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内燃機関超基礎講座 | F1のエキゾーストマニフォールドはどのように設計しているか

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F1のエキマニなら排ガスも騒音も耐久性も勘案しなくていい——というのは大きな間違いなようだ。さまざま折り合いをつけ、最大限の性能を発揮するための設計の要諦をエンジニアに聞いた。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)
*本記事は2010年に執筆したものです。

 F1のエキゾースト・マニフォールドの設計コンセプトは、シャシー側設計者の要求とすり合わせて詰める。シャシー側としては空力性能を追求したいので、排気系のスペースはコンパクトにしたいと考える。排気系設計側は、与えられたスペースの中で性能を犠牲にしないよう努力する。

 開発エリアは下に示すように4ヵ所に大別できる。プライマリーパイプやテールが短く、尖ったコレクター形状からは、排気抵抗を少なくする意図が感じられる。すなわち、高回転重視。一方、長いプライマリーパイプは中回転重視型と判断できる。V10からV8に移行してからは、単純に、排気抵抗を下げるために短いプライマリー~テールを採用すれば性能は上がるという図式が通用しなくなったという。

 エンジンの性能を最大限発揮させる役割を担いつつ、車体側(主に空力)の要求を満足させる形状を求められるのが現代のF1用エキゾースト・マニフォールドである。市販車と違って触媒を取り付ける必要はない、消音器も無用。となれば、「性能向上」だけを念頭に開発に没頭できるではないか、と考えるのはアウトサイダーならではの無責任な発想。「性能向上を実現する形状を開発した」としても、それが空力や機械部品に悪影響を与えるようでは日の目を見ない。あくまで車両のトータルパッケージが優先される。

「時間との戦い」と実情を説明するのは、ホンダF1のエンジン開発責任者を務める角田哲史氏(株式会社本田技術研究所四輪開発センターMSブロック主任研究員)で、「シミュレーションを駆使して設計し、試作品でテストを行なって効果を確かめ、実戦投入するのが理想ですが、競争がありますから、ある程度で見切りを付けてモノ作りに取りかかるのが現状。アカデミックな開発とはほど遠く、結構泥臭いことをやっています」と話す。

 F1は3ℓ・V10に替わり、2006年から2.4ℓ・V8エンジンの使用が義務付けられた。2007年からは最高回転数の上限が19000rpmに制限され、エンジン本体の開発が3年間凍結されている。つまり、開発できる領域は吸排気系のみ。これまではシーズン途中でボアを広げるような大がかりな設計変更も可能だったが、そうした労力を吸排気系のみに注入することになった。開発のエネルギーを集中させることで、「やっとわかるようになってきた」事象もあるという。排気系はまだまだ未開の領域なのである。

 F1用エキゾースト・マニフォールドの開発領域は4つのパートに分かれる。排気ポートからコレクター(集合部)までの「プライマリーパイプ」と、4本のパイプが集まる「コレクター」。そして、コレクターから後ろの「テール」。プライマリーパイプの途中には、反射波を生んで排気の引っ張り出し効果を得る「拡管」が設けられている。拡管の位置や数、あるいは有無も性能を左右するノウハウだが、このあたりも近年急速に解明が進んできた領域だ。テール末端のカットもまた、解明が進んできたエリア。垂直に落とすのが一般的だが、斜めにカットすると脈動の開放端がいろんな長さで切れるので、特性がダルになる。それを利用してドライバビリティに振ることもできるし、逆に脈動をピーキーに振ることもできる。ただし、排気系のパッケージが変われば開発はイチからやり直し。排気に関する原理原則が未解明であるがゆえである。

 基本的には、吸排気バルブの開閉タイミングがエキゾースト・マニフォールドの設計コンセプトを支配する。現行規則では、エンジン内部の変更と連携が取れないだけに、排気系は「ファインチューニングの域を出ない」と角田氏は語る。

 F1エンジンのクランクシャフトは全エンジンコンストラクター、180度ごとのサイクルで燃焼させるシングルプレーンを採用する。振動が釣り合うダブルプレーンに対し、シングルプレーンは左右バンクで見ると慣性力が釣り合わず振動に課題を残す。その半面、吸気・排気のパルスが等間隔になるため脈動効果を得やすい。片バンクだけを見れば、1→3→4→2の順で点火する直4エンジンと同じだ。

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