お便り Fフォークのインナーチューブが黒いのってどういうこと?
投稿者:栃木県/サンボさん
チェンの回答
スーパースポーツモデルやレース用マシンで見るフロントフォークのインナーチューブが黒くなってるやつのことだね。通常インナーチューブの表面は硬質クロムメッキがされていて、見た目は銀色。黒くなっているのは、そのその上から「DLC(Diamond Like Carbon)」と呼ばれる特殊コーティングが施されている場合がある。
DLCとは、その名の通り“ダイヤモンドのような性質を持つ炭素被膜”のこと。1/1000mm単位という極薄の皮膜ながら、非常に高い硬度と優れた摺動性を両立しているのが特徴だ。
ちなみに、黒いインナーチューブ=全部DLCというワケではない。世の中にはTiNコートやカシマコートなど、見た目が近い表面処理も存在する。ただ近年の高性能サスペンションでは、低フリクション化や耐久性アップを狙ってDLC処理を採用するケースが増えているのも事実。MotoGPマシンっぽい“黒フォーク”には、ちゃんと意味があるんだ。ちなみにチェンがレースで乗っているマシンのフロントフォークにもDLCコートをしているよ。

チェンの愛車(4スト250ccのモタード仕様)のフロントフォーク。サスペンションの動きを滑らかにするのもさることながら、モタードレースという特性上、オフロード区間も走る事も多く、キズ防止の狙いもある。勝つために潤滑と固さはとても大事なんだ。
“滑り”と“耐久性”を両立するハイテク技術
DLC最大のメリットは、やはり圧倒的な低摩擦性能。フロントフォークは、路面ギャップを吸収するたび内部のインナーチューブが激しく上下しているため、摺動抵抗の少なさがサスペンション性能へ直結する。
動き出しがスムーズになれば、小さな入力にもサスペンションが反応しやすくなり、接地感や乗り心地の向上にもつながる。さらに被膜自体の硬度が高いため、飛び石や砂による細かな傷にも強く、オイル漏れの原因となる“縦キズ”防止にも効果的だ。また耐食性にも優れていて雨天走行や長期使用でサビやすいインナーチューブには相性抜群。見た目だけでなく、機能面でも意味がある技術なんだよね。

MotoGPマシンや高級スポーツモデルなどで採用例が増えているDLCコーティング仕様のインナーチューブ。黒い見た目のインパクトだけでなく、低フリクション化による作動性向上や、高硬度による耐摩耗性アップなど機能面にもメリットがある。出典:Technix公式サイト

一般的なフロントフォークのインナーチューブは、このような銀色の硬質クロームメッキ仕様が主流。耐久性や防錆性に優れる一方、近年ではさらに摺動性を高めるためDLCなど特殊コーティングを採用するモデルも増えている。PHOTO:富樫秀明
サスペンションだけじゃない! エンジン内部や工具にも採用
DLCコーティングはサスペンションだけの技術ではない。実はエンジン内部のカムシャフトやピストンピンなど、摩擦が発生する摺動パーツにも広く使われている。さらにバイク以外の世界では、ドリルなどの切削工具にも採用されるほど。つまりDLCとは、“滑り”と“耐久性”を極めたい世界で重宝される表面処理技術なのだ。
ただし弱点もある。それはコスト。純正インナーチューブへ施工する場合、1本でもかなり高価になるケースが多く、気軽に試せるチューニングではない。とはいえ、見た目のレーシーさに加え、サスペンション性能や耐久性アップまで狙えるのだから、バイク好きが惹かれるのも納得。黒いフォークを見ると「おっ!」となってしまうのは、ライダーの性なのかもしれないね。

DLCコーテッド インナーチューブ
3万5354円/1本
Technixからリリースされている コーティング済みのインナーチューブ。下処理などの費用が軽減できコストパフォーマンスにも優れている。
メーカー公式サイトはこちら
まとめ
●硬い!低摩擦! 高耐久!
●良いことづくめだけどコストがネック
※この記事は月刊モトチャンプ2023年5月号を基に加筆修正しています。
