若き作家の“虚無”を描く衝撃作

名匠レオス・カラックス監督の代表作にしてフランス映画史が誇る傑作『ポーラX』が、4Kレストアの美麗映像でスクリーンに帰ってきました。本作は、将来を訳された若き作家が謎の女性と出会ったことから執筆活動もままならなくなり、金も地位も婚約者も捨ててと背徳的な愛に溺れるなかで精神を病んでいく物語です
主人公のピエールは、フランス・ノルマンディーの城で裕福な母と暮らし、将来を約束された若き作家として何不自由ない生活を送っている青年。美しい婚約者リュシーとの結婚も控え、全てが順風満帆に見えました。しかしある夜、彼は森の中で謎めいた放浪の女性イザベルと出会ったことで強い衝撃を受け、霧がかったようなグレーな生活に突き進んでいき……。
そんなストーリーからはやや意外にも感じますが、ピエールの移動手段は主にバイク。タンクは白っぽく塗装されボコボコながら、じつは70年代のNortonコマンド850という、いま実働車を買おうとすれば数百万円はくだらないであろう名車です。さらにピエールが着るベージュのスーツと白いフルフェイスと美しくマッチしていて、これはカラックスの色彩へのコダワリでしょう。そしてバイクは、優男に見えるピエールの向こう見ずな内面を表す小道具としても効力を発揮しています。
かたや車の登場は“通過する”と表現したくなるほど淡白。90年代のシトロエンのエグザンティアやBMWクーペ(3シリーズ)など比較的新しい車両はチラリと映すだけで、ストーリーにもほとんど絡んできません。それと対象的にレアな旧車はストーリーに直結していて、ピエールが物語終盤に乗るバンは80年代のプジョーJ9! さらに、ついでとばかりに70年代ルノーのフルゴネットもチラりと映すなど、カラックスの嗜好のダダ漏れぶりにクルマ好きならばニヤリとしてしまうことでしょう。

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