でも溝を多く刻んで相対的にエッジ部を増やすことで、氷をよりつかみやすくするわけだ。ハッカペリッタR3/R3 SUVでは、トレッド面の各部にさまざまな溝──サイプを施すことでアイスグリップ性能を高めている。

R3におけるサイプ処理が施された部位。これだけの数が刻まれ、しかも種類もさまざまだ。

 しかしサイプを刻むと、今度はブロック全体としての剛性が保てない。加えて、サイプ中の空気が走行にともなうブロック変形で振動することで、騒音の発生源にもなってしまう。そこで、ハッカペリッタR3/R3 SUVは、サイプの刻み方を単なる縦溝にとどめず、3次元形状で隣同士が重なり支え合うような形状とした。こうすると、溝の体積確保とブロック剛性向上の両立が図れるわけだ。

サイプの工夫の例その1。R3はR2にはなかったセンターグルーブを創設、左右対称形状のサイプにより、倒れ込みを最小限に抑える。
サイプの工夫の例その2。ショルダーブロックには櫛状のサイプを施した。
サイプの工夫の例その3。ショルダーはコーナリング時に重要な役目を果たす部位。そこで3次元形状のサイプとし、ハンドリングの正確性を高めている。

 もうひとつの「トレッド面が接地しない状況」とは、氷盤に水膜が張っているシチュエーションを想像してほしい。トレッド面は路面に食いつき変形することでグリップを確保するのだが、路面接地の瞬間に排水が追いつかないと、タイヤが路面から浮いた格好になってしまう。ハイドロプレーニングという現象をご存じの方もいらっしゃるかもしれない、その状況である。

 そのように陥らないよう、ハッカペリッタR3/R3 SUVに盛り込まれた技術が「ポンプサイプ」である。トレッド面に比較的大きなサイプを刻むことで、接地した瞬間にその空間が水を受け入れ、接地性を高めるという理屈だ。路面から離れると保持した水は外に放出され、次の接地に備えるという仕組みである。

トレッド中央部には、3次元形状のポンプサイプを施した。
上の図版における変形六角形の部位がポンプサイプ部。図に示すように、接地時に素早く吸水し、ハイドロプレーンを防ぐ。

 これとは別に、ウェットグリップ性能の向上も、ハッカペリッタR3/R3 SUVでは盛り込まれている。先述のように、グリップというのは接地時に変形し路面の凹凸に追従することで得られる性能だが、ウェット路、つまり水が張っている路面は温度が低く、ゴムの変形が抑制されてしまう。かといって、ウェット路における変形を積極的に追求すると、今度はドライ路における高温下での変形が進み過ぎ、必要以上のグリップ、つまり燃費の悪化を招いてしまう。
 これを抑制するための手段がコンパウンドの改良、つまり冒頭で述べた「素材の代替」である。あいにく、フィンランドから来日したエンジニア氏に「低温下での変形促進にはどのような手段がとられているのか」と問うても明確な答えは得られなかったが、一般的な手法ではシリカと分散剤を用いて低温性能を高めるのが常道である。機会があればぜひ、詳しくお訊きしてみたい。

コンパウンドの改良とともに、ハッカペリッタシリーズが採用するクライオ・クリスタル3コンセプトも継承。特殊な樹脂のピースをゴム内に練り込み、爪として氷雪にグリップする仕組み。

氷の上で、走る曲がる止まるを存分に試す

 理屈はわかった。では実際はどうか。歩くのもままならないくらいにピカピカに磨き込まれた分厚い氷盤で、ハッカペリッタR3/R3 SUVを試す機会を得た。走行シーンとしては、カッチカチに凍った氷路に粉雪が積もっている状態である。

 用意されたのは以下のクルマ。

アウディ・A3 1.8 TFSI quattro(R3/R2装着)
 ──205/55R16【空気圧:前250/後230kPa】
VW・ゴルフ 1.2 TSI(R3装着)
 ──205/55R16【空気圧:前200/後200kPa】
ニッサン・エクストレイル ガソリン車 4WD(R3 SUV/R2 SUV装着)
 ──225/65R17【空気圧:前230/後210kPa】
シボレー・コロラド(R2 SUV装着)
 ──265/65R17【空気圧:前240/後240kPa】

 A3とエクストレイルはR2/R2 SUV装着車が用意されるので、どれだけキャラクターが異なるのかがわかりやすい。とくにこの2車種に絞って試乗してみた。ゼロ発進、少し進んでストップ。再発進してスラロームというコース設定である。

 まずR2@A3。現代のクルマには必須となったESC(横滑り防止装置)のおかげで、発進時のスピンは最小限に抑えられてクルマは進み始める。停止ポイントを決めてそこにめがけてクルマを停めようと試み、ABSを効かせながら停車。そしてスラローム。パイロン間が比較的広めにとられていて会場も広いので、少しスピードを出して旋回してみる。制御が効いていなかったら横っ飛びしているだろうな……などと思いながら走了。

 続けてR3@A3。すると、発進時のしっかり感が強いことに気がつく。あ、グリップしているなという感触だ。当然、その後の制動時にもタイヤの剛性感が伝わってくる。同じ速度から同じポイントでブレーキを踏んでみても、止まるまでの距離が短いのである。

 クルマを代えてR3 SUV@エクストレイル。A3に比べて重くなっているだろうな──と思ったら70kgしか違わなかった。ただし重心は高いので感覚は大きく異なるだろう。センターリブがより広くとられているトレッドデザインにより、さらに剛性感は高め。しっかりとした走行感覚と操舵感覚が際立ち、重心が高く重いクルマを氷上で動かしているという不安がすぐに払拭されるのがうれしい。

 誤解してほしくないのだが、R2/R2 SUVの性能も非常に高い。とくにR2の場合は、本試乗会に先立つ2017年の試乗において高速道路を含むドライ路の走行も含めた試乗だったので、ドライ〜ウェット〜スノー/アイスのグリップ性能のシームレスさに舌を巻き、振動騒音の小ささに感嘆したものである。ぜひ次回はステージを変え、ノキアンタイヤが誇るR3/R3 SUVをドライ路やウェット路性能を充分に堪能してみたい。

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