ホンダ・スーパーカブ110Lite……341,000円

カラーリングは、タスマニアグリーンメタリックとバージンベージュの2種類。ちなみにスタンダードのスーパーカブ110はそれらに加えて、グリントウェーブブルーメタリックとクラシカルホワイトを設定。

新基準原付の必然性

昨今の二輪の世界で話題になっている新基準原付に対して、正直言って僕はあまり興味が持てなかった。

もちろん、排出ガス規制の強化で原付一種≒50ccモデルの生産が難しくなってきたことを考えると、ビジネスユースを含めて多くの人が気軽に乗れるという意味で、原付一種に相当する新基準原付(最高出力は5.4ps以下で、交通ルールは原付一種に準じる)の需要はあるだろう。

でも新基準原付の一番手として、2025年末からホンダが発売を開始した4台の価格は、決して安くないのである。具体的な事例としてスーパーカブ110の数字を記すと、スタンダードの35万2000円に対して、新基準原付のLiteは34万5000円(Liteの先代に当たるスーパーカブ50の最終型は24万7500円)。

2台の部品はほとんど共通なので、その設定に異論を述べるつもりはないけれど、だったら小型二輪免許を取得して、スタンダードを買ったほうがいいんじゃないだろうか?

灯火類はヘッドライトのみがLED。フロントカバーエンブレムの下部には、Liteのデカールが存在。

ところが、少し前に50~125cc以下の原付二種が運転できる、小型二輪免許の取得費用を調べた僕はビックリ。今どきの相場は、普通自動車免許の所有者でも10万円前後、何も免許を持っていない場合は15万円以上なのである。

となれば、原付一種免許(費用は9000円前後で、1日で取得可能)や普通自動車免許で運転できる、新基準原付に魅力を感じる人は少なくないはずだ。

などということを考えたうえで、今回の1000kmガチ試乗ではスーパーカブ110Liteを取り上げることにした。なお既存の原付一種に相当するLiteで1000kmと言うと、大変そうなイメージを持たれがちだが、過去にクロスカブ110やハンターカブCT125などで1000kmを走っている僕は、あまり心配はしていなかった。

4.8psでも非力さは感じない

スーパーカブ110Liteの最高出力と最大トルクは、既存のスーパーカブ50を完全に上回っているだけではなく、いずれも発生回転数が低い。なおスーパーカブ110Liteの車体はスタンダードと共通で、ディメンションもまったく同じ。

ここからはインプレ編で、市街地の足として一週間ほど使ってみての印象は、“全然アリじゃないか‼”だった。

僕が最初に感心したのはパワーユニットで、前任に当たるスーパーカブ50より全域で明らかに力強いうえに、最高出力と最大トルクに勝るスーパーカブ110のスタンダードと比較しても、体感的に露骨な非力さは感じないし、パワーを抑えたことによる不自然さは微塵もない。

カブシリーズの空冷単気筒エンジンは、かつてはニアスクエアかショートストロークが定番だったものの、最近はロングストロークが定番。現行モデルは、110が47×63.1mmで、125は50×63.1mm。

もちろん、絶対的な速さはスタンダードのほうが上である。

とはいえ、低回転域のトルクが充実していて、理想のギアより1段高い状態でスロットルを開けてもギクシャクする気配がなく、場面によっては交通の流れをリードできるエンジン特性は、かつてのスーパーカブ70にちょっと似ていて、僕はその資質に好感を抱いたのだ(ただし、スーパーカブ70がその気になれば70km/h以上をマークできたのに対して、速度リミッターを装備するスーパーカブ110Liteの最高速は60km/h弱)。

なおスーパーカブ110Liteが搭載するパワーユニットの専用部品は、エアクリーナーボックス、インテークコネクティングチューブ、ECU、スパークプラグくらいで、カムシャフトや排気系、ギアレシオなどはスタンダードと共通。

その事実をどう感じるかは人それぞれだが、コストアップを抑えるべく、必要最小限の変更でナチュラルな特性を実現したことは、賞賛に値すると思う。

余談だが、最近の僕は250cc以下の新型車を試乗すると、諸元表の最高出力よりパワフルと感じることが少なくない。その主な原因はおそらく、燃料噴射と点火時期の制御が一昔前より緻密になったことで、過去に当連載で取り上げた17.3psのホンダCB200Xや16.7psのヤマハWR155Rなどと同じく、僕は4.8psのスーパーカブ110Liteにも予想外のパワフルさを感じたのだ。

と言っても、燃料噴射と点火時期の制御が一昔前より緻密になっていることは、250cc以上のモデルにも通じる話だろう。ただしその恩恵は、もともとのパワーが控えめな250cc以下のほうがわかりやすいようである。

信頼性や安全性は、既存の50より上

続いては車体の話で、当初の僕は車格に大柄さを感じるんじゃないかと危惧していたのだが、まったくそんなことはなかった(前記の諸元表を見ていただければわかるように、既存のスーパーカブ50とスーパーカブ110/Liteの車重・軸間距離の差はごくわずか)。

と言っても、2011年以前の鉄カブ(シリーズ最終型は、軸間距離が1175mmで、車重は79kg)のオーナーが乗ったら、それなりの大柄さは感じるはずだが、初めてカブシリーズに接するライダーなら、Liteの車格や車重に不満を感じることはないだろう。

そして初めてスーパーカブに接するライダーの視点で考えると、足まわりのしっかり感に貢献するアルミキャストホイールと、コントロール性が良好なフロントのディスクブレーキは、歓迎するべき装備になりそうである。

ちなみにその2つをスーパーカブ110が2022年に初めて採用したときは、賛否両論があったのだが、昔ながらのスポークホイール+フロントドラムブレーキだった既存のスーパーカブ50を基準にするなら、Liteの足まわりは信頼性と安全性が大幅に上がっているのだ。

そんなわけで、新基準原付のスーパーカブ110Liteに好感を抱いた僕ではあるけれど、それはあくまでも市街地に限っての話で、速度レンジが高い郊外のバイパスや峠道では予想外の不自由さを感じることとなった。その詳細は、近日中に公開予定の第2回目でお伝えしたい。

外観から判別できるスタンダードとの主な相違点は、タンデムステップを装備しないこと、フロントフェンダー前端の白い帯とリアフェンダーの△マークが存在しないこと、速度計のフルスケールが60km/h(スランダードは140km/h)に変更されていることなど。

主要諸元

車名:スーパーカブ110Lite 
型式:8BH-JA76 
全長×全幅×全高:18600mm×705mm×1040mm 
軸間距離:1205mm 
最低地上高:138mm 
シート高:738mm 
キャスター/トレール:26°30′/73mm 
車両重量:101kg 
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒 
弁形式:OH2バルブ 
総排気量:109cc 
内径×行程:47mm×63.1mm 
圧縮比:10.0 
最高出力:3.5kW(4.8ps)/6000rpm 
最大トルク:6.9N・m(0.7kgf・m)/3750rpm 
始動方式:セル・キック併用式 
点火方式:フルトランジスタ 
潤滑方式:ウェットサンプ 
燃料供給方式:フューエルインジェクション 
トランスミッション形式:常時噛合式4段リターン 
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング・自動遠心式 
ギアレシオ 
 1速:3.142 
 2速:1.833 
 3速:1.333 
 4速:1.071 
1・2次減速比:3.421・2.500 
フレーム形式:バックボーン 
懸架方式前:テレスコピック正立式φ26mm 
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック 
タイヤサイズ前:70/90-17 
タイヤサイズ後:80/90-17 
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク 
ブレーキ形式後:機械式ドラム 
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 
燃料タンク容量:4.1L 
乗車定員:1名 
燃料消費率国交省届出値:105.0km/L 
燃料消費率WMTCモード値・クラス1:67.5km/L