CKデザイン・OSCA ST36(現行モデル)……528,000円
世界最小級の公道走行可能なミニバイクとして知られているCKデザインの「仔猿」。その仔猿の兄弟車と呼ぶべき存在が、仔犬(型式OSCA ST31A)だ。ニックネームは「コイーヌ」。同じ極小の兄弟車ではあっても、コンセプトは異なる。「もっと使える小さなバイク」を目指して開発されているのである。
実用的な極小バイクを目指して
仔犬は専用設計のスチール製モノコックフレームを採用し、全長825mm、全幅430mm、全高624mm、車両重量19.5kgというサイズながら、仔猿より余裕のあるライディングポジションを確保。テストコースでは実測45km/h以上を記録し、定地燃費は66km/Lとされる。
仔犬ST31Aは、仔猿と同様に、本田技術研究所でワークスマシンなどの車体設計を手掛けてきたCKデザイン代表・佐々木さんの経験と、ものづくりに対する情熱が注ぎ込まれたモデルだ。スチール製モノコックフレームは、仔犬ST31Aのために新たに開発された。小さな車体で剛性を確保しつつ、収納スペースを生み、さらにライディングポジションにも余裕を持たせることができる。しかし、モノコックフレームの設計と製造は簡単なものではない。1台きりのカスタムマシンと違い、同じバイクを量産しなければならないからである。
量産するためには図面が必要だ。そして、さらに重要になるのが、対応してくれる会社を探すことだった。技術力と生産能力があり、決して多くない販売見込み台数でも対応してくれる会社は、簡単には見つからなかった。片っ端から会社を回って説明を繰り返した結果、佐々木さんのものづくりに対する情熱を理解してくれる会社が名乗りを上げてくれることになった。完成してからもフレームの板厚を薄くするなど、何度となく改良が行われた。生産工場は佐々木さんの飽くなき要求に対して応えてくれたのだった。
仔犬の開発背景で重要なのが、東日本大震災の存在である。災害時に緊急用トランスポーターとしても使用できることを前提に開発されたのである。小さな車体なら狭い場所を移動することができるし、クルマに積んで運ぶこともできる。燃費がよく、必要な燃料も少ない。人が歩くには遠いが、クルマでは入れないような場所を移動しなければならない場面で、小さなエンジン付き車両が持つ価値は決して小さくない。小さいからこそ、災害時に役立つ可能性があると考えたのだ。
仔犬は、仔猿と同様にハンドルを折りたたむことができ、トップブリッジのレバーによってフロントまわりをステムからそっくり取り外すことが可能だ。このシステムによって、積載スペースが限られる小さなクルマにも搭載することができる。仔猿よりやや大きくなったとはいえ、車重は20kgを切るため、大人1人で簡単に積み下ろしが可能なのである。
実用性と楽しさを両立
仔猿よりも大きくなったとはいえ、それでも仔犬は小さい。このバイクを見た人たちや子どもたちはキッズ用のバイクだと思ったというが、それも無理のないことだ。ただ、装いはマニアを納得させるほどに上質だ。「雰囲気が本格的だから、子ども用のオモチャとは違う乗り物なんだと思った」と見た人が話していたように、漂うオーラが強烈なのである。
跨ってみると、ポジションは車体サイズの違い以上にゆったりとしたものになっていた。腰を下ろしてステップに足を乗せるだけで苦労した仔猿から乗り換えたこともあって、ビッグバイク的なゆったりとした感じを受けてしまったほどである。ポジションが楽になったことで、仔犬の場合は極小バイクのクイックな走りを堪能することができた。十分な安定感があって、極低速から最高速付近まで不安なく走ることができる。撮影のためにタイトなUターンを何度も繰り返しても問題なし。直線での加減速やターンをいろいろと繰り返してみたが、何をしても不安な挙動を示すことはなかった。4インチの小径タイヤなので、ステアリングを操作したときの反応はクイックだが、そのことさえ頭に入れておけば、どんなときも従順に動いてくれる。
スピード域が低いからリジットの仔猿でも特に問題は感じなかったけれど、仔犬は専用のリアショックが装着されたことで快適性も向上している。長時間の移動は楽になり、より高いスピードで移動することが可能になった。単に可愛いだけでなく、トランスポーターとしての走る性能を十分に確保しているのである。
それでいて折りたたみ機構や、1人でクルマへの積み下ろしが可能な携帯性も失われていないので、さまざまな使い方に活用することができるだろう。
テスターの場合、体格的に仔猿で長時間走ることは難しかったが、仔犬であれば日常の買い物などにも行くことができるし、クルマに積んで出かけた先での移動にも使ってみたいと思う。キャンプや混雑している観光地での移動など、仔犬が活躍するシーンは少なくない。しかもこのサイズであれば、普通の乗用車に積み込むことができる。いろいろとライフスタイルを広げてくれそうなモビリティである。
ちなみに今回の試乗車に搭載されているのは、仔猿Z31Aで使用していたホンダ製GX31、OHV 31cc単気筒エンジンだが、現在は生産中止となっているため、今後生産される仔犬ではホンダGX35が使われる。GX35は新しい世代のホンダ製小型汎用エンジンで、排気量が35.8ccへと大きくなり、バルブ駆動はOHCとなる。排気量は4.8cc増え、約15%大きくなるため、パフォーマンスも向上することだろう。
ポジション&足つき(身長178cm 体重78kg)
車体が仔猿よりも大きくなり、着座位置が後ろになったことで余裕ができた。通常のバイクに比べればタイトだが、車体サイズを考えれば非常に良くまとまっている。使える極小バイクというコンセプトに偽りはない。
足つき性は子どもでも問題がないレベル。シートの位置が仔猿より高いので、座るのも容易になっている。
ディテール解説












主要諸元
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