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  • 2017/07/28
  • 遠藤正賢

【スイフトハイブリッド試乗】軽量かつダイレクトな走りは現時点でのワインディングベスト!

自動MT「AGS」搭載パラレル式ハイブリッドは街乗りよりもスポーツ走行にメリット大

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スズキ・スイフトハイブリッドSL
今年1月に発売されたばかりの新型4代目スズキ・スイフトに、早くも本格ハイブリッドモデル「ハイブリッドSG」「ハイブリッドSL」が追加された! シングルクラッチ式5速自動MT「AGS(オートギヤシフト)」を組み合わせるスズキ独自のパラレル式ハイブリッドシステムを、ソリオに続いて搭載したスイフトハイブリッドの走りとは?
スイフトハイブリッドのパワートレイン。駆動用バッテリーは荷室床下に搭載される

スズキには現在、大きく分けて2種類の「ハイブリッド」が存在する。

ひとつは、ISG(モーター機能付き発電機)と12Vのリチウムイオンバッテリー、アイドリングストップ車用鉛バッテリー、CVTを組み合わせ、ISGは減速時に主に充電、加速時にモーターアシストを行う、「S-エネチャージ」をルーツとする「マイルドハイブリッド」。

スイフトハイブリッドのシステム構成図

そしてもうひとつが、この「マイルドハイブリッド」にほぼ上乗せする形で、10kW・30Nmの駆動用モーター「MGU(モータージェネレーターユニット)」と減速機、100V・28セル・4.4Ahのリチウムイオン式駆動用バッテリーとインバーター、シングルクラッチ式5速自動MT「AGS(オートギヤシフト)」を組み合わせたパラレル式ハイブリッドシステムだ。

こちらは単に「ハイブリッド」と呼ばれ、昨年11月発売のソリオハイブリッド、そして今回7月12日に追加されたスイフトハイブリッドに採用されている。

このスズキ流「ハイブリッド」が持つ最大のメリットは、軽量コンパクトであること。他社のハイブリッドの多くが通常のガソリン車に対し100kg前後の重量増を余儀なくされているのに対し、モーターや駆動用バッテリーも大容量とせず、トランスミッションも5速MTをベースとすることで、ソリオとスイフトは装備レベルが同等の「マイルドハイブリッド」搭載車に対しわずか40kgのプラスに留めている。

「マイルドハイブリッド」を搭載するスイフトハイブリッドRSのラゲッジルーム
リチウムイオンバッテリーが搭載され床面が上がったスイフトハイブリッドSLのラゲッジルーム

また、駆動用バッテリーは荷室床下に収まるようコンパクトに設計されているため荷室容量への影響が少なく、「マイルドハイブリッド」搭載車よりも荷室床面が10cmほど高い程度。そして、エンジンのトルクはAGSを介し、MGUのトルクは直接ディファレンシャルへと伝えられるためトルクの伝達効率が高く、1,000kg未満に抑えられている車重と相まってレスポンスの良い加速が得られるのも魅力だ。

AGSシフトアップ時のモーターアシスト概念図

なお、通常のガソリンエンジン車にシングルクラッチ式の自動MTを組み合わせた場合、シフトアップ時にトルク抜けが発生しギクシャクした挙動が出てしまう傾向にある。だがスズキの「ハイブリッド」では、クラッチが切り離されエンジントルクが伝わらない状態になっている間にモーターアシストを加えることで、トルク抜けによる挙動変化を抑えている。

スイフトハイブリッドのAGSシフトアップ制御概念図

そして、スイフトではソリオに対し、シフトアップ時にクラッチを切り離す時間を短縮。パドルシフトを備える上級グレード「ハイブリッドSL」でパドルシフトを使用した時はさらに変速時間を短縮することで、よりダイレクトな加速フィールを与えている。

ブルーのメーターとシフトノブが与えられた運転席まわり

では、実際の走りはどうか。試乗したのは上級グレードの「ハイブリッドSL」で、コースはかつてソリオハイブリッドでも走行した、アップダウンの激しいワインディングを交えた郊外の一般道。まず他車の流れに合わせて走らせてみると、変速時にもトルク抜けやシフトショックをほぼ感じることなく、いたってスムーズに加速することができた。

運転席右下に備えられているエコモード切替スイッチ

なお、スイフトハイブリッドにはソリオハイブリッドと同じく、走行モードが「標準モード」と「エコモード」の2種類用意されているが、これを標準モードからエコモードに切り替えても、平坦な道ではややアクセルレスポンスが鈍くなる程度で、スムーズな加速フィールは変わらず。運転せず同乗し、特に意識していなければ、シフトアップしてもそれに気付かないほどだ。

ただし、上り坂や追い越しなどで力強く加速させるべくアクセルを踏み増していくと、状況は一変する。高回転を多用するようになるため、シフトアップ時のエンジン回転の落ち込みが大きくなり、MGUによるモーターアシストがその際のトルク抜けを補いきれなくなるため、同乗者にも体感できるレベルでピッチングが生じてしまう。

上級グレード「ハイブリッドSL」に装着されるステアリング裏のパドルシフト

だが、パドルシフトを用いたマニュアルモードに切り替えると、変速時間が短縮されトルク抜けは少なくなる一方でシフトショックは増大するため、やはりスムーズとは言いがたい加速になるというのが率直な印象だ。

そしてエコモードで走行すると、特に上り坂で低回転域からアクセルを踏み増した場合は、モーターアシストが入らずAGSもシフトダウンしないため加速がモタつく傾向にある。これはソリオハイブリッドを試乗した際にも感じられたため、両車ともエコモードの制御マップがより積極的にモーターアシストするようチューニングされることを期待したい。

「ハイブリッドSL」に装着される16インチアルミホイール。タイヤは185/55R16 83Vのブリヂストン・エコピアEP150

スイフトといえば、軽快なハンドリングとしなやかな乗り心地こそ最大の魅力だが、それはこの「ハイブリッド」でも全く損なわれていない。40kgの重量増は大半が荷室床下の駆動用バッテリーによるものだが、前後重量配分の面ではむしろ有利に。「ハイブリッド」専用のボディ補強は行われておらず、サスペンションもリアの重量増に合わせて若干固められた程度のため、ガソリン車と同様に路面の凹凸をキレイにいなしてオンザレールでコーナリングすることが可能だ。

そしてパドルシフトを使えば、スムーズさよりもメリハリのある加減速が求められるワインディング走行では、前述の欠点が逆に長所となる。MT車と同様にダイレクトかつレスポンスの良い加速と変速、そして的確なギアの選択ができるため、CVTを搭載するマイルドハイブリッド車よりもコントロール性は高い。さらにモーターアシストという過給も加わるため、ホットバージョン「スポーツ」が設定されていない時点では、最もスポーティな走りが楽しめるモデルと言っても過言ではないだろう。

初めて「ハイブリッド」を採用したスズキ・ソリオハイブリッド

スイフトハイブリッド、ソリオハイブリッドとも、JC08モード燃費は32.0km/L。マイルドハイブリッド車に対し約2割燃費が良い、最もエコなモデルとして販売されているが、このAGSを組み合わせたスズキ独自のパラレル式ハイブリッドシステムは、燃費よりもむしろ走り、特にワインディング走行時の加減速やハンドリングにおいて、メリットを最も大きく見いだせる。

マイルドハイブリッドとCVTを搭載するスズキ・スイフトハイブリッドRS

だがそれは、メカニズムを正しく理解し、その長所を存分に引き出して走ることができるクルマ好きでなければ享受できない。特にソリオでは大多数を占める、クルマを単に日常の足として使っているユーザーには、少なくとも現時点ではAGSの欠点ばかりが目に付き、運転しにくく乗り心地の悪いクルマと捉えられる可能性が極めて高い。そういう意味では、マイルドハイブリッドとCVTの組み合わせの方が万人向きと言える。

このシステムが持つメリットを誰もが得られるものとするためには、制御の熟成はもちろんMGUの容量アップやAGSの多段化などで、自動MTが嫌われる最大の原因であるシフトアップ時のトルク抜け・シフトショックを抜本的に低減する必要がある。それはスズキならば、決して不可能ではないはずだ。

スズキ・スイフトハイブリッドSL
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